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広報ふくやま2019年2月号

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印刷用ページを表示する 掲載日:2019年2月1日更新

受け継がれる福山の伝統産業

福山の誇り

福山には、繊維や鉄鋼、機械金属などのさまざまな分野のものづくり企業が集積しています。 このような現在の「ものづくりのまち福山」は、福山藩の産業奨励政策をはじめ、備後に暮らす人々の創意工夫の積み重ねにより生まれた伝統産業が礎となっています。 一方で、多くの伝統産業が抱える時代変化への対応や後継者育成などの課題は本市の伝統産業にも当てはまります。 今回は、本市の誇りである伝統産業の次代への継承をテーマに、福山琴を製作する職人に話を聞いたほか、さまざまな伝統産業の歴史や新たな動きを紹介します。

琴製作の伝統を継承 福山琴ふくやまこと

画期的な製作方法で琴の生産量日本一に

 ピーク時には全国の琴の生産量の7割を占めていたという福山琴は、1985年に楽器として初めて国の伝統的工芸品の指定を受けました。 その歴史の始まりは水野勝成が福山に入封(にゅうほう)した時期までさかのぼります。 江戸末期には神辺町で生まれた琴の名奏者・葛原勾当により、琴の需要が増えたともいわれています。

藤井善章さん

藤井琴製作所
藤井善章さん

1943年生まれ。中学校を卒業後、福山琴の製作に60年以上携わる。福山邦楽器製造業協同組合理事長、伝統工芸士

 藤井さんいわく「一人の琴師が全工程を製作するのではなく、甲造、彫り、装飾と工程別に分業したことで、明治から大正にかけて福山は琴の生産量が増えた」とのこと。 当時としては画期的な方法で、音が良い良質な琴を早く大量に低価格で生産できるようになり、福山は琴の一大産地として知られるようになりました。

琴の裏側の空間

琴の音の質は甲と裏板の間にできる空間が全て。甲の裏側はくぼみがないようカンナで削る

福山琴を生み出す職人の感性と技

 福山琴の製作は「いい桐(きり)を使うことが第一」と藤井さん。 厳選した原木を甲の形にひき、約1年間乾燥。甲造の工程では乾燥させた甲を刳(く)り、 甲の裏面には「綾杉彫り」「子持綾杉彫り」と呼ばれる彫りを入れ、模様を施します。 「今では甲を削りながら『この削り方ならこんな音が響く』と分かるように。 楽器だから、いい音が響いてこそ」と語ります。 また甲の木目を浮き立たせるための焼きの工程は、熱した重い焼きゴテを使う重労働。 しかし「琴の価値を左右する大切な工程」と、藤井さん自ら行います。 その後、琴の各部に蒔絵(まきえ) などの細やかな装飾を施して完成。 乾燥後の琴製作には、高級品では1面につき1〜2週間かかるそうです。

装飾職人が装飾を付けていく様子

装飾職人が竜に見立てられた琴の各部に柏葉(かしわば) 、竜角、四分六といった装飾を付けていく

好きこそ物の上手なれ琴好きに後継の道を

 「多い時には月1,000面以上作っていたけど、今はね…」と藤井さん。 若い職人でも40代で、後継者の育成は課題です。 それでも昨年から30代の見習い職人が働き始め、 「今の若い人は好きなことが見つかれば、それにとことん。琴や楽器が好きな人がこの道をめざしてくれたらうれしいね。私もやっぱり琴が好きじゃけぇ」 と言います。また琴職人として生活できるよう業界全体での取り組みも必要だと話します。 「私個人としては楽器店への卸だけではなく、ものづくりの価値を価格に反映できる直販も検討したい」 「『藤井さんの作った琴だから』と言って買ってくれるなら、これほど職人冥利(みょうり) に尽きることはないわな」。

福山琴

優れた音色や甲の木目、装飾の美しさで日本随一と呼ばれる福山琴。竜舌の蒔絵が琴に華麗で繊細な美を与える

南北朝時代の記録にも残る びんご畳表たたみおもて

献上品にもなった福山を代表する伝統産業

 びんご畳表は一般的な畳表の倍以上のイ草を使います。 高品質なイ草の中心部分だけを使った高級品「手織り中継表(なかつぎおもて)」が有名で、江戸時代には宮中や幕府への献上品として、 現在でも国宝や文化財の建造物などに納められています。 その歴史は古く、南北朝時代に公家中原師守が書いた日記「師守記」にも記されています。 また別の文献には1532~57年に山南村(現沼隈町)でイ草を栽培し、引通表(ひきとおしおもて)を製織した記録も残っています。 その後も品質保証に努め、近年には内閣総理大臣賞なども受賞しています。

びんご畳表の写真

良質なイ草で織られたびんご畳表は擦り切れにくく、経年後も均質な黄金色を保つ

びんご畳表の伝統を次代へ伝える動きが活発化

 備後地方で盛んだったイ草栽培は1980年代に中心が熊本県に移り、その後は安価な中国産が輸入されるなど生産量が減少。 2016年冬には高齢化や後継者不足から、備後地方の専業農家は2戸にまで減ったといいます。 そのような状況の中で、地元産のびんご畳表を次代へ残したいという思いから、 大学教授や建築関係者、畳表事業者などで組織する「備後表継承会」を2018年4月に設立。 市内でのイ草の栽培や収穫をはじめ、建材としての可能性も追求しています。

イ草の田植えの様子

イ草は冬に田に植え、初夏に収穫する

備後イ草によるびんご畳表の保存と継承をめざす

備後表継承会

 福山大学工学部建築学科の佐藤圭一教授を会長に、びんご畳表の製造に携わる関連企業や有志で設立。 備後地域におけるイ草栽培の実践や農家の育成、びんご畳表を生かした建築企画、ブランド再構築などの事業を展開しています。 またその一環として、福山大学工学部建築学科の学生たちが農家や地域との協働でイ草を栽培・収穫。 こういった活動や若い世代への情報発信なども通じ、びんご畳表の継承に力を入れています。

備後表継承会

製塩業が生んだ大衆の下駄 松永下駄まつながげた

塩のまちから履物のまちへ

 江戸時代から塩田を開き、製塩業が盛んだった松永地域。 明治時代初期に、塩を煮詰める薪(まき)に使っていた材木アブラギリに着目し、下駄を作ったのが松永下駄の始まりです。 当時の下駄は高価な桐材を使ったものがほとんどでしたが、松永下駄は安価な大衆の下駄として全国に広がりました。 明治40年頃には機械化にも成功し、昭和30年代のピーク時は年間5,600万足が作られ、全国一の産地になりました。 現在も時代に合わせた下駄が作られており、下駄に限らず、さまざまな履物の生産へと転進しています。

松永下駄

鼻緒の広いものや備後絣(がすり)を使ったものなど、多彩な下駄が今も作られている

日本三大絣の一つ 備後絣びんごがすり

絣の技術が多様な産業の礎に

備後絣

備後絣は明治初期に品質改良が進み、その美しさや珍しさから全国にその名が広まった

 福山藩の産業奨励で綿花栽培や製織産業が花開いた福山。 備後絣は、江戸時代末期に芦田町に住む富田久三郎が、わら葺屋根の押鉾竹(おしほこだけ)がすすで汚れて白と黒に染まっていることにヒントを得て作った絣織物が発祥とされています。 美しい井桁模様が特徴で日本三大絣の一つとして、昭和30年代半ばには年間300万反(一反=約11.4m×38cm)以上の生産を誇り、 日本の絣生産の7割を占めました。備後絣の藍染め・製織技術はデニムをはじめとする繊維業に、織り機の開発は機械製造業に結びついています。

ペリーにも振る舞われた一品 保命酒ほうめいしゅ

鞆の浦だけで造られる名産

 鞆の浦名産の保命酒の正式名は「十六味地黄保命酒」。 江戸時代に大坂の漢方医・中村吉兵衛が考案した16種類の素材を調合したリキュールで、幕末のペリー来航時に振る舞われたと記録されています。 また明治時代にはパリの万国博覧会にも出展されました。保命酒を今も醸造しているのは鞆の浦にある4社のみ。 現在は鞆の浦を訪れる人の土産品として定着し、またジュレやパウンドケーキなどのスイーツへと進化しています。

保命酒

飲み口は甘く、レトロなラベルも人気の理由

伝統産業を次代へ継承するために

今につながる伝統産業を見つめ その技術と創意工夫の姿勢を未来に

 今日の本市の産業につながる数々の伝統産業は、需要の低下や担い手不足などの課題を抱えています。 しかし当事者だけではなく、地域全体で支援することで解決でき、次代へ継承できるのではと考えています。
 「備後ふくやま伝統産業展」は多くの人が伝統産業にふれ、学ぶきっかけになると思います。 ぜひ見に来てほしいです。福山琴やびんご畳表、備後絣など、伝統産業は福山の誇り。 その技術や創意工夫の姿勢は未来へ受け継ぎたい大切な宝です。

びんご産業支援コーディネーター 渡辺幸三さん

びんご産業
支援コーディネーター
渡辺幸三さん

2004年から地場産業のコーディネートや販路開拓などを手掛ける。備後ふくやま伝統産業展などの支援も行う

福山の伝統産業にふれる

2月9日(土曜日)・10日(日曜日)10:00~17:00
※10日(日曜日)は16:00まで

備後ふくやま伝統産業展

 福山琴・びんご畳表・松永下駄・備後絣・保命酒の「5つの伝統産業の和」をテーマに、その歴史と伝統を伝える、今回で10回目を迎える展示会です。 9日はびんご畳表の歌や踊り、10日は琴の演奏会も実施。和装姿のばらのまち福山イメージキャラクター ローラも登場します。
※備後のものづくり企業が集まる「モノコレ2019」も同時開催
○福山琴…宇宙琴の展示、体験コーナー
○びんご畳表…編み笠や円座などの展示、販売、円座工芸士の製作実演、畳手縫い・手織り実演
○松永下駄…鼻緒付け実演、展示、販売
○備後絣…備後絣布や小物の展示、販売、手造り布人形の特別展示
○保命酒…保命酒や保命酒スイーツの展示・販売、試飲コーナー

場所
ものづくり交流館(エフピコRiM7階)
問い合わせ
(一財)備後地域地場産業振興センター 電話番号084-924-4510

ものづくり交流館

(エフピコRiM7階) 電話番号084-923-1191

 ものづくりギャラリーの展示コーナーでは福山琴やびんご畳表など5つの伝統産業を常時展示しているほか、 さまざまな分野で活躍している福山のものづくり企業やオンリーワン・ナンバーワン企業も紹介しています。

ものづくり交流館