加茂中学校の物語

加茂中学校の物語

みんなで育てる、100万本のばらの花

加茂中学校の物語

始まりは、1000本のばらだった。
福山市は、1945年(昭和20年)8月8日の空襲で、市街地の約8割を失った。
荒廃した街に潤いを与え、人々の心に和らぎを取り戻そうと、
現在のばら公園に、1000本のばらが植えられた。
やがて「ばらのまちづくり」は市内に広がり、
現在、福山市は「100万本のばらのまち」の実現に向けて取組んでいる。
そして今、これに共感した市内の、ある中学校で、ばらの取組みが始まった。
校庭内に花壇をつくり、素敵なばらのアーチをつくりたい。
そしていつか、地域の人たちと手を取りあって、たくさんのばらを咲かせたい。
加茂中学校の物語

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子ども議会、「提案します!」

子どもたちの夢見る未来へ

福山市には、市内の学校から選ばれた40人の子ども議員が、
市長や教育長などに質問や提案をする子ども議会がある。
そこで子どもたちが考え出した提案は実現することもある。
この子ども議会に、加茂中学校から数名の生徒が参加し、福山の未来について話し合った。
質問や提案は、教育に関することから市の観光、そして、少子高齢化問題など多岐に亘る。
まちづくりパスポート、通称「まちパス」を広める試み、
図書館のお勧め図書を周知するためのポスターづくり、
また、福山に観光客を呼び込むため、小学校から大学までの学生が主体となって、
観光ツアーを企画する試みも提案された。
それらの提案の中には、「100万本のばらのまちづくり」に関わるものもあった。
彼ら子ども議員は、福山の豊かな未来へ、真摯に向き合っている。

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学校にばらの花壇を

まずはここから、始めよう

当初、ばらのアーチをつくる計画があった。正門の前にばらのアーチをつくって、季節の花で華やかに彩る。
けれどその提案は、なかなか実現しなかった。学校に植えられているばらは、たったの5本。
「ばらのまち福山」に住んでいるのに・・・。ここ福山が「ばらのまち」だということは、みんな知っている。
それなのに、加茂中学校の生徒たちにとって、ばらは、決して身近にあるものではなかった。
子ども議会に参加した生徒たちから声があがった。
「校長先生、学校をばらで飾りたいんです。」
まずは、花壇をつくろう。まずは、自分たちの手で。やがては、加茂中学校から「ばらのまち」を発信したいんだ!
この地域の人たちの元にも、綺麗なばらが届けられるように。加茂中学校の生徒たちは、単にばらを植えるだけでなく、
自分たちで食品トレーを回収し、その代金でばらの苗を買うことも考えている。
福山のばらが100万本になるまで、あと15万本。
加茂中学校のばらは、きっとその新たな一歩になるだろう。

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うつくしむ心、ローズマインド

あなたも、ばらのひとひらに

「花って、植えると心が和むでしょう」
福山市では毎年「ばら祭」が開かれる。
「ばら祭」は、様々な団体、企業、個人など多くのボランティアに支えられている。
「ばら祭」を通じ、福山市では、「ローズマインド」を発信している。
「ばらのまちづくり」の中から生まれた言葉で「思いやり、優しさ、助け合いの心」を表す。
鮮やかで美しいばらに相応しく、人々の内に咲き誇る、慈愛の心だ。
「福山のシンボルであるばらを育て、目にして、触れ合って、
みんなが福山のことを大切に思ってくれたらいいな。
そして大人になったとき、改めて、ここ福山を「ふるさと」なんだと思ってくれたら。」
加茂中学校の生徒たちの心の中には、ローズマインドが育まれ、
確かな愛郷心が、豊かに育っている。

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つなぐ、ばらのバトン

加茂中学校の新しい伝統

「ばらを100万本植えよう」誰でも、どこでも言えること。けれど、やるとなると話は別だ。
半世紀を超える「ばらのまちづくり」、今では約85万本のばらが市内を飾っている。
ところが加茂中学校の生徒たちは、その先を見ている。
「今15歳の私たちが大人になった時、私たちが始めた活動が代々ずっと続いていたら、
100万本が、1千万本、1億本になるでしょう。そして、何より嬉しいのは、
後輩が、これからも、この活動を続けてくれると言ってくれたことなんです。」
先輩たちの想いを引き継ぐ2年生は語る。
「先輩たちが提案してくれて、花を植えることが、心を和ませてくれて、優しくしてくれて、
みんなが人を思いやれるようにしてくれることを知りました。
ぼくたちの代が受け継いだローズマインドを、
さらに、受け継いでくれるよう後輩を育てていきたいと思います。」
ばらの取組みを、加茂中学校の新しい伝統に。
彼らは、そんな未来を、澄んだ瞳の中に、鮮やかに想い描いている。

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さあみんな、誇りを持って

ばらを、福山を愛する仲間たちへ

これから福山市を支えていく仲間には、他の学校の生徒たちもいる。
「こうやって市内にばらを植える取組みを続けているのは、全国でも福山市だけ。
福山市の一員として、誇りを持とうって伝えたいんです。」
同世代の仲間へ、加茂中学校のみんなは、力強いメッセージを送ってくれた。
「これから、福山市をさらに豊かにしていくためには、自分たち若い世代の力が必要。
もっと自分たちの住んでいるまちに誇りを持って、たくさんの人に福山のことをアピールできるように、
自ら率先して福山のことを知ろう。」
彼らに自分たちのまちのことを聞いてみると、決して良いことばかりではない。
「ここは田舎で、何もなくて…。でも、ホタルがいるんだ。自然が綺麗なんだ。ばらもたくさん、咲いているんだ。」
彼らは自分たちのまちの良いところをちゃんと知っている。自分たちの手で豊かなまちにしていきたいと願っている。
ばらの取組みを通じ、ローズマインドを育む。 ローズマインドは、彼らのまちを、仲間を、
そして、たくさんの人々を愛する心を、確実に育んでいる。100万本のばらが咲き誇るその日へと、
健やかに手を伸ばす彼らの物語は、これからも続いていく。