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心臓血管外科

 当院心臓血管外科は、1980年開設され、近年の循環器疾患治療の著しい進歩の中、循環器疾患を扱う内科・外科の垣根は必要ないとの理念のもと、2011年4月より心臓血管センターの外科部門として位置づけられました。
 現在、医師4名で、複雑先天性小児心疾患を除く循環器疾患の外科治療を行っております。外来診察日は月・水・金曜日の週3回、予定全身麻酔手術は、火・木・金曜日の週3日行っております。
 患者満足度の高い治療の提供をモットーに、患者さんの状態に応じた医療の選択のもと、十分な情報提供と同意による合併症発症率、死亡率の低い確実な治療、患者さん負担の少ない治療に取り組んでおります。その実現には、患者さんおよびご家族の協力、医療への参加が欠かせません。
 外来診療は、より効率的な治療を行うため疾患によっては心臓血管外科への紹介患者であっても循環器内科との連携のもと循環器内科にて初期治療を開始することや、またその逆も多々あります。また、不要な入院治療を避けるため、可能な限り外来診療での精査、診断、治療方針の決定・説明を行っております。そのため、外来診察時間が長くなる場合があります。
 入院診療は、循環器疾患においては入院期間中に医療が完結する場合は少なく、退院後の継続加療が重要となり、かかりつけ医との連携が欠かせません。また、入院期間、手術時間は短いほど良好な結果を生み出すことをご理解していただき、患者さんご自身に疾患に対する理解を深めるためしっかりと情報提供を行い、退院後の安心な生活に結び付けていただくよう努めております。
 心臓血管外科専門医認定機構基幹施設の認定を受けており、高い医療技術の維持、発展に努め、新たな心臓血管外科専門医の育成を目指し後期研修医、スタッフを募集しております。

診療内容

虚血性心疾患 弁膜症疾患 大動脈疾患 先天性心疾患 末梢動脈疾患 静脈疾患 手術など実績

虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞の合併症など)

労作性狭心症の手術

 薬物療法で症状がコントロールできない場合や、経皮的な冠動脈拡張術、ステント留置術に不向きな主幹部病変、多枝病変が手術の適応となります。

冠動脈バイパス術

冠動脈バイパス術の画像 労作性狭心症、心筋梗塞に対する手術で、冠動脈の狭窄や閉塞のため十分な血液が送れなくなった部分の心筋に新たなバイパスを作成し、血液を供給する手術です。多枝にわたる複雑病変や糖尿病患者の血行再建には、循環器内科で行われる経皮的冠拡張・ステント留置術より冠動脈バイパス術が心筋梗塞の再発率低下などの長期成績が優れているとの報告があります。心臓血管センターでの合同カンファレンスで治療方針を決定します。

 手術方法ですが、冠動脈バイパス術を行うにはバイパスとなる材料(グラフト)が必要です。代表的なグラフトには、上肢へ血液を送る鎖骨下動脈から分枝する内胸動脈、前腕の橈骨動脈、胃の大弯側にある胃大網動脈、下肢の大伏在静脈などがあり、冠動脈との吻合(ふんごう:つなぐこと)部位、吻合本数などによりどれを使用するか決定します。長期開存率は、内胸動脈が最も優れています。冠動脈とグラフトの吻合には、最近は視野を確保するスラビライザーやハートポジショナーなどの補助のもとで心臓の拍動下に行う方法を基本術式としておりますが、視野展開に血行動態の不安定をきたす場合、重篤な不整脈を認める場合、他の弁膜症などの手術を同時に行う場合などは、人工心肺装置を用いて体外循環を行い、心拍動下や心停止下に行います。 

 過去5年間で当院での単独冠動脈バイパス術における心拍動下手術率は87%です。また、過去5年間の予定手術死亡はなく、術後入院期間は約2週間です。 

心筋梗塞の合併症手術

 急性期の心筋梗塞の重篤な合併症の手術対象には、心臓の自由壁破裂、心室中隔穿孔(左右の心室の隔壁に穴があきます)、僧帽弁の腱索を支える乳頭筋の断裂による急性僧帽弁閉鎖不全症があり、いずれも内科的治療ではコントロール困難な場合が多く、緊急手術の対象となります。必要に応じて、冠動脈バイパス術を併施します。

自由壁破裂の手術

 穴が開いたような破裂の場合には、急速に心タンポナーデ(心嚢内に急速に血液が貯留し心臓が動けなくなる状態)となり、救命できない場合が大多数ですが、時間に猶予があれば緊急で体外循環を行い、破裂口を閉鎖したり、左心室から破裂口を隔絶する手術を行います。また、しみだすような破裂の場合は、体外循環を行わずに、破裂部を組織接着剤などを用いて被覆し止血する場合があります。

心室中隔穿孔の手術

 穴が大きく心不全に陥る場合に手術となります。人工心肺を用いた体外循環下に、左室あるいは右室を切開し、穿孔部を2重のパッチで閉鎖したり、左室を切開し、穿孔部中隔を左室梗塞巣を含め左心室から隔絶するようにパッチをあてる手術を行います。

乳頭筋断裂による急性僧帽弁閉鎖不全症の手術

 人工心肺を用いた体外循環下に、人工弁を用いて僧帽弁置換術を行います。いずれの手術も、死亡率20~30%とリスクの高い手術です。慢性期の心筋梗塞の合併症には、左室瘤や虚血性心筋症、それに伴う僧房弁閉鎖不全症があります。いずれの手術も必要に応じて冠動脈バイパス術を併施します。左室瘤手術、虚血性心筋症の手術は死亡率約4~6%です。

左室瘤、虚血性心筋症の手術

 心臓機能が低下した心不全症例が手術対象となります。体外循環下に、原則として大動脈弁閉鎖不全症がなければ心拍動下に手術を行います。単純な左室瘤切除、心室中隔に広範な梗塞巣がある場合には左室腔内にパッチを用いて容積を減少させる左室形成術、前壁・中隔の瘤壁梗塞巣を利用して梗塞巣を左室に巻き込むオーバーラッピング法などを行います。

左室瘤、虚血性心筋症に伴う僧帽弁閉鎖不全症の手術

 人工弁輪を用いた僧帽弁輪形成術、乳頭筋接合術、人工腱索を用いた乳頭筋吊り上げ術などで可能な限り形成術を行います。形成術症例より弁置換術症例の死亡率が高値です。

弁膜症疾患

 弁膜症疾患は、弁によりまた狭窄か閉鎖不全かで心臓への負荷の状態は異なりますが、最終的には重症であれば心臓のポンプ機能の低下である心不全をおこします。薬で弁を修復することは不可能で、有症状の重症弁膜症は通常、外科手術の適応となります。弁膜症の手術には、自己弁を温存修復する形成術と、人工弁に置き換える置換術があります。通常人工心肺装置を用いての体外循環下、心筋保護液を用いての心停止下に手術を行います。近年欧米では、体外循環、心停止を行わずにカテーテルを用いての大動脈弁置換術や、カテーテルを用いての僧帽弁クリップによる閉鎖不全症の治療が一部行われています。                            

大動脈弁の手術

 大動脈弁は各弁尖の接合面が狭いため形成が困難な弁で、統計でも置換術が95%以上を占めます。大動脈解離に伴う大動脈弁閉鎖不全症や、大動脈弁輪拡張症などの一部の疾患においては、弁自体の変性がない場合は大動脈基部の形成を行い閉鎖不全症を治療することがあります。人工弁の耐久性は、僧帽弁位よりも優れています。また、血栓形成頻度も低いと言われています。

僧帽弁の手術

 僧帽弁は前尖・後尖の接合面が広く形成が行いやすい弁です。統計でも半数以上が形成術です。狭窄症の場合には形成が困難な場合があります。弁形成術は、余剰の弁逸脱部の切除や、切れたり延長した腱索のEPTFE糸による人工腱索での修復による弁自体の形成と、拡張した僧帽弁輪を人工弁輪を用いて形成する弁輪形成から成ります。弁置換術の場合においては、弁化組織(腱索)を可能な限り温存して置換術を行います。

肺動脈弁の手術

通常、先天性疾患がない限り治療の対象となりません。     

三尖弁の手術

 左心系の弁膜症に伴う三尖弁閉鎖不全症に対しては、主として人工弁輪を用いた弁輪形成術を行います。まれに、高度の三尖弁閉鎖不全症で、右心不全が強く、形成不能な場合に弁置換術を行います。

人工弁と人工弁輪のお話

 人工弁と人工弁輪

 人工弁について

 いずれも日本製はありません。人工弁には大別してピロライトカーボンなどにより作られた機械弁と、ウシ心嚢膜やブタの大動脈弁などより作られた生体弁があります。各々の弁に一長一短があります。耐久性につきましては、機械弁は20~30年あるいはそれ以上の耐久性がありますが、生体弁は大動脈弁位で12~17年、僧帽弁位で7~12年と耐久性は劣ります。一方、抗血栓性につきましては、機械弁は生涯ワーファリンによる抗凝固療法が必要ですが、生体弁はその必要はありません。患者さんの年齢などに応じて、弁を選択していただきます。

 人工弁輪にも、柔らかい素材でできたもの、硬い素材でできたものがあります。これに関しては術者の好みに左右されます。耐久性、抗血栓性などには差はありません。形・径を規定して変形しないのが良いと考える医師と、本来弁輪は心臓の動きに応じて形を変えるものであるので、大きさだけを規定して形は規定しないほうが良いと考える医師がいます。

ワーファリンによる抗凝固療法について

 人工弁置換術を行った場合、機械弁による置換を行った場合は血栓形成予防の目的で生涯ワーファリンによる抗凝固療法を行っていただいております。生体弁の場合には、術後の3か月間だけワーファリンによる抗凝固療法を行うのを原則としております。ワーファリンの効果は、体調、食事、薬剤などにより減弱したり亢進したりしますので、通常1~2カ月に1度は血液検査(PT-INR測定)を行い、指摘投与量を決定いたします。一般的にはPT-INRが2.0~3.0になるように増減いたします。ワーファリン効果が減弱すれば血栓形成をきたし、人工弁不全や塞栓症を引き起こします。また、ワーファリン効果が亢進すれば出血傾向が表れます。

大動脈疾患

大動脈瘤

 大動脈瘤の問題点は、破裂する危険性があるということです。一般に胸部で6cm、腹部で5cmを超える大きさの動脈瘤は破裂の危険性が高いとされています。また、1年で5mm以上の拡大がみられる場合にも破裂の危険性があります。破裂した場合、胸部では95%以上、腹部でも50%以上の高い死亡率です。破裂予防目的で手術適応となります。手術適応とならない動脈瘤につきましては、定期的なCT、MRI、超音波検査などでフォローいたします。

 腹部大動脈瘤手術を大きく分けると、開腹による人工血管置換術と開腹を必要としないステントグラフト内挿術とがあります。最も多い腎動脈末梢の腹部大動脈瘤の場合の手術は、人工心肺は必要なく比較的リスクの少ない手術(死亡率1%)です。腹部大動脈瘤に対する開腹手術は、侵襲の少ない小切開手術(約10~12cm)での手術を行っています。動脈瘤の中枢、末梢を剥離、遮断し、瘤を切除、人工血管に置き換えます。あらかじめ貧血を認めない場合は、回収血輸血を行うことにより、他家血輸血を避けることができます。腎動脈より中枢に瘤を認める場合には、腹腔動脈、上腸間膜動脈、腎動脈などの再建が必要となり、通常の開腹手術では行えず、開胸+後腹膜アプローチが必要となります。

 ステントグラフト内挿術は全症例に可能なわけではなく制約も多い手技ですが、開腹しないという大きな利点があり、患者さまの負担軽減や入院期間短縮などに有効です。現在この手技を行うためには施設認定が必要で、当院では2007年度より施設認定を取得しステントグラフト内挿術を開始しております。

 これに対し胸部または胸腹部大動脈瘤手術は、開胸および体外循環を必要とし、ある程度のリスクを伴います。当院では、胸部大動脈瘤に対しても2009年よりステントグラフト内挿術を開始しております。腹部同様、適応に制約がありますが、開胸や体外循環を必要とせず手術時間も半分以下で行えます。入院期間は、開胸手術で約3週間であるのに対し、ステントグラフト内挿術では約1週間で退院が可能です。

大動脈解離

 解離性大動脈瘤ともいいます。急性期は、スタンフォード分類A型は、心タンポナーデ、急性大動脈弁閉鎖不全症、心筋梗塞、脳血行障害など致死的合併症をきたす恐れあり緊急手術の対象となります。一方スタンフォード分類B型は、破裂、臓器虚血が認められない場合は、保存的内科治療を行います。保存的内科治療の場合の入院期間は約2~3週間です。

 スタンフォード分類A型の急性期手術は、大動脈を人工血管に置換する手術を行いますが、内膜亀裂の部位により上行大動脈のみの置換、上行から弓部大動脈の置換を要するもの、さらには大動脈弁置換、冠動脈再建を要するものなどに分かれます。いずれの手術も通常は、人工心肺を用いた体外循環下に低体温とし行います。脳保護の手段は、当院では順行性脳潅流を行っております。

 慢性期の大動脈解離は、瘤化した場合に破裂の危険があり、手術の対象となります。

先天性心疾患

 先天性心疾患には、心房中隔欠損症、心室中隔欠損症などの比較的修復の容易な単純心奇形と、より高度な技術を要する複雑心奇形があります。後者はごく限られた専門施設のみで治療を受けていることが多く、当院でも現在のところ単純心奇形の手術のみとしています。

末梢動脈疾患

閉塞性動脈硬化症

 動脈硬化などによる主として下肢の動脈の狭窄や閉塞による末梢動脈の血流不全に対しての治療法は、薬物・運動療法が第1選択ですが、薬物・運動療法では満足した効果が得られない場合や、重症の下肢虚血に対して、手術療法があります。カテーテルによるステント留置などの血管内治療は主として循環器内科にて行っております。血管内治療が困難な場合や、間接可動域にあたる股関節部、膝関節部などの病変に対しての血行再建に対して、血管のバイパス術や血栓内膜摘除術+血管形成を行います。一般的にバイパス手術の場合、バイパスの長さが長くなるほど開存率が低下します。バイパスには人工血管や自家静脈を用いますが、膝より末梢のバイパスは自家静脈の成績が優れております。

動脈瘤 

 四肢、主として下肢の動脈に動脈硬化や感染による動脈瘤を認める場合があり、破裂の危険がある場合や疼痛を伴う場合に手術の適応となります。手術は、瘤切除+血行再建が基本ですが、瘤が閉塞している場合にはバイパス術を行う場合があります。

静脈疾患

 動脈硬化などによる末梢動脈の血流不全、または末梢動脈瘤に対して、血管のバイパスを行うことがあります。ほとんどが足の血管に対して行われ、手の血管に対して行われることはごくまれです。基本的には膝より上のある程度太い動脈に対して行われ、虚血が原因で足の切断を考えなければならないようなケースを除けば、膝より下のバイパスはあまり行われません。ある程度の虚血は、薬物療法、歩行訓練などにより改善するため、なにがなんでも手術をしなければならないわけではありません。

手術実績

( ):緊急手術症例

            2013年2014年2015年 2016年2017年
心臓手術54(8)48(10)51(8)32(4) 42(5)
  先天性00101
  弁膜症35(3)24(3)35(3)19(1) 

31(4)

  冠動脈バイパス術17(3)17(3)9(2)6(1) 5(1)
    人工心肺使用35223
    人工心肺非使用1412742
  その他の心臓手術2(2)7(4)6(3)7(2) 5
大血管手術93(11)88(16)101(19)95(13) 98(6)
  胸部・胸腹部大動脈29(8)37(13)45(11)39(9) 37(1)
       内ステントグラフト913(2)2219(2) 13(1)
  腹部大動脈64(3)51(3)56(8)56(4) 61(3)
       内ステントグラフト34293328 26(1)
末梢血管手術121(19)101(25)113(14)129(10) 116(18)
下肢静脈瘤2323131424

心臓血管センター

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