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≪インタビュー企画≫暮らしに寄り添い,まちを築く

印刷用ページを表示する 掲載日:2016年5月31日更新

 誰かが言いました。「いい店がいい街をつくる」と。まさにそれを体現しているのが芦田川のほとりにある複合商業施設HOLM230。コーヒーの香り漂うその中庭で、HOLM230の立役者道下美奈さんにお話を伺いました。

 道下さん
▲株式会社府中家具 HOLM230 道下美奈さん

―HOLM230とは?―

 家具屋を中心に、パン屋さんやコーヒー屋さん、ヨガスタジオやレストランなど、現在11店舗が入っている複合施設です。単なる商業施設ではなく人々が集いのんびりできるような場にしたいという願いを込めてつけたのが“HOLM”という名前。デンマーク語で、“川辺の小さなまち”という意味を持っているんです。ホルム230 
▲福山で唯一「まちの駅」に認定

―もとは家具屋さんだった場所をリノベーションしたそうですねー

 創業者の父が建てた家具屋でした。規模の縮小や店を閉めることを考えたりもしましたが、やっぱり生かしたいと思って。それで、一緒に盛り上げていこうと東京に住んでいた妹夫婦を福山に呼び戻したんです(笑)。

―それから5年。11もの店舗が軒を連ねるまでになったんですね―

 当初から大きな構想があったわけではないんです。近所にあって美味しいと思ったレストランの方に声をかけたのがはじまりでした。実はこれまで一度も募集をしたことはなくて、お店の方から声をかけていただき少しずつ増えてきた感じなんです。

布ト絹ノ店
suiren

―いろんなお店が入っていくなかで大切にしていることはありますか―

 ほんの少し生活が楽しくなるようなモノやコトを扱うお店屋さんに入っていただけたらと思っています。大量につくって、大量に売れていた時代を経た今だからこそ、価格よりモノの素材や背景にこだわっていきたいなって。結果として、雇用や生活の基盤になるところを増やし、福山の活気に繋げたいんです。福山を盛り上げていけたらいいですね。
 商売なのでもちろん利益は出さなきゃいけないんですが、価格の競争は限界があるし、海外製で安いものはたくさんあるけど、日本には本当にいいものをつくる技術があるんですよ。ここは安くはないねって言われたりもしますが、どれも長く使えるものなので、結果的には経済的なはずです。そして何より、暮らしが豊かになると思うんです。

府中家具 

―道下さんが思う、豊かな暮らしとは?―

 たとえば自分の身体にあった椅子を手にしたときの感触。暮らしのなかに一脚、自分に合った椅子があるだけですごく豊かな時間ができると思います。そこでお酒を飲むのがすごく楽しくなったり、じゃあ、そこに座って見える壁に絵を飾ってみようとか、緑を置こうか、とか。リフォームとかそんな大きなレベルじゃなく変わってくるんですよ、生活が。物一つで、空気感が変わってきて、過ごし方や生活自体が変わってくるんです。

 ―椅子一脚で変わる生活。
人生が日々の生活の集積だと考えると、人生そのものを変えるといっても過言でありませんね―

 幸せって、自分の心が決めるものだと思うんです。まちをよくしたい、社会をよくしたい、っていう気持ちはもちろんあるんですが、もっともっとシンプルでミニマムな感覚で自分が楽しければ、きっとまわりも楽しいし、そういう人達が集まれば、争いも起こらない社会ができるよねって。それが結果としていいまちづくりにつながるんじゃないかなって。田舎ならではののんびりした時間を、このHOLM230で過ごしていただけたらって思ってます。中庭

―家具でも雑貨でも、生活の中にあったらいいものを販売するっていうことは、
すなわち、ライフスタイルを提案しているってことにもなりますよね?

 いや、そんなおこがましい(笑)。まあ、それをここで見つけていただけたらうれしいですね。私、商売人になりきれないところがあって、お客様が悩んでたら、やめといたほうがいいって言っちゃうんですよね。お気に入りの商品に出会って大切に使い続けてほしいですね。かつての大量生産、大量消費、利益追求型から、今はそういう時代じゃないっていう意識は、どこよりも早かった気がします。創業者である父は、「まず人が集まることが大事なんだ」とよく言っていました。

 ―そして、どんどん人が集まってきたHOLM230。
店者の一人、「Père mère (ペールメール)しあわせなパン。」谷口里佳さんにもお話を伺いました― 

谷口里佳さん(写真右)
▲谷口里佳さん(写真右)

道下さん(以下、道下)  「Père mère (ペールメール)しあわせなパン。」の谷口ご夫婦は、もともと福井でパン屋さんをやられていたんですよ。

堀川 え、福井!?

谷口さん(以下、谷口) はい(笑)。私は府中市出身なのですが、嫁いだ主人の実家が祖父の代からつづく福井市内のパン屋で。夫婦で店を営んでいました。その私たちのパン屋に、出張帰りの美奈ちゃんが立ち寄ってくれたんです。

道下 私たち高校の同級生なんですよ。

谷口 かれこれ20年ぶりの再会だったよね?

道下 フェイスブックで知ってはいたけど、実際に行ってみたらそのパン屋さんが本当にいいパン屋さんだったんですよ。それで、HOLM230に入ってもらえたらすてきだなあと……。

谷口 けど、福井ですでにお客さんはついていたし、福山に戻りたいっていう気持ちもなかったし、福井でずっとやってくつもりでいたんです。けど……

堀川 けど?

谷口 美奈ちゃんが福井の店に来てからしばらくして、私もHOLM230を訪れてみたんです。で、すてきな場所だなって感じて。テナントさんの力もあるし、お客さんの層も私たちが求めている層とマッチしてる。ここなら福井の店を閉めて来ても、その価値はあるかなって。福井に不満があったわけじゃないし、仲間もたくさんいましたけど、はじめてここに来てから、半年後には出店を決めていましたね。

堀川 すごい! で、実際に出店されてどうですか?

谷口 思った通りだし、それ以上に伸びしろを感じます。もっといろんな人にHOLM230を知ってもらいたいと思いますね。 Père mère (ペールメール)しあわせなパン。

堀川 谷口さんからみて、道下さんの存在や仕事ぶりはどうですか?

谷口 美奈ちゃんなくしてここはないですね。とにかくセンスがいいんです。

道下 いやいやいやいや、とんでもない!里佳ちゃん、気を遣わせてごめんね(笑)。

谷口 いや、本当に。きっと模索しながらではあると思うんですが、何したほうがいい、こうしたほいがいいと上から言うわけではなく、リードしてくれるんですよね。

堀川 先ほど私が「提案」という言葉を使ったときも、道下さんはおこがましいと謙遜されていましたが、そういうとこですよね。教えるとか育てるとか上から何かしようとするのではなく、見せるっていうか。強い意思や理想のスタイルを持ってらっしゃるのに、それを強さとは違うかたちで表現する新しいリーダーシップを感じます。

道下 それぞれのお店に個性がありますからね。こだわりを持っている人たちにこうしてくれっていうのは無理ですから。というか、個性的なそのこだわりこそが頑張ってる証だと思うので。

堀川 HOLM230を運営するなかでの喜びは何ですか?

道下 みなさんの生活にリアルに関われるっていうことですね。

堀川 5年が経って変化は感じますか?

道下 お客さんの生活に関われているっていう実感もそうですが、お客さんとのつながりも深まったと思います。

谷口 倉敷や広島市内など、遠方からもお客さんが来てくださるんです。どんなに美味しいパン屋だって言ったって、パンを買いにはるばる足を伸ばすには限界があると思うんです。けど、ここならパンだけじゃなくいろんなものが見られるから、わざわざ来たい場所になるんだと思います。

道下 フェイスブックやインスタグラムなどのSNSだったり、折込チラシだったりを見て来てくださったお客さんから「来たかったのよ」なんて言ってもらえたときは本当にうれしいですね。

谷口 もちろん近所の方もたくさん来られますよ(笑)。

堀川 福山市制100周年の今年。次の100年に向けて思うことはありますか?

道下 家具でいうと、100年使っていただくことは大前提なんですが、ものを大切に使いつづけるってこと、かな。ヨーロッパだと、おじいちゃんの椅子を修理して孫が使いつづけるっていうのが当たり前にあるんですよね。そういうのを広めていきたいし、みなさんにそうしていただきたい。

谷口 家具に限らず、ここで扱っているものは全部大切にしたくなるものばかりなんですよね。パンも毎日、愛情込めてつくってます。

道下 もちろん経済活動がベースになきゃいけないんですけど、心から自分たちがやりたいことを増やしていきたいですね。楽しいだけの仕事はない。けど、それを増やしていけたらって。これからはもっとイベントに力を入れていきたいと思っています。今は年に一回、「まちスタ」というイベントを開催し、たくさんの家族連れのみなさんに集まっていただいていますが、今後はもう少しニッチなイベントを増やしたいと思っています。外部の方にも来て頂いて、ワークショップをやったり、大人が楽しめるしっとりしたイベント。ジャズなんかの音楽イベントをやっていけたらと思っているんです。多くの方にここに来たいって思っていただけたら。そして、実際にHOLM230来てもらうことは、福山に来てもらうことになると思うので。

谷口 主人と子ども二人を連れて、福山に戻ってきた私は、まさにその一人ですから(笑)。

道下 HOLM230を盛り上げることで、結果として福山を盛り上げられたらいいですね。

ホルム230