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資金繰りのイロハ

印刷用ページを表示する 掲載日:2015年4月1日更新

ご参考

資金繰りのイロハ

 資金繰りとは

 資金繰りとは,お金の流れを把握し,その収支予想を立て,過不足が予想されるときは,その対策を行うことです。資金繰りとは,単なる資金調達(銀行借入)だと考えがちですが,それだけを指しているのではありません。

 

外部資金に頼る前に

時間的に余裕のない状況では,資金不足を解消するために外部資金に頼らなければ間に合わないかもしれませんが,日ごろから3か月(または6か月)の資金繰り予定表を作成して,事前に資金不足を察知できるなら,以下に述べる事柄について工夫・改善することで,資金繰りを改善し,外部資金に極力頼らずにすませることができます。
 そのほうが,資金コスト(支払利息,割引料)を節約できますし,貸借対照表に表れる財務構造が安定化します。対外的な信用力も上がるでしょう。

 

資金繰り悪化は営業活動の不具合のシグナル

借入をすれば,短期的には資金繰りは改善しますが,経営状況が変わらない場合,中長期的にはその借入金の返済が資金繰りを圧迫していきます。借入は一時しのぎになりかねません。
 資金繰り悪化に至るまでには,業界動向や消費者需要の変化への対応,経営方針,販売・物流,設備投資,在庫管理,労務管理,原価管理などの経営活動の中に,根元的な問題が存在するはずです。
 資金繰り悪化に至った真の原因を究明し,それに対処すべく経営活動を見直すことなくして,根本的な解決はないのです。
 資金繰り悪化の原因は,概して,後ほど述べるような営業活動の不具合にあります。

 

資金の動きは2種類に分けて考える

 資金を短期的に循環するもの(運転資金)と長期間投資されるもの(設備資金等)に区分して考えましょう。前者の動きを経常収支,後者の動きを経常外収支といいます。

 

資金繰りに影響を与える原因は何か

 資金繰りに影響を与える原因は,大きく分けて次の3つです。
(1)収益力
(2)経常収支の動き
(3)経常外収支の動き
 以下詳しく説明しましょう。

 

究極的には収益力の高さこそが資金繰りを安定化させる

 「勘定あって銭足らず」という言葉があります。売上や仕入は商品等の引渡しが実現した時点で計上します。しかし,100%現金商売を除けば,現金の受払いはその時点では完了していません。売上債権・仕入債務が決済されてようやく利益と現金の動きは一致するのです。
 また,一般的には,売上が増加すると,必要な運転資金も増加して,資金繰りは一時的に窮屈になります。
 このように短期的には「利益があれば資金繰りは楽になる」とは言い切れませんが,一連の取引がすべて完了すれば,取引前に比べて利益の額だけ資金は増えるわけで,長期的には収益力の高さは資金繰りを安定化させます。言うまでもありませんが,逆に,赤字経営は資金繰りを悪化させます。

※1 企業の将来的な方向性や収益力の向上策など,経営に関する身近な相談機関として,福山地域中小企業支援センター <福山商工会議所ビル2階>各商工会があります。無料個別相談や必要に応じて専門家の派遣による企業診断を受けることができます。中小企業の皆さんならどなたでも利用できます。気軽に,積極的に活用しましょう。

※2 福山市では,市内の中小企業の皆さんの様々な課題を解決するために,(財)備後地域地場産業振興センター内(1階)に産業支援コーディネーター室を開設しています。費用は無料です。 こちらも是非,ご利用ください。

※3 福山市中央図書館では,毎月1回,中小企業診断士による経営・起業等の無料ビジネス相談会を開催しています(申込必要).。開催日は,「中央図書館だより」でご確認ください。
 問合せ先:中央図書館2階相談カウンター  Tel 084-932-7222

 

経常収支の項目の中で資金繰りを悪化させているものは何か

 経常収支は本来の営業活動そのものに伴う資金の動きを表しています。仕入・製造・販売という一連の流れに伴う資金(運転資金)の動きです。
 資金繰り予定表をご覧になればわかるように,収入の項目としては,現金売上,売掛金回収,受取手形取立,前受金入金などがあります。支出の項目としては,現金仕入,買掛金支払,支払手形決済,人件費などがあります。
 これらの中で資金繰りを悪化させている原因として点検していただきたいことは,
(1)得意先の与信管理の不徹底
(2)売掛債権の回収管理の不徹底
(3)在庫(仕掛り工事)管理の不徹底
(4)仕入債務の支払条件の変更
 の4項目です。

 

得意先の与信管理を営業担当者だけに任せていないか

 営業担当者は売上高を伸ばすこと,落とさないことに力点を置きがちです。それが行き過ぎると,信用力に不安のある得意先でも無計画に大量に納品してしまい,結果多額の焦げ付き(貸し倒れ)を背負うことになりかねません。
 利益が資金となるのは売掛債権を100%回収したときです。それゆえ回収率(回収金額÷要回収金額)100%にこだわることが大切です。
 このための取り組みとして,得意先の与信管理について,営業担当者だけに任せず,社長・営業担当・経理担当等が共通認識を持ちながら連携を図り,責任と権限を明確にして,得意先別に与信限度額を設けて与信管理を行なうことが必要です。
 さらに,こうした仕組みや考え方を組織の末端まで徹底し,実効性を上げるには,
(1)営業部門の業績管理指標として,「売掛債権回収率」を導入すること。
(2)営業担当者に対する人事評価項目として「与信管理の徹底」を加えること。
などが効果的といわれています。
 

 

売掛債権の回収条件が悪くなっていないか

 得意先から「これからは売掛金の決済期日を1か月先延ばしさせてほしい」,「これからは支払手形のサイトを3か月から4か月に延長させてほしい」,あるいは「現金(売掛金)より手形での支払いの比率を引き上げさせてほしい」と要請されると,売上優先志向の営業担当者は,得意先との良好な関係を崩したくないとういう心情から,無定見にそのまま応諾してしまいがちです。
 売掛債権の回収サイトが延びれば,現金になるまでの期間が長くなります。手形での支払いの比率が上がれば,当然手元の資金は減ります。これらは資金繰り悪化の原因です。また,貸し倒れリスクも大きくなるでしょう。
 得意先の要請があった場合,営業担当者が独断で対応するのではなく,全社的に統一した基準(ルール)をあらかじめ定めておき,それに基づいた厳しい対応(極力応じないこと,応じる場合は金利相当分を補償してもらうことなど)をすることで,資金繰り悪化を防ぐことができます。
 また,売掛債権の回収条件を文書として交わすことも,恣意的な変更を抑止するのに効果的でしょう。

 

過剰な在庫を抱えていないか

 「在庫」という項目は資金繰り表に直接的には表れませんが,資金繰りに大きく影響します。
 過剰な在庫(商品・原材料)を持つと,仕入代金として自社から出て行った資金は,その在庫が売れるまで回収できず,「倉庫に寝かせたまま」となるからです。
 過剰在庫は,資金繰りに悪影響を及ぼすだけではありません。過剰在庫によって売れ筋商品・新商品を倉庫に保管するスペースが少なくなってしまいます。在庫には保管コストも掛かるでしょう。在庫は,時間とともに品質が劣化します。流行から外れれば陳腐化もします。劣化・陳腐化したものは回転率が悪く,長期間倉庫や売り場に滞留して資金化できません。小売業であれば,売り場に死筋商品がいつまでたっても残り,「お客様にとって魅力のない店」になってしまいます。
 仕入担当者は,欠品(機会損失)の発生を恐れて,安全在庫の積み増しを志向するかもしれませんが,上記のような在庫の「負の面」もあることから,在庫管理のルールを定め,これを徹底して守り,適正在庫に努めることが大切です。 仕入債務の支払条件の変更は,慎重に 仕入債務の支払サイトを短期化すれば,仕入代金の支払い時期が早まるので,資金繰りは窮屈になります。逆に長期化すれば,資金繰りは楽になります。現金より手形での支払いの比率を引き上げることでも資金繰りは楽になります。
 資金繰りを楽にするためには,仕入債務の支払サイトを長期化するよう,仕入先にお願いすればいいわけですが,「自社の信用力が低下する」,「仕入単価が割高になる」といった反作用があるかもしれませんので慎重に検討しましょう。

 

経常外収支の動きの項目の中で資金繰りを悪化させているものは何か

 経常外収支は,仕入・製造・販売という一連の営業活動に伴って短期的に循環する資金(運転資金)以外の資金の動きを表しています。
 収入の項目としては,借入,手形割引,定期性預金取崩,固定資産売却などがあります。支出の項目としては,借入金返済,定期性預金預入,固定資産購入などがあります。
 これらの中で資金繰りを悪化させている原因として点検していただきたいことは,(1)財務状況や借入返済能力に比べて過大な設備投資をしていないか(2)本業と関係のない「貸出金」,「有価証券」などはないか(3)利益金の社外流出により自己資本の充実が遅れていないかの3項目です。

 

過大な設備投資をしていないか

 設備投資のための資金(設備資金)は,通常,自己資本と長期借入金により調達します。長期借入金の返済原資は「留保利益(税引き後利益-配当・役員賞与)」と「減価償却費」の合計です。この合計額で借入返済額がまかないきれない場合,経常収支のやりくりに必要な運転資金に食い込み,資金不足を来たすのです。
 例えば,バブル景気の頃には,多くの企業が身の丈以上の借入をして,思い切った設備投資をしたものの,その後の急激な不況により,受注が激減し,多額の償却負担だけが残り,借入金返済に苦労しました。こうなると,新たに戦略的な事業活動を行う余力が無くなります。過大な設備投資とこれに伴う過度の借入が,結果的に経営の柔軟性を奪ってしまいました。
 設備投資は,その計画の段階で「利益計画」,「資金の調達・償還計画」をしっかり練ってから判断することが大切です。
 投下した資金を確実に回収するために,目論み通りの売上高や利益が継続的にあがるのか,様々な尺度で検討しましょう。
 設備投資をすると,点検整備費,修繕費,税金,保険料などの費用が毎期かかります。予想される稼働率はどうでしょうか?稼働率が低いのであれば,リース・レンタルの活用も検討の余地がありそうです。
 設備投資したものの投資効果が芳しくなく,今では稼動していない固定資産については,売却処分して資金を回収することも,資金繰り改善のために検討の余地がありそうです。

 

本業と関係のない「貸付金」,「有価証券」などはないか

 当然のことですが,経営のための資金は,本業のためにのみ運用すべきものです。本業と関係のない「貸付金」,「有価証券」などでの運用によって,本業の資金が不足するようなことはあってはならないことでしょう。経営活動の目的を見失わないようにしましょう。

 

利益金の社外流出により自己資本(純資産)の充実が遅れていないか

 銀行業のような厳しい規制のある業種でない限り,一般的な企業には,「資本金の額は、○○円以上でなければならない。」といった制約はありません。会社法の施行(平成18年5月1日)により,最低資本金制度が撤廃されて,資本金1円でも株式会社を設立できるようになりました。
 しかし,いつまでも自己資本(純資産=資本金+資本剰余金+利益剰余金等)が不足していると,取引先から「経営基盤が弱い(財務の安定性が低い)」と判断され,信用を得るのに苦労します。
 なぜそう判断されるのでしょうか。
 すべての企業は,「不確実性の世界」で事業を行なっています。経営環境の変化や取引先の倒産等,現時点で予期しなかったことが起きるのが経営の常です。事業を行なっていれば,予想外の損失が発生することは珍しいことではありません。こうした損失リスクを引き受ける能力の源泉が自己資本です。
 自己資本は,損失が企業経営に与える衝撃を吸収する機能を持っています。つまり,バッファー<緩衝材>として機能しています。
 経営悪化で損失が拡大する状態になっても,自己資本で十分に処理できる範囲にとどまっていれば,直ちに経営に目立つ支障を来たすことはありませんが,自己資本不足の場合は,たとえ小さな損失の発生であっても一気に経営困難に陥ります。
 このように,安定的に事業を行なうためには,損失リスクへの備えとして,自己資本を一定以上用意しておく必要があるのです。自己資本の厚みは「損失吸収力」の高さを表わしています.。
 損失が拡大して,自己資本がゼロになり,さらにマイナスになれば「債務超過」です。これは,理論上,事業用保有資産をすべて売却してもなお負債が残っている状態であり,長期的には企業の存続が非常に危うくなります。
 自己資本の総資産に対する割合であり,企業の財務状態の安定性を表す「自己資本比率(自己資本÷総資産×100)<%>」は,金融機関の融資審査において重要視されている指標の一つです。
 自社の数値を算出して,同業他社の平均値(または中央値)と比較してみましょう。
 中小企業経営診断サービス(広島県信用保証協会:無料)を使うとたいへん簡単で便利です。
 自己資本不足の企業であっても,従来は短期資金の借り換えの繰り返しによって,脆弱な財務基盤を補うことができましたが,金融機関における昨今のリスク管理意識の高まりから,こうした融資慣行を維持することは難しくなってきました。
 自己資本を充実させて借入金依存度を低くすることは,資金コストの節約,さらには経営基盤の強化につながり,資金繰りの安定化にも役立ちます。
 利益金の処分にあたっては,利益剰余金として内部に留め,自己資本を充実させていくことも考えたいものです。

 

おわりに

 資金効率の改善に取り組むことは,結果的に生産性の向上にもつながります。
資金繰り予定表
を単なる「銀行借入を申し込むために作る資料」としてしか考えていなかった方も,これをきっかけに日常の資金管理の手段の一つとして活用し,さらには全社的な経営改善への取り組みへとお役立てください。





                                      


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