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≪インタビュー企画≫街は人。人が変われば、街が変わる

印刷用ページを表示する 掲載日:2016年9月30日更新

 「とかくに人の世は住みにくい」と夏目漱石も言うように、生きているとそう思うことは少なからずあります。しかしそうも言っていられないのが人生。前に進むしかありません。今回は、前につづくその道を少しでも歩みやすいものにしようと活動する角田千鶴(つのだ ちづる)さんにお話を伺いました。福山初のシェアオフィスで若手を支援、さらには女性のサポートにも精力的なその活動の源にある思いとは―。若手起業家支援ビル『DioPorte(ディオポルテ)』にもおじゃましてきました。

角田さん
▲山陽不動産取締役副社長
 若手起業家支援ビル「DioPorte(ディオポルテ)」主宰
 角田千鶴さん

―若手起業支援ビル、ディオポルテとは。ディオポルテをつくった理由を教えてください。

 家業の不動産会社を手伝いはじめたのは約12年前。それからずっとどうにかできないかなあと考えていたのが、若手の起業家が抱える問題でした。当時、自分と同世代の24,5歳の若い子が起業の夢を持って事務所を借りに来るんですが、多くの方が敷金礼金、保証会社、仲介手数料と初期費用の壁にぶつかるんですね。事務所の初期費用って、だいたい家賃の6、7か月分はかかってしまうものなんです。さらにそこからクロスを張り替えたり、エアコンをつけたりすることを考えると断念する人がすごく多くって。同年代で夢を持った人たちを応援したいのに、私にはその夢を繋いでいくことができないんだっていうジレンマをこの12年ずっと抱えていたんです。そして一念発起してつくったのがこのディオポルテ。2年半前、国道沿いにある物件を買い取りリノベーションをして、敷金礼金、仲介手数料なしのシェアオフィスにしたんです。家賃も払いやすいよう2万円代からという設定にしています。

 
ディオポルテディオポルテ
ディオポルテ

▲若手起業家支援ビル「DioPorte(ディオポルテ)」

 ―完成後、すぐ入居申し込みはあったんですか?

 今はずっと満室ですが、福山最初のシェアオフィスということで、みなさんイメージがわかなかったようで、シェアオフィスという言葉もまだ聞き慣れない頃で、半年くらいかけて少しずつって感じでした。福山の活性化になればいいなと思ってつくったんですが、営利目的だと言われて新聞も取り上げてくれなかったんです。だから名前にわかりやすく“若手支援”ってつけたんです。そうしたらメディアも取り上げてくれて、どんどん人が集まってきました。最初に入居された方はもともと福山に縁もゆかりもない方だったんですよ。

―というと?

 仕事で広島市に住んでいた神戸出身の方で、総合司法書士の事務所に勤めてらしたのですが、たまたま新聞を見ていたら、ディオポルテの記事を見たのがきっかけで、このシェアオフィスに入られて起業したんです。それと同時に福山に移住されて、結婚後、お子さんも生まれました。現在も福山市内に住まわれていて、仲良くさせていただいています。

―すごい。福山市民を増やしたんですね!

 そういうことになりますね(笑)。ディオポルテの数も増えていて、今は計4か所にあるのですが、その方は事業拡大に伴い広いディオポルテ2に移られました。当初はとにかく安くオフィスを提供したいというのが最優先で、お部屋をお貸しするとこまでが私の仕事だと思っていたのですが、ここ最近はもっとできることがあるんじゃないかなって、その先のサポートもできればと考えています。

―たとえばそれはどんなサポートなのでしょう?

 銀行で融資を受けたいんですけどとか、決算書を作りたいんですけどとか、入居者のみなさんから相談を受けているうちに、何かできることはしてあげたいなって思うようになって。それでディオポルテクラブという会をつくったんです。

―ディオポルテクラブとは?

 税理士さんを呼んでの勉強会だったり、会社経営をしていくにあたってのアドバイスがもらえる機会だったり、入居している方同士を繋げて交流を持ってもらえるような機会がつくれたらいいなと思ってつくったクラブです。同世代で起業していてもなかなか交流する場って、実はないんですよね。だから、そういう場を設けてお互い切磋琢磨していける環境をつくれたらいいんじゃないかなと思って。

―今後、ディオポルテをどうしていきたいと思ってますか?

 最初にあったのは、とにかく起業しやすい環境を整えて、一歩、踏み出すきっかけをつくりたいということでしたが、今はその次のステップに進めるための環境整備ができればなと考えています。私が先にできることがあれば、みなさんの進む道の先の先に行って、整備したいなって。起業したみなさんの次のステップとしては、従業員を雇うってことになるんですが、人材不足ということもあって、小さな会社じゃなかなか人を雇えないというのが現状で。そうなると会社の規模も大きくできない。今は入居者の数を増やすということよりも、できるだけ濃いサポートとネットワークをつくっていきたいという気持ちが強いです。会社が大きくなったら、税収も増えるし、福山にとってもいいでしょう? 起業のチャンスをもっと増やして、ディオポルテが「平成のトキワ荘」みたいになったらいいなって(笑)。どんどん巣立っていって欲しいんです。

角田さん(左)とディオポルテに入居している三谷さん(右)
▲角田さん(左)とディオポルテに入居している三谷さん(右)

―不動産屋さんの枠、越えてますよね。女性への支援へも積極的とお聞きしています。

 この会社は私で三代目。祖母が女手一つで47年前につくった会社です。当時、祖父が病気になり、代わりに祖母が働かなきゃいけない状況になったとき、女性の仕事といえば縫製ぐらいしかなかった時代だと思うんですが、子どももいるし、病気の治療にお金もかかるってことで、法定手数料がある不動産業であれば女性でも男性でも同じだけ報酬がもらえるってことに目をつけ起業したそうなんです。けど、当然まわりは全員男性で、子育てしながら相当苦労して働いてきたんですね。そして、私の母も同様に不動産業をしながら私を育ててくれました。私も今は二人の娘の母なんですが、子育てしながら仕事するってことの大変さをつくづく痛感しています。本当に大変なんですよ(笑)。けど、女三代で子育てしながら働いて、その苦しさを十分にわかっている私たちでさえ、会社経営という立場で考えると、同じ女性に対しても大変なことを強いなきゃいけないこともある。やっぱり今の社会の仕組みだと働き難いんですよ、女性って。だから、もうちょっと柔軟に、働きやすい環境をつくってあげることができたらいいなって。

―女性が働くことの難しさ。どういう働き方を理想としますか?

 女性が働くっていろんなかたちがあると思うんです。バリバリ働いて役職もちゃんと持ちたいっていう人もいるだろうし、旦那さんの奥さんとして空いている時間だけ働きたいという人もいるだろうし、子育てがメインだけど、昔に取った資格を使ってお小遣い程度で働きたいという人もいると思うんです。それって、どれもダメなことじゃないし、ひとくくりにすることでもないと思うんです。いろんな立場があっていろんな働き方があることを、勝手だとかわがままだとか、そういうふうに言うのはやっぱりおかしいと思うんです。女性それぞれがそれぞれの立場でもっと堂々と自分の仕事の話をしたり、PRをしたり、そういう人同士がコミュニケーションをとれる場所があったらいいなって思って、それで「女性の為の交流イベント第一弾」として「TREE」を開かせてもらったんです。

―TREEとは?

 起業している女性、お勤めしている女性、今は専業主婦だけどいつかは働きたいと思っている女性など、とにかくいろんなかたちで働きたいと思っている女性が集まって交流する場です。グループをつくって、グループごとに群れて、なぜかちょっと排他的になる…そんな場じゃなくて(笑)。グループの枠を越えたらもっとビジネスの幅が広がるのに、グループだけで活動したがる傾向があるんですよね。だから、今回一番気をつけたのは、これは私の会ではないってこと。私のグループでもないし誰のグループでもない。もちろん派閥なんかなくて、みなさんの、みなさんのための、みなさんが交流する場ですということを強調しました。とにかく自由に交流してほしかったので、今回はセミナー講師などを呼ぶことはせず、純粋に交流するということだけを目的にして開催しました。

女性の為の交流イベント「TREE~つながる・ひろがる女性の輪」
▲女性の為の交流イベント「TREE~つながる・ひろがる女性の輪」

―第一回の感想は?

 キーパーソンを立てなかったので、シーンとしたらどうしようとか最初は心配してたんですけど、そんな心配はまったくなくて、すごく盛り上がりました。みなさんすごいしゃべるしゃべる(笑)。パワーがすごかったですね。子どもの参加もOKにしたのでとてもにぎやかな会になりました。

―みなさん、そういう場を求めているのでしょうか?

 「わたしね、こうやって頑張ってて、こんなことしようと思ってるの」ってことを話す場って女性って意外とないんですよね。誰かの奥さんだったり、誰かのママだったりして、自分がただ一人の人間として、好きなことを話せる場所って日常の中には見つけづらかったりするんですよ。ご要望にお応えして第二弾は11月に開催予定ですが、今後は年一ペースで開催する予定です。このイベントは、イベント内で何かしたいのではなく、このイベントから得たものを何か一つでも持って帰ってもらって、みなさんのまわりを元気にしてもらいたいっていうのがコンセプトで、イベント自体が目的ではないんです。だから、みんなそれぞれ自分のホームで頑張って、1年後にまた集まるっていうかたちを取りたいと思っています。

 TREE

―今後の目標は?

 私のやっていることを見た人が、「私にもできるわ」って思ってもらえたらいいなあと思っています。よく「すごいね」って言われるんですけど、別にそんなことはないんですよ。私はただ目の前にあった問題を解決しようとして、一つ一つやってきただけ。私がやっていることはすごいことでも、社会に今ある問題のすべてでもなくて、その人にはその人のやるべきことと、できることがあるはずだと思うんです。みんな他人のことを見過ぎ、比べ過ぎなんじゃないかなって。自分は自分でよくない?って思うんです。できないこととか、つらいことがあると、人のせいや環境のせいにしちゃう人っていると思うんですけど、それじゃダメかなって。人の悪口言ってる人が苦手なんです。そんな暇があったらもっとすることあるでしょって思っちゃう。
 女性のキーポイントは必要とされる人になることだと思うんです。今回うちの会社で子育てしている女性をかなりいい条件で雇ったんですが、その人以外の女性に「じゃあ私もそうしたい」って言われてもそれはできません。彼女がその条件で雇用されるのは、それは彼女が会社にとって必要だから。彼女は求められる努力をしたし頑張ったからそうなったのに、そうじゃない人が子育てしているというだけで「子どもがいるから帰ります」って、主張だけするんじゃダメだと思うんです。

―必要とされるにはどうしたらいいんでしょう?

 芯を持つこと、自分にしかできないことを見つけること。自分は何が得意で何ができるかってことを極めていくこと。日々、当たり前にやってることでも問題意識を持つこと。普段疑問に思ってることも文句を言うんじゃなくて、だったら私には何ができるのかなあって考えること。考えて、それをクリアしていけたら、すごくいい楽しい世の中になっていくと思うんです。

―これから福山をどんなまちにしていきたいと思いますか?

 帰りたくなるようなまちをつくりたいですね。二人の娘がたとえば進学などで福山を出たとしても、家業を継ぐか継がないかは別として、将来は福山に帰りたいと思ってもらえるようなまちにしたいと思っています。そして、それは今、私たちの世代でしておかなくてはいけないことだとも思っています。
 私は小学校まで福山で、中高を倉敷、大学で横浜に行き、そのまま横浜の会社に就職しました。結婚し、向こうで暮らしていましたが、12年前、母が会社をやめるかもしれないということになったんですね。そのとき主人が「お前が継ぐべきなんじゃないの」って言ってくれて福山に戻ってきたんです。正直それまで私は福山に帰ってくるという考えはありませんでした。帰ってきたとき、福山のまちのさびれようにショックを受けたのを覚えています。不動産業としても、人口が減るのは死活問題なので(笑)。

―福山への思い。100周年を迎え、福山を今後どうしていきたいと思いますか?

 ディオポルテをつくるまで、私はただのまちの住人だったわけですけど、こうやって誰かのためになったらとちょっと動きはじめると、ただの住人じゃなくなれるんです。目的を持って動き出すと、福山にはすてきな人がたくさんいるなってことに気づくんですよ。正直、以前は市役所も苦手だったんですけど(笑)、今は好き。まちも市役所も変わってきたと思います。
 福山には人も、ものも、スポットも、それ以外にいいものいっぱいあるじゃんって思えてきて。ただ、今はすべてが点になってるんです。誰も繋げる人がいなくて。けど、それが線になって、面になっていけたらいいなっていう思いがあります。今後それを誰がつなぐのかっていうことですよね。やっぱりまちって、人なんですよね。すてきな人がもっと増えたら、福山はもっといいまちになるって、そう信じています。
角田さん