障がいを理由とする差別の解消の推進に関する福山市職員対応要領                     (趣旨) 第1条 この要領は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下「法」という。)第10条第1項の規定に基づき、また、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(令和5年3月14日閣議決定。以下「基本方針」という。)に即して、職員(会計年度任用職員を含む。以下同じ。)が適切に対応するために必要な事項を定めるものとする。 (定義) 第2条 この要領において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。 (1) 障がい 身体障がい、知的障がい、精神障がい(発達障がい及び高次脳機能障がいを含む。)その他の心身の機能の障がい(難病等により起因する障がいを含む。)をいう。 (2) 障がい者 障がい及び社会的障壁により継続的に日常生活は社会生活に相当な制限を受ける状態にある者(障がい者手帳の交付を受けていない者を含む。)をいう。 (3) 社会的障壁 障がいがある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。 (不当な差別的取扱いの禁止) 第3条 職員は、法第7条第1項の規定により、その事務又は事業を行うに当たり、別紙の留意事項に留意し、障がいを理由として、障がい者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障がい者の権利利益を侵害してはならない。 (合理的配慮の提供) 第4条 職員は、法第7条第2項の規定により、その事務又は事業を行うに当たり、別紙の留意事項に留意し、障がい者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障がい者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障がい者の性別、年齢及び障がいの状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮(以下「合理的配慮」という。)をしなければならない。  (管理者の責務) 第5条 課長相当職以上の地位にある者(以下「管理者」という。)は、前2条に掲げる事項に関し、障がいを理由とする差別の解消を推進するため、次の事項を実施しなければならない。 (1) 日常の執務を通じた指導等により、障がいを理由とする差別の解消に関し、その監督する職員の注意を喚起し、認識を深めさせること。 (2) 障がい者等から不当な差別的取扱い、合理的配慮の不提供に対する相談、苦情の申出等があった場合は、迅速に状況を確認すること。 (3) 合理的配慮の必要性が確認された場合は、監督する職員に対して、合理的配慮の提供を適切に行うよう指導すること。 2 管理者は、障がいを理由とする差別に関する問題が生じた場合には、迅速かつ適切に対処しなければならない。 (相談体制の整備) 第6条 管理者は、所管する事務事業について、障がいを理由とする差別に関する障がい者及びその家族その他の関係者からの相談等に的確に対応する。 2 相談等を受ける場合は、性別、年齢、障がいの状態等に配慮するとともに、対面のほか、電話、ファックス、電子メールに加え、障がい者が他人とコミュニケーションを図る際に必要となる多様な手段を可能な範囲で用意して対応するものとする。 3 相談者から相談の内容となる事実の詳細その他必要な情報を聴取し、事実確認をした上で、早期の解決に努めるものとする。 4 管理者は、第1項に係る相談等を受けた場合は、「障がいを理由とする差別に関する相談受付票」を作成後、障がい福祉課に集約し、相談者のプライバシーに配慮しつつ関係者間で情報共有を図り、以後の相談等において活用することとする。 (研修・啓発) 第7条 障がいを理由とする差別の解消の推進を図るため、職員に対し、必要な研修・啓発を行うものとする。 2 新たに職員となった者に対しては、障がいを理由とする差別の解消に関する基本的な事項について理解させるために、また、新たに管理者となった職員に対しては、障がいを理由とする差別の解消等に関し求められる役割について理解させるために、それぞれ、研修を実施するものとする。 3 前項に規定する研修の内容、回数等の詳細は、人材育成課長が定める。 4 職員に対し、障がいの特性を理解させるとともに、障がい者に適切に対応するために必要なマニュアルの活用等により、意識の啓発を図る。    附 則  この要領は、2016年(平成28年)4月1日から施行する。  この要領は、2017年(平成29年)4月1日から施行する。  この要領は、2020年(令和2年)4月1日から施行する。  この要領は、2024年(令和6年)4月1日から施行する。 別紙 障がいを理由とする差別の解消の推進に関する福山市職員対応要領に係る留意事項 第1 不当な差別的取扱い 1 基本的な考え方   法は、障がい者に対して、正当な理由なく、障がいを理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否する、又は提供に当たって場所・時間帯などを制限する、障がい者でない者に対しては付さない条件を付けるなど本質的に関係する諸事情が同じ障がい者でない者より不利に扱うことなどにより、障がい者の権利利益を侵害することを禁止しています。なお、車椅子、補助犬その他の支援機器等の利用や介助者の付添い等の社会的障壁を解消するための手段の利用等を理由として行われる不当な差別的取扱いも、障がいを理由とする不当な差別的取扱いに該当します。また、障がい者の事実上の平等を促進し、又は達成するために必要な特別の措置は、不当な差別的取扱いではありません。したがって、次のようなことは、不当な差別的取扱いには当たりません。  ○ 障がい者を障がい者でない者と比べて優遇する取扱い(いわゆる積極的改善措置)  ○ 合理的配慮の提供による障がい者でない者との異なる取扱い  ○ 合理的配慮を提供等するために必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ障がい者に障がいの状況等を確認すること 2 正当な理由の判断の視点 (1) 正当な理由が存在する場合は、不当な差別的取扱いに当たりません。正当な理由に相当するのは、その取扱いが客観的に見て正当な目的の下に行われたものであり、その目的に照らしてやむを得ないと言える場合です。 (2) 正当な理由に相当するか否かについて、具体的な検討をせずに正当な理由を拡大解釈するなどして法の趣旨を損なうことなく、個別の事案ごとに、障がい者や第三者の権利利益(例:安全の確保、財産の保全、損害発生の防止等)及び市の事務又は事業の目的・内容・機能の維持等の観点に鑑み、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要です。 (3) 職員は、正当な理由があると判断した場合には、障がい者にその理由を丁寧に説明し、理解を得るよう努めるとともに、職員と障がい者の双方が、お互いに相手の立場を尊重しながら相互理解を図ることが求められます。 3 不当な差別的取扱いの事例   次に掲げる事例はあくまで例示です。不当な差別的取扱いに相当するか否かについては、個別の事案ごとに判断する必要があります。また、正当な理由があり不当な差別的取扱いに該当しない場合であっても、合理的配慮の提供を求められる場合には別途の検討が必要となります。 (1) 正当な理由がなく、不当な差別的取扱いに該当する事例  ○ 障がいがあることを理由として、一律に窓口対応を拒否する。  ○ 障がいがあることを理由として、一律に対応の順番を後回しにする。  ○ 障がいがあることを理由として、一律に書面の交付、資料の送付、パンフレットの提供等を拒んだり、資料等に関する必要な説明を省いたりする。  ○ 障がいがあることを理由として、一律に説明会、シンポジウム等への出席を拒む。  ○ 事務・事業の遂行上、特に必要ではないにもかかわらず、障がいを理由に来庁の際に付き添い者の同行を求めるなどの条件を付けたり、特に支障がないにもかかわらず、障がいを理由に付添者の同行を拒む。  〇 障がいの種類や程度、サービス提供の場面における本人や第三者の安全性などについて考慮することなく、漠然とした安全上の問題を理由に施設利用を拒否する。  〇 業務の遂行に支障がないにもかかわらず、障がい者でない者とは異なる場所での対応を行う。  〇 障がいがあることを理由として、障がい者に対して、言葉遣いや接客の態度など一律に接遇の質を下げる。  ○ 障がい者本人又はその家族等の意思(障がい者本人の意思を確認することが困難な場合に限る。)に反したサービス(施設への入所など)を行う。  ○ 客観的に見て、人的体制、設備体制が整っており、対応可能であるにもかかわらず、教育又は保育などの提供を拒否することや、提供に当たって正当な理由のない条件を付ける。  ○ 教育又は保育などの提供に当たって、仮利用期間を設ける、他の利用者の同意を求めるなど、他の利用者と異なる手順を課す。 (2) 正当な理由があるため、不当な差別的取扱いに該当しない事例  〇 実習を伴う講座において、実習に必要な作業の遂行上具体的な危険の発生が見込まれる障がい特性のある障がい者に対し、当該実習とは別の実習を設定する(障がい者本人の安全確保の観点)。  〇 車椅子の利用者が畳敷きの個室を希望した際に、敷物を敷く等、畳を保護するための対応を行う(行政機関の損害発生の防止の観点)。  〇 行政手続を行うため、障がい者本人に同行した者が代筆しようとした際に、必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ、障がい者本人に対し障がいの状況や本人の手続の意思等を確認する(障がい者本人の損害発生の防止の観点)。 第2 合理的配慮 1 基本的な考え方 (1) 障害者の権利に関する条約(以下「権利条約」という。)第2条において、「合理的配慮」は、「障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」と定義されています。 (2) 法は、権利条約における定義を踏まえ、行政機関等がその事務又は事業を行うに当たり、個々の場面において、障がい者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障がい者の権利利益を侵害することとならないよう、社会的障壁の除去の実施について、合理的配慮を行うことを求めています。 (3) 合理的配慮は、障がい者が受ける制限は、障がいのみに起因するものではなく、社会における様々な障壁と相対することによって生ずるものとのいわゆる「社会モデル」の考え方を踏まえたものであり、障がい者の権利利益を侵害することとならないよう、障がい者が個々の場面において必要としている社会的障壁を除去するための必要かつ合理的な取組であり、その実施に伴う負担が過重でないものです。 (4) 合理的配慮は、市の事務又は事業の目的・内容・機能に照らし、必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られること、障がい者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであること、事務又は事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないことに留意する必要があります。 (5) 合理的配慮の提供に当たっては、上記の観点等に留意した上で、当該障がい者が現に置かれている状況を踏まえ、社会的障壁の除去のための手段及び方法について、当該障がい者本人の意向を尊重しつつ「4 過重な負担の基本的な考え方」に掲げる要素を考慮し、代替措置の選択も含め、双方の建設的対話による相互理解を通じて、必要かつ合理的な範囲で、柔軟に対応がなされる必要があります。 (6) 建設的対話に当たっては、障がい者にとっての社会的障壁を除去するための必要かつ実現可能な対応案を障がい者と職員が共に考えていくために、双方がお互いの状況の理解に努めることが重要です。例えば、障がい者本人が社会的障壁の除去のために普段講じている対策や、当該行政機関として対応可能な取組等を対話の中で共有する等、建設的対話を通じて相互理解を深め、様々な対応策を柔軟に検討していくことが円滑な対応に資すると考えられます。さらに、合理的配慮の内容は、技術の進展、社会情勢の変化等に応じて変わり得るものです。 (7) 合理的配慮の提供に当たっては、障がい者の性別、年齢、障がいの状態等に配慮するものとし、特に障がいのある女性に対しては、障がいに加えて女性であることも踏まえた対応が求められます。 (8) 事務又は事業の全部又は一部を委託等する場合は、提供される合理的配慮の内容に大きな差異が生ずることにより障がい者が不利益を受けることのないよう、委託等の条件に、この対応要領を踏まえた合理的配慮の提供について盛り込むことが求められます。 2 意思の表明について (1) 社会的障壁の除去に関する配慮を必要としている状況にあることを言語(手話を含む。)のほか、点字、拡大文字、筆談、実物の提示や身振りサイン等による合図、触覚による意思伝達など、障がい者が他人とコミュニケーションを図る際に必要な手段(通訳を介するものを含む。)により伝えられます。 (2) 障がい者本人が意思の表明が困難な場合には、その家族、支援者・介助者、法定代理人等、コミュニケーションを支援する者が本人を補佐して行う意思の表明も含みます。 (3) 意思の表明がない場合であっても、社会的障壁の除去を必要としていることが明白である場合には、適切と思われる配慮を提案するために建設的対話を働きかけるなど、自主的な取組が求められます。 3 環境の整備との関係 (1) 法は、不特定多数の障がい者を主な対象として行われる事前的改善措置(いわゆるバリアフリー法に基づく建築物や交通機関におけるバリアフリー化、意思表示やコミュニケーションを支援するためのサービス・介助者等の人的支援、障がい者による情報の利用しやすさの向上等)については、個別の場面において、個々の障がい者に対して行われる合理的配慮を的確に行うための環境の整備として実施に努めることとしています。新しい技術開発が環境の整備に係る投資負担の軽減をもたらすこともあることから、技術進歩の動向を踏まえた取組が期待されます。また、環境の整備には、ハード面のみならず職員に対する研修等のソフト面の対応も含まれることが重要です。 (2) 障がい者差別の解消のための取組は、このような環境の整備を行うための施策と連携しながら進められることが重要であり、ハード面でのバリアフリー化施策、情報の利用しやすさの向上のための施策、職員に対する研修等、環境の整備の施策を着実に進めることが必要です。 (3) 合理的配慮は、このような環境の整備を基礎として、個々の障がい者に対し、個別の状況に応じて実施される措置であることから、環境の整備の状況により、合理的配慮の内容は異なります。 (4) 合理的配慮を必要とする障がい者が多数見込まれる場合や、当該障がい者との関係性が長期にわたる場合等には、その都度の合理的配慮の提供ではなく、不特定多数の障がい者を対象とした環境の整備を考慮することは、中・長期的なコストの削減・効率化につながる点で重要です。 (5) 障がい者との関係性が長期にわたる場合等には、提供する合理的配慮について、適宜、見直しを行うことが重要です。 (6) 多数の障がい者が直面し得る社会的障壁をあらかじめ除去するという観点から、他の障がい者等への波及効果についても考慮した環境の整備を行うことや、相談・紛争事案を事前に防止する観点から、合理的配慮の提供に関する相談対応等を契機に、内部規則やマニュアル等の制度改正等の環境の整備を図ることが求められます。 4 過重な負担の基本的な考え方 過重な負担については、具体的な検討をせずに過重な負担を拡大解釈するなどして法の趣旨を損なうことなく、個別の事案ごとに、次の要素等を考慮し、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要です。  ○ 事務又は事業への影響の程度(事務又は事業の目的・内容・機能を損なうか否か)  ○ 実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約)  ○ 費用や負担の程度 過重な負担に当たると判断した場合は、障がい者に丁寧にその理由を説明し、理解を得るよう努めるとともに、職員と障がい者の双方がお互いに相手の立場を尊重しながら、建設的対話を通じて相互理解を図り、代替的措置の選択も含めた対応を柔軟に検討することが求められます。 5 合理的配慮の事例   上記で示したとおり、合理的配慮は、障がいの特性や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものであるため、次に記載の事例について、一律に実施することを求めるものではありません。また、記載された事例のほかにも、状況に応じて、合理的配慮が必要な場合があります。対応に迷った際には、相手の方にどのようにすべきかを確認し、相手の方と共に考え、個々の状況に応じた対応に努めることが重要です。  窓口などでの配慮 《共通》  ○ 短くわかりやすい言葉で、抽象的表現は避け、できるだけ具体的に話す。  ○ 本人の希望により代筆した場合は、本人に内容を確認してもらう。(読み上げによる確認をするときは、個人情報に関わる事項については周囲に聞こえないよう留意する。)  ○ 来庁が困難な方について、申請等で可能なものは、郵送やメール等で受付できるように努める。  《視覚障がい》  ○ 「こちら、あちら、これ、それ」などの指示語や「青色の用紙」など視覚情報を表す言葉を避け、場所は「30センチ右、2歩前」、用紙は「○○申請書」など具体的に説明する。  ○ 応対中に席を外す場合や、席に戻った際には声をかける。  ○ 申請等で可能なものは、点字文書やメール等で受付できるように努める。  《聴覚障がい》  ○ 本人の意向を確認して筆談、口話、手話、要約筆記などで対応する。  ○ 筆談の際は、読み書きが困難な聴覚障がい者がいることに留意し、本人の言語能力に合わせて、理解を確認しながら書く。  ○ ゆっくり、はっきり口元がわかるように話す。  ○ 補聴器や人工内耳を使用している場合は、聞こえの状況を確認しながら話す。  ○ 聞き取りにくかった場合は、推測せず、聞き返す、紙に書いてもらうなど、本人の意思を確認する。  《言語障がい》  ○ 本人の意思を確認して筆談で対応する。  ○ ゆっくり、はっきり、短くわかりやすい言葉で話す。  ○ 依頼することは順番に1つずつ話す。  ○ 特に重要なことや、日時・金額などの数字はメモに書いて渡す。  ○ 理解されにくいときは、図や身振りなどを交えて話す。  《内部障がい、難病》  ○ 体調に配慮し、必要に応じて、椅子等のあるところに案内して、職員が窓口から出て対応する。  《知的障がい》  ○ 穏やかな口調で、ゆっくり、丁寧に話す。  ○ 依頼することは順番に1つずつ話す。  ○ 特に重要なことはメモに書いて渡す。  《精神障がい》  ○ 不安を感じさせないよう、穏やかな口調で話す。  ○ できるだけ静かな場所で話を聞くよう努める。  《発達障がい》  ○ 穏やかな口調で、ゆっくり、丁寧に話す。  ○ 依頼することは順番に1つずつ話す。  ○ 特に重要なことはメモに書いて渡す。  ○ できるだけ静かな場所で話を聞くよう努める。  《高次脳機能障がい》  ○ 依頼することは順番に1つずつ話す。  ○ 特に重要なことはメモに書いて渡す。   物理的環境への配慮  ○ 段差がある場合に、車いす利用者に対し、キャスターを上げる、携帯スロープを渡すなどの補助をする。  ○ 配架棚の高い所に置かれたパンフレット等を取って渡す。パンフレット等の位置を分かりやすく伝える。  ○ 目的の場所までの案内の際に、障がい者の歩行速度に合わせた速度で歩いたり、前後・左右・距離の位置取りについて、障がい者の希望を聞いたりする。  ○ 障がいの特性により、頻繁に離席の必要がある場合に、会場の座席位置を扉付近にする。  ○ 疲労を感じやすい障がい者からの別室での休憩の申出に対し、別室の確保が困難なときは、当該障がい者に事情を説明し、対応窓口の近くに長椅子を移動させて臨時の休憩スペースを設ける。  ○ 不随意運動等により書類等を押さえることが難しい障がい者に対し、職員が書類を押さえたり、バインダー等の固定器具を提供したりする。  ○ 災害や事故が発生した際、館内放送で避難情報等の緊急情報を聞くことが難しい聴覚障がい者等に対し、電光掲示板、手書きのボード等を用いて、分かりやすく案内し誘導を図る。  ○ 聴覚過敏の障がい者のために机・椅子の脚に緩衝材を付けて雑音を軽減する、視覚情報の処理が苦手な障がい者のために掲示物等の情報量を減らすなど、個別の事案ごとに特性に応じて対応する。  ○ 移動に困難のある子ども等のために、通園のための駐車場を確保したり、保育室をアクセスしやすい場所に変更したりする。  〇 イベント会場において知的障がいのある子どもが発声やこだわりのある行動をしてしまう場合に、保護者から子どもの特性やコミュニケーションの方法等について聞き取った上で、落ち着かない様子のときは個室等に誘導する。  〇 視覚障がい者からトイレの個室を案内するよう求めがあった場合に、求めに応じてトイレの個室を案内する。その際、同性の職員がいる場合は、障がい者本人の希望に応じて同性の職員が案内する。 情報の取得、利用及び意思疎通への配慮  ○ 筆談、要約筆記、読み上げ、手話、点字、拡大文字等のコミュニケーション手段、分かりやすい表現を用いて説明する。  ○ 会議資料等について、点字、拡大文字等で作成する際に、各々の媒体間でページ番号等が異なり得ることに留意して使用する。  ○ 視覚障がいのある委員に会議資料等を事前送付する際、読み上げソフトに対応できるよう電子データ(テキスト形式)で提供する。  ○ 意思疎通が不得意な障がい者に対し、絵カード等を活用して意思を確認する。  ○ 駐車場などで、通常、口頭で行う案内を、紙にメモをして渡す。  ○ 書類記入の依頼時に、記入方法等を本人の目の前で示したり、分かりやすい記述で伝達したりする。本人の依頼がある場合には、代読や代筆といった配慮を行う。  ○ 比喩表現等が苦手な障がい者に対し、比喩や暗喩、二重否定表現などを用いずに具体的に説明する。  ○ 障がい者から申出があった際に、ゆっくり、丁寧に、繰り返し説明し、内容が理解されたことを確認しながら応対する。また、なじみのない外来語は避ける、漢数字は用いない、時刻は24時間表記ではなく午前・午後で表記するなどの配慮を念頭に置いたメモを、必要に応じて適時に渡す。  ○ 会議の進行に当たり、資料を見ながら説明を聞くことが困難な視覚叉は聴覚に障がいのある委員や知的障がいのある委員に対し、ゆっくり、丁寧な進行を心がけるなどの配慮を行う。  ○ 会議の進行に当たっては、職員等が委員の障がいの特性に合ったサポートを行う等、可能な範囲での配慮を行う。 ルール・慣行の柔軟な変更  ○ 順番を待つことが苦手な障がい者がいる場合に、周囲の者の理解を得た上で、当該障がい者の手続き順を入れ替える。  ○ 立って列に並んで順番を待っている場合に、周囲の者の理解を得た上で、当該障がい者の順番が来るまで別室や椅子を用意する。  ○ スクリーン、手話通訳者、板書等がよく見えるように、スクリーン等に近い席を確保する。  ○ 車両乗降場所を施設出入口に近い場所へ変更する。  ○ 敷地内の駐車場等において、障がい者の来庁が多数見込まれる場合、通常、障がい者専用とされていない区画を障がい者専用の区画に変更する。  ○ 他人との接触、多人数の中にいることによる緊張等により発作等がある場合、当該障がい者に説明の上、障がいの特性や施設の状況に応じて別室を準備する。  ○ 必要に応じ、障がいの特性に応じた教育・保育時間の調整などのルール、慣行を柔軟に変更する。  ○ 点字や拡大文字、音声読み上げ機能を使用して学習する子ども等のために、教育・保育活動で使用する教材等を点訳又は拡大したものや、テキストデータを事前に渡す等する。また、聞くことに困難がある子ども等のために、教育・保育活動で使用する教材等に字幕又は手話等を付与したものや、視覚的に内容が理解できる資料・教材等の提供等をする。  ○ 入園のための選考において、本人・保護者の希望、障がいの状況等を踏まえ、別室における対応を行う。  ○ 非公表又は未公表の情報を扱う会議等において、情報管理に係る担保が得られることを前提に、障がいのある委員の理解を援助する者の同席を認める。 印刷物などへの配慮  《視覚障がい》  ○ 文字の大きさや配色などに配慮する。  ○ 図や表には説明書きをつける。  ○ 特定の人を対象とする場合は、点字版や拡大版などの希望を事前に確認して対応する。  ○ 不特定多数の人を対象とする場合は、点字版や拡大版などの申出に対し即時の対応が困難なときは、本人の意思を確認し、他の手段(音声版、テキストファイル、音声コードなど)も含めて検討する。  ○ 郵便物を送付する際は、希望に応じて、封筒に差出課等を点字でも記載する。(点字シールを貼る。)  ○ インターネットを通じて情報提供する場合は、音声読み上げソフトに対応したホームページを作成するよう留意する。PDFファイルを掲載する場合は、テキスト形式のファイルと併せて掲載するなど配慮する。  ○ 広報用ビデオやDVD等を作成する場合、インターネット動画を通じて情報提供する場合は、ナレーションを入れるなど映像以外での情報提供に配慮する。  《聴覚障がい》  ○ 問合せ先として、ファックス番号を記載する。必要に応じてメールアドレスを併記するように努める。  ○ 広報用ビデオやDVD等を作成する場合、インターネット動画を通じて情報提供する場合は、必要に応じて字幕やテロップを付けるなど音声以外での情報提供に配慮する。  《知的障がい、発達障がい》  ○ 必要に応じて、難しい漢字にはルビを付けたり、絵や図を使ったりして、理解しやすい表現に配慮する。  ○ やさしい日本語の使用に留意する。 会議、イベントなどへの配慮  《共通》  ○ 参加者の名前、所属等が分かるように、机上札の設置、座席表などを用意する。  ○ 資料は事前に送付する。(手話通訳者等支援者がいる場合は、支援者にも事前送付する。)  ○ 障がいの態様は様々であるため、必要な配慮について事前に確認し、対応する。  ○ 必要に応じて支援者の席を用意する。  ○ 長時間にわたる場合は、休憩をはさむ、休憩場所や救護所を用意するなど、負担を軽減するよう配慮する。  ○ 体調等に応じ、途中離席が可能であることを予め周知する。  ○ 最初に進行予定を示し、時間の見通しが分かるようにする。  ○ 多機能トイレ等の設備について案内表示をする。  ○ 進行役は、出席者に対し、できるだけ簡潔に、分かりやすい言葉で発言するよう求める。  ○ 進行役は、出席者の発言を整理し、審議事項を明確にしながら議事を進める。  ○ 進行役は、発言が重なることや、あまりにも議論の展開が速まらないように留意する。  ○ 出席者は、説明や発言の際は早口にならないよう留意する。(通常の速さでよい。)  ○ 事前広報は、活字媒体だけでなく、インターネットの活用等、幅広い手段で行う。  《視覚障がい》  ○ 最寄駅又は駐車場からの動線を考慮し、本人の意向を確認して、必要があれば当日の案内役等を用意する。  ○ 席に案内した際、配席など会場内の状況を説明する。  ○ 床のコードやケーブルはカバーし、余分な机等は片付け、可能な限り段差を低くするなど会場内の移動の妨げにならないように配慮する。  ○ 出席者の状況により、必要に応じて、照明やカーテンの開閉などで部屋の明るさを調整する。  ○ スクリーンや映像をやむを得ず使用する場合は、始めにその旨を断り、説明は分かりやすく、内容を省略せずに行う。  ○ 点字資料の場合は、ページの番号が違うので、説明に留意する。  ○ 講演会等で、事前に点字版や拡大版などの資料の希望があった場合は対応する。事前広報を通じて、事前に申し出る機会を設けることが望ましい。  《聴覚障がい》  ○ 議事録を送付する。  ○ 手話通訳や要約筆記が見えやすい席を配慮する。  ○ できるだけマイクを使用し、スピーカーの位置に配慮する。  ○ 出席者の希望等により、必要に応じて、補聴援助システム(磁気ループ)を導入する。  ○ 講演会等で、事前に手話通訳や要約筆記の希望があった場合は対応する。事前広報を通じて、事前に申し出る機会を設けることが望ましい。  ○ 会場内の案内は、電光掲示板やホワイトボードの活用、文書の配布等により、音声以外での情報提供に配慮する。  《肢体不自由》  ○ 最寄駅又は駐車場からの動線を考慮し、本人の意向を確認して、必要があれば当日の案内役等を用意する。  ○ 入口からの動線など、席の配置に配慮する。  ○ 床のコードやケーブルはカバーし、余分な机等は片付け、可能な限り段差を低くするなど会場内の移動の妨げにならないように配慮する。  ○ 受付の配置やパネル展示等は、車いす利用者にも配慮して行う。  《知的障がい、精神障がい》  ○ 資料は、希望を確認してルビをふる。  ○ 不安を感じさせないよう、配席等に配慮する。  ○ 会場内図の配布や案内所の設置、動線の表示等、会場内の配置や利用方法を分かりやすくするよう努める。  ○ 講演会等では静かに落ち着ける場所(部屋)の設置に努める。  《難病》  ○ 会話や意思伝達が困難な方等について、支援者がいる場合は、支援者にも資料を用意する。  ○ 参加が多数見込まれる場合は、休憩所(スペース)を確保するとともに、救護所を設置し、医療・看護スタッフを配置するよう努める。 6 合理的配慮の提供義務違反の事例 次に掲げる事例はあくまで例示です。合理的配慮の提供義務違反に該当するか否かについては、個別の事案ごとに、上記の観点等を踏まえて判断する必要があります。 (1)合理的配慮の提供義務違反に該当する事例  〇 試験を受ける際に筆記が困難なためデジタル機器の使用を求める申出があった場合に、デジタル機器の持込みを認めた前例がないことを理由に、必要な調整を行うことなく一律に対応を断ること。  〇 イベント会場内の移動に際して支援を求める申出があった場合に、「何かあったら困る」という抽象的な理由で具体的な支援の可能性を検討せず、支援を断ること。  〇 電話利用が困難な障がい者から電話以外の手段により各種手続が行えるよう対応を求められた場合に、マニュアル上、当該手続は利用者本人による電話のみで手続可能とすることとされていることを理由として、メールや電話リレーサービスを介した電話等の代替措置を検討せずに対応を断ること。  〇 介助を必要とする障がい者から、講座の受講に当たり介助者の同席を求める申出があった場合に、当該講座が受講者本人のみの参加をルールとしていることを理由として、受講者である障がい者 本人の個別事情や講座の実施状況等を確認することなく、一律に介助者の同席を断ること。  〇 自由席での開催を予定しているセミナーにおいて、弱視の障がい者からスクリーンや板書等がよく見える席でのセミナー受講を希望する申出があった場合に、事前の座席確保などの対応を検討せずに「特別扱いはできない」という理由で対応を断ること。 (2) 合理的配慮の提供義務に反しない事例  〇 事務の一環として行っていない業務の提供を求められた場合に、その提供を断ること(必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られることの観点)。  〇 抽選申込みとなっている講座への参加について、抽選申込みの手続を行うことが困難であることを理由に、講座への参加を事前に確保しておくよう求められた場合に、当該対応を断ること(障がい者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであることの観点)。  〇 イベント当日に、視覚障がいのある者から職員に対し、イベント会場内を付き添ってブースを回ってほしい旨頼まれたが、混雑時であり、対応できる人員がいないことから対応を断ること(過重な負担(人的・体制上の制約)の観点)。