ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
現在地 ふくやま観光・魅力サイト > ≪インタビュー企画≫伝統漁法を今に伝える「鯛網」とそこにいきづく福山・鞆の浦
  • 福山のナンバーワン・オンリーワン
  • 地域おこし協力隊インタビュー企画
  • 福山市公式ホームページ

≪インタビュー企画≫伝統漁法を今に伝える「鯛網」とそこにいきづく福山・鞆の浦

印刷用ページを表示する 掲載日:2015年3月30日更新

 たとえば、桜の開花に春の訪れを感じるように、草木や花、催事など、うつろう季節を知り得るトピックが人それぞれありますが、福山の場合、そのひとつに「鯛網」と呼ばれる伝統行事があります。約380年もの歴史をもつ「鯛網」について、鯛網船団の船団長で鞆の浦漁業協同組合の組合長も務める羽田幸三さんにお話を伺いました。

 羽田幸三さん
▲鞆の浦漁業協同組合組合長
 鯛網船団長
 羽田幸三さん

―そもそも「鯛網」って何なのでしょう?―

 「鯛網」とは、江戸時代初頭に確立された「しばり網漁法」により鯛を獲る伝統的な漁のことです。「しばり網漁法」が当時のまま残っているのは日本でもここ福山だけなんですよ。継承者は高齢化して今では少なくなってきていますが、福山市内にあるほかの漁協青年部の協力を得て、「鯛網」を観光化し、「鞆の浦観光鯛網」として維持・継承しています。

―「鯛網」の「しばり網漁法」とは、具体的にどんな漁法なのですか?―

 「しばり網漁法」は鯛を追い込む目の大きい「大引網」と鯛を獲る「袋網」を使います。親船となる網船は二艘で並走し、右の船の網を左の船が、左の船の網を右の船が上げ、離れていた網船同士が交差します。それから少しずつ距離を縮め、互いの網をしばり上げるようにして鯛を網の中に追い込むんです。網船には動力がないので、網船を引く錨船や、潮の動きをみて先導する指揮船、獲れた魚を運ぶ生船など、六艘以上の船が協力し合って行います。昔はこれに加え、鯛を驚かす役割の船もありました。

福山・鞆の浦観光鯛網
▲福山・鞆の浦観光鯛網
 2015年は5月1日(金曜日)~17日(日曜日)の期間、鞆の浦で行われる

―複雑かつ高度な漁法ですね―

 「しばり網漁法」は沖合に群がる鯛を傷つけないまま効率的に獲ることができるという利点があります。鯛は傷つけたら商品価値が下がりますから、これも昔の人の知恵ですね。今は何でも効率化され機械で行っていますから、これだけの人数と労力をかけ、人力だけでする漁なんて、この「鯛網」ぐらいですよ。昔のままを再現するため、汗を流して、手を擦りむかせながらやってます。観光とはいえ、本気ですからね。漁師が漁を本気でやらんかったら、何もないでしょ(笑)。漁師の遊びだとか、ひやかしだとかいう人もいますけど、そんなんじゃないんです。

 網船二艘が網をしばります
▲網船二艘が網をしばります

―約380年。技術を継承するって、並大抵のことではできませんよね―

 福山藩で確立されてから380年、観光鯛網になってからは86年。福山市内でも一番長く続いているイベントなんです。福山市民として、誇れるもののひとつだと思ってもらえたらいいですけどね。
 「鯛網」に使う網はみなさんの想像以上に大きいので、そのまましまっておけません。毎年「鯛網」が終わると、網の部分、浮きの部分、おもりの部分、大引きと、すべてをばらして倉庫に保管しているんです。「鯛網」の作業はそのばらした網のつくろいからはじまります。4月になると、それらを仙酔島の浜にざーっと出して、そこで私たち漁師は網を組んでいくんです。何日かその作業を続け、完成した網を4月の終わりに船に積み、いざ「鯛網」漁に出るんです。鯛網がはじまったら自分の商売はできません。というか「鯛網」は、普段の自分の仕事の何倍も疲れるんですよ。自分の漁は機械を使ってやりますからね、楽なんですよ。終わったら帰って、風呂入って、すぐ寝るっていう。それだけ大変な漁なんです。ほかでは絶対観られませんよ。

羽田幸三さん

―それでも続けるというのは?―

 みなさんは知らんかもしれんけど、四百年前からずっと鞆の先輩がやり続けてきたことでもあるし、その文化っていう面でもね、継承していかなくてはいけないっていう使命みたいなものもありますよね。まあ、もともと美術館の学芸員だったので、こういうものを追求したくなる性分ということもあるかもしれません。鵜飼みたいな感じで、文化財として指定してもらって、少しでも長く続けていきたいっていうのはあります。

― 一生に一度は観てみたいと思いました!―

 見学もそうですが、そのあと獲った鯛を船の上でお買い求めいただくこともできます。船の上で漁師が一枚一枚すくった活きのいい鯛が、市価の半値ぐらいで売られるんです。1.5kgぐらいの鯛だと3千円ぐらいするけど、おつりがめんどくさいから1枚千円でいいやとか(笑)。袋に入れたり、氷付きの入れ物も用意してますし、宅配便も船の上で受け付けてるんで、至れり尽くせりですよ。値切りの交渉やおまけをつけたり、残った小さい鯛は2枚で千円でいい!とか、駆け引きもあって最後まで盛り上がります。漁師としては全部売ろうと思って頑張ってるんでね。鯛以外も、太刀魚やスズキやサワラなんかも獲れちゃったりするんで、楽しいと思いますよ。

獲れた鯛を船上で買うことも
▲獲れた鯛を船上で買うことも

―なんてお得な!そして、とっても楽しそう―

 船に乗って見学するだけじゃなく、網引体験もできますよ。大引きっていうんですけど、それを漁師と一緒に引くんです。「鯛網」が始まる前に参加者を募るんですが、男女問わず参加OKです。長靴を履いて、救命胴衣つけて、思い切り揺れますからすごい疲れますけどね。

―体幹が鍛えられそうですね。鯛網ダイエット(笑) ―

 忘れられない貴重な体験になると思いますよ。船の中を見学することもできますし、「鯛網」後は鞆港周辺をクルージングします。陸上からは見られない素敵な景色を楽しむことができますよ。また、ご希望の方は鞆の浦の史跡を案内するツアーにも無料で参加できます。「鯛網」以外にも、ほかの海産物だとか練り物だとか、保命酒だとか、あらゆる食文化が道々にあるんでね。それも一緒に堪能してもらえたらと思います。すべてが終わるとだいたい夕方4時前と、お帰りになるのにちょうどいい時間になるように設定しています(笑)。

―さすが!そんな貴重な体験ができて、しかも鯛が安く買えるなんて、いいことづくめですね―

 トリップアドバイザーやブログなどの口コミで、最近では海外からいらっしゃる方も増えています。早めに来られて、仙酔島を散策するのもおすすめです。ハイキングコースがいくつもあって、大自然を満喫できますよ。歴史を学べる資料館もあるし、いろんな組み合わせで、福山・鞆の浦を満喫していただけると思います。毎朝、漁師の父ちゃんが獲ってきた魚を母ちゃんが売るっていう仕組みというか風習がこの辺りにはあって、それが今も日常にあるんです。そういうのを見つけたら話しかけてみて、魚を買ったり交流するのも楽しいと思いますよ。日本にはいろんな漁師町がありますが、鞆はほかとは違った町ですから。

このインタビュー企画について
インタビュー企画について