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| 神辺町下御領 備後国分寺 菅茶山和歌 |
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「如実上人を訪ひ侍りし日
庭の草花盛りなりしかば」
訪(と)ひ寄れば袖も色濃くなりにけり
籬(まがき)の露の萩の花摺(はなず)り |
| 晋帥(ときのり) |
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| 如実上人 |
… |
国分寺の元禄の再建より4代目の住職 |
| 晋帥 |
… |
菅茶山の本名 |
この石碑の揮毫は『茶山詩五百首』で知られる故北川勇氏である。 |
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| 神辺町下御領 備後国分寺 「聯句戯贈如實上人」 |
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「聯句戯贈如實上人」
| 上人好事爲花顛 唯愛名花不愛銭 拙斎 |
上人好事(こうず)花のために顛(てん)ず
ただ名花を愛して銭を愛さず |
| 爲是年年購奇種 下山時乞衆生縁 晋帥 |
是(こ)れ年年奇種を購(あがな)うために
山を下って時に乞う衆生(しゅじょう)の縁 |
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| 是れ如實上人に呈す聯句 事四十年前に在り今此れを書し愴然 |
| 文政辛巳仲秋 菅晋帥再行 |
好事…珍しい変わった物事を好むこと
【大意】上人は好事家で、花のためには逆立ちしても惜しくはない。ただ立派な花を愛して、銭には愛着がない。だから、毎年花の奇種を購うために、山を下りて(寺をから里へ出て)衆生に時々銭を乞われる。 |
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| 神辺町上御領 一里塚跡 「高屋途中」 |
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「高屋途中」
山雲半駁漏斜陽 ■樹蕭條十月霜
野店留人勧蕎麺 一籃銀縷出甑香 |
山雲半駁(はんばく) 斜陽を漏(も)らす
■樹(こうじゅ) 蕭條(しょうじょう)たり十月の霜
野店人を留めて蕎麺(きょうめん)を勧(すす)む
一籃(いちらん)の銀縷(ぎんろう) 甑(こしき)を出でて香ばし |
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| 半駁 |
… |
駁はまだらの馬、転じて雲がまだらにかかっている様子 |
| ■樹 |
… |
一里塚に植えた樹木 |
| 蕭條 |
… |
もの寂しいさま |
| 縷 |
… |
細い糸筋、ほそながいもの |
【大意】山雲がまだらにかかり雲間をもれた夕陽がさす。一里塚の樹も十月の霜にいためられ、すっかりさびれてしまった。その傍らの野店が旅人を呼び止めてそばを勧めている。甑の中から取り出した小さなざるの中のそばは銀糸に似てうまそうだ。
一里塚…江戸時代に江戸の日本橋を起点とし、1里(約4km)ごとに旅人の里程標として築かれた塚
【出典】『黄葉夕陽村舎詩』後編2−11所収 |
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| 神辺町上御領 八丈岩登山口 「御領山大石歌」 |
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| 「御領山大石歌」 |
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| 御領山頭大石多 |
御領山頭 大石多し |
| 或群或畳闘嵯峨 |
或いは群し或いは畳し嵯峨を闘わす |
| 大者如山小屋宇 |
大なるは山の如く小なるは屋宇(おくう) |
| 迥如万牛牧平坡 |
はるかに万牛を平坡(へいは)に牧するが如し |
| 吾嫌世上多猜忌 |
吾は世上猜忌(さいき)多きを嫌い |
| 楽子無知屡来過 |
子の知る無きを楽しみて屡(しばしば)きたり過ぎる |
| 此日一杯発幽興 |
此の日一杯 幽興(ゆうきょう)を発し |
| 吾且放歌子妄聴 |
吾且らく放歌す 子妄(みだ)りに聴け |
| 如今朝野尚因循 |
如今 朝野 因循(いんじゅん)をたっとび |
苛有所為触渠嗔
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いやしくも為す所あれば かれの嗔(いかり)に触る |
| 憐子剛腸誰采録 |
憐れむ 子の剛腸(ごうちょう) 誰か采録せん |
| 不如聾黙全其身 |
如かず聾黙して其の身を全うするに |
| 石兮石兮林栖野処得其所 |
石や石や林栖野処(りんせいやしょ) 其の所を得て |
| 韜晦慎勿近囂塵 |
韜晦(とうかい)慎んで囂塵(ごうじん)に近づく事なかれ |
| 逢仙化羊已多事 |
仙に逢い羊に化す 已(すで)に多事 |
| 参僧聴経非子真 |
僧に参じ経を聴くは子が真に非ず |
| 況作建平争界吏 |
況んや建平界を争うの吏となって |
| 況為下■授書人 |
況や下■(かひ)書を授くるの人と為るをや |
| 菅茶山 |
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| 化羊 |
… |
羊飼いの故事 |
| 参僧聴経 |
… |
東晋虎丘山で経を講じた時一人も聞きに来ないので、庭石に聞かせたら、最高潮の場で石がうなずいたという故事 |
| 建平争界吏 |
… |
郡と郡との境に二人が背中合わせした石像がたっている。役人の争い。 |
| 下■授書 |
… |
史記にある話で張良が秦の始皇帝の暗殺に失敗し、下■の地に隠れていた。其のとき橋の上で黄石公に兵法書三略を授けられた黄石公は石と化した。
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【大意】御領山上には大石が多い。あるものは群がりあるものは重なりあって、けわしくいりくんでいる。大きいものは山のごとく、小さいものは家ぐらいだ。見渡すと、はるか遠方の堤で多くの牛を放牧しているようだ。
さて自分はこの世間にねたみ、そねみ、が多いことをきらう。おまえ(石)がそのような世情について何もかかわりのない相手であるのが楽しくて、度々ここへ来るようになった。今日、一杯の酒によって、心の奥にわだかまるおもいを発散しよう思う。これから、心のおもむくままに歌をうたうが、お前(石)はいいかげんに聴いてくれよ。
この頃は、朝野とも人々は信念のない世渡り上手が多い。少しでも筋を通してなにかしようとすれば彼らのご機嫌をそこねる。お前の気骨があるのを誰がとりあげ認めてくれるだろうかと気の毒におもう。それかと言って世が世だもの、まあ聞かず言わずで、身を全うするより外はあるまい。
石や、石や、お前は人里はなれた林や野に住んでいるとはお似合いの場所だ。そのままいつまでも世間へ出て来て俗塵に、ちかづかぬがいい。中国には、石が仙人に逢うて羊になった話があるが、それはもう余計なこと。石が僧の説教を聞いたという話もあるが、それもお前の持ち前ではないだろう。まして、同じ石でも、建平界を争う石、下■で張良に三略を授けた黄石公になろうとも思っていないだろう。
【出典】『黄葉夕陽村舎詩』前編1−16所収
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| 神辺町川南 神辺小学校北 「丁谷餞子成卒賦」 |
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「丁谷餞子成卒賦」
數宵閑話毎三更 未盡■離十載情
送者停■客頻顧 梅花香裏夕陽傾 |
| 菅茶山 |
数宵(すうしょう)の閑話(かんわ) 毎(つね)に三更(さんこう)
未(いま)だ尽(つ)きず ■離(ひり)十載(じゅっさい)の情
送者は■(つえ)を停め客は頻(しき)りに顧(かえり)みる
梅花(ばいか)香裏(こうり) 夕陽(せきよう)傾く |
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丁谷
(ようろだに) |
… |
神辺町川南にある谷で現在でも梅が多く植えられており、その梅林には「茶山山陽餞飲之所」の碑がある |
| 子成 |
… |
頼山陽(らい・さんよう)の字(あざな) |
| 三更 |
… |
一夜を五分した真ん中、零時前後 |
| ■離 |
… |
人と別離すること |
【大意】幾夜にわたり深夜までしみじみ語り合ったが、それでも十年間別れて過ごした間のつもる話は尽きない。自分はいつまでも杖を立てて見送り、客(頼山陽)は、しきりにふりかえりつつだんだん遠くなる。そうしている間に、この梅の匂う里に夕陽が傾いた。
【出典】『黄葉夕陽村舎詩』遺稿4−14所収 |
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| 神辺町川北 萬念寺 「夏日雑詩」十二首のうち(三) |
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「夏日雑詩」十二首のうち(三)
垂楊囲繞古書樓 遮断村聲事亦幽
知是隣房催會講 亂條陰裏夜吹■ |
| 茶山老樵 |
垂楊(すいよう)囲繞(いじょう)す 古書楼(こしょろう)
村声(そんせい)を遮断して事も亦(ま)た幽(ゆう)なり
知る是れ隣房(りんぼう) 会講(かいこう)を催す
乱条(らんじょう)陰裏(いんり) 夜笛を吹く |
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| 書楼 |
… |
書物を蔵する二階屋(ここでは廉塾のこと) |
| 隣房 |
… |
隣の家 |
【大意】しだれ柳が古い塾舎を取り囲み、村の物音を遮り断って、すべての営みもまた静かである。隣の家では寄り合いが行なわれているとみえ、風に乱れる柳の枝の陰のあたりで、夜にあたって笛を吹く音が聞こえてくる。
【出典】『黄葉夕陽村舎詩』後編8−19所収 |
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| 神辺町川北 西福寺 「西福寺梅」 |
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「西福寺梅」
品茶琢句坐斜陽 閑事偏知春日長
暮鳥還棲驚有客 梅花花底小僧房 |
| 菅茶山 |
茶を品し句を琢(たく)して斜陽に坐し
閑事(かんじ)偏(ひと)へに春日(しゅんじつ)の長きを知る
暮鳥(ぼちょう)棲(せい)に還り客有るに驚く
梅花(ばいか)花底(かてい)小僧房(しょうそうぼう) |
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| 品茶 |
… |
お茶の品定めをする |
| 琢 |
… |
玉をみがくこと |
| 棲 |
… |
すみか・ねぐら |
| 僧房 |
… |
僧侶の住む建物 |
【大意】茶を楽しみ詩をひねり、夕陽がさすまで座っている。閑暇(かんか)をのんきに過ごす者には、まったく春の日は長い。小鳥がねぐらに帰ってきて、客(茶山)がいるのに驚いたらしい。梅の花盛りにつつまれた小僧房の一日に満足した。
【出展】『黄葉夕陽村舎詩』前編6−1所収 |
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| 神辺町川北 龍泉寺 「龍泉寺櫻」 |
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「龍泉寺桜」
老樹移來幾百春 年年麗艶占芳辰
林東有墓生苔蘇 曾是花前闘酒人 |
| 菅茶山 |
老樹移し来って幾百春(いくひゃくしゅん)
年年麗艶(れいえん) 芳辰(ほうしん)を占(し)む
林東(りんとう)墓有り 苔鮮(たいせん)を生ず
曽(かつ)て是(こ)れ花前(かぜん)酒を闘(たたか)わせし人 |
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| 龍泉寺 |
… |
神辺町川北にある寺 |
| 麗艶 |
… |
うるわしくなまめかしいこと |
| 芳辰 |
… |
かんばしい春の時節 |
| 苔鮮 |
… |
こけ |
【大意】桜の老樹を移し植えて幾たび春が過ぎたであろう。年々美しくあでやかに、この春をほしいままに咲きほこっている。林の東には墓があり、こけが生えている。かつて生前には、よくこの花の前で酒を酌み交わす相手(蘭水=藤井暮庵の義父・次郎左衛門のこと)であったのに。
【出典】『黄葉夕陽村舎詩』前編2−9所収 |
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| 神辺町川北 七日市通 「神辺駅」 |
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「神辺駅」
黄葉山前古郡城 空濠荒駅半榛荊
一区蔬圃羽柴館 数戸村烟毛利営 |
| 菅茶山 |
黄葉山(こうようざん)前(ぜん)古郡城(こぐんじょう)
空濠(くうごう)荒駅(こうえき) 半ば榛荊(しんけい)
一区の蔬圃(そほ)は羽柴の館
数戸の村烟(そんえん)は毛利の営(えい) |
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| 古郡城 |
… |
昔の城下町 |
| 榛荊 |
… |
榛ははんの木だが、ここでは雑木、荊はいばらでとげのある木の茂み |
| 蔬圃 |
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野菜畑 |
| 羽柴館 |
… |
羽柴秀吉の泊まった館の場所 |
| 毛利営 |
… |
毛利軍の陣営跡 |
【大意】黄葉山前は古の城下町、濠の水は涸れ、宿場はすたれて雑木が茂っている。ひとくぎりの野菜畑はかつての羽柴秀吉の泊まった館の跡、また五、六軒の煙のたっているあたりは毛利軍の陣営跡だと。
【出展】『黄葉夕陽村舎詩』前編5−19所収 |
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| 神辺町徳田 宝泉寺 「送恵充上人之高野山」 |
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「送恵充上人之高野山」
| 恵充上人(けいじゅうしょうにん)高野山へ之(ゆ)くを送る |
| 夙願君業進 |
夙(つと)に願う君が業の進まんを |
| 今恨君学成 |
今恨(うら)む君の学成るを |
| 学成何所恨 |
学成るは何の恨む所ぞ |
| 遠近人争迎 |
遠近人争い迎えて |
| 妙選竟難辞 |
妙選竟(つい)に辞し難(がた)し |
| 抛此白社盟 |
此の白社の盟を抛(なげう)つ |
| 迢遞鼎臺遠 |
迢逓(ちょうてい)たり鼎台(ていたい)遠く |
| 蒼茫薇海横 |
蒼茫(そうぼう)たり薇海(びかい)横たわる |
| 別離老愈難 |
別離老いて愈々(いよいよ)難し |
| 此行轉愴情 |
此の行転 情を愴(いた)ましむ |
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菅茶山 |
| 恵充上人 |
… |
徳田宝泉寺住職(のち高野山に入った) |
| 妙選 |
… |
念入りに選ぶ |
| 白社 |
… |
清い仲間 |
| 迢逓 |
… |
遠くへだてること、遠いさま |
| 鼎台 |
… |
高野山 |
| 薇海 |
… |
瀬戸内海 |
【大意】かねてから君の大成を願っていたが、今こうして君が学問を成就したことを恨めしく思う。学問を成就させたことの何を恨めしく思うのかといえば、遠近の人々は、みな競って君を迎えるだろう。そして、よく吟味してわが身のふりかたを選択しようにも、君はついに断れない立場になってしまうことだ。この郷里での契りをなげうって君ははるか高野山へと上って行き、青く広々した瀬戸内海が横たわるばかりだ。年老いればますます別れがつらく、この旅立ちは私の心を悲しませることだ。
※茶山の友人である恵充上人の高野山招聘(しょうへい)への餞別(せんべつ)の詩
【出典】『黄葉夕陽村舎詩』後編8−1所収
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| 神辺町西中条 松風館址 松風館十勝碑林 「松風館即事」・「所見」 |
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「松風館即事」
詩罷松窓夜幾更 捲簾閑待柿歸鳴
隣燈有影樟陰黒 林雨將収竹氣清 |
| 菅茶山 |
詩罷(や)んで 松窓(しょうそう)夜(よる)幾更(いくこう)
簾(すだれ)を捲いて 閑(しず)かに柿帰(しき)の鳴くを待つ
隣燈(りんとう)影有りて 樟陰(しょういん)黒し
林雨(りんう) 将に収まらんとして竹(ちく)気清(ききよ)し |
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【大意】詩を吟じ終わり、松の差しかかった窓から見れば、夜もたいそう更けてきた。簾を捲きあげてホトトギスが鳴くかと静かに待っている。隣の家の灯りでクスの木陰は薄暗く、林を濡らした雨は今にもあがりそうで、竹藪には清々しい気配がただよっている。
【出展】『黄葉夕陽村舎詩』前編3−15所収
| 落日残光在 |
落日(らくじつ)残光(ざんこう)在り |
| 新秧嫩翠重 |
新秧(しんおう)嫩翠(どんすい)重なる |
| 遥雷何處雨 |
遥雷(ようらい)何れの処の雨ぞ |
| 雲没両三峰 |
雲は没す両三峰(りょうさんぽう) |
| 茶山老樵 |
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【大意】夕日が空を赤く染め、野山の緑の中で若苗の緑がさらに美しい。遠くで鳴る雷はどこに雨を降らせているのか。雲が広がり二、三の峰を隠してしまった。
【出展】『黄葉夕陽村舎詩』前編3−4所収 |
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| 神辺町西中条 個人 「時子■叔姪東遊」 |
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「時子■叔姪東遊」
村居無判日相求 喜興群賢此宴遊
焼砌軽煙花影乱 隔簾古木鳥声幽
大杯令行誰堪罰 窄韻知難還欲鬮
二元今朝酔何処 春深京洛酒家楼 |
| 菅茶山 |
村居無く日に相求む
群賢と此に宴遊するを喜ぶ
焼砌軽煙(じょうせいけいえん)花影乱れる
簾を隔て古木の鳥声幽(かすか)なり
大杯を行ら令む誰が罰(しおき)に堪えんや
窄韻(さくいん)の難きを知る還た鬮せんと欲す
二元今朝何の処にか酔わん
春深き京洛酒家の楼 |
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| 神辺町西中条 個人 「次子■月夜泛琵琶湖韻」 |
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「次子■月夜泛琵琶湖韻」
天女祠前湖月清 湖心乗月棹空明
風来波浪生哀響 舟在琵琶絃上行 |
| 茶山旧製 |
天女祠前湖月清し
湖心月に乗じて空明に棹(さお)さす
風来って波浪 哀響を生じ
舟は琵琶 絃上在りて行く |
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| 天女祠 |
… |
天女を祀った祠 |
| 空明 |
… |
澄んだ水中に映る月影 |
【大意】良夜の湖にひかれ、天女祠前を船で行く。湖の中ほどに出るころには、月が愈々澄んで、櫓を操るごとに銀波がゆれる。折りしも一陣の風がたって、舷をたたくもの悲しい水音を聞いていると、やがて船は琵琶(湖)の舷の上を奏でつつ進むかと思われる。 |
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