≪インタビュー企画≫今が旬。地元で育った縁起物、食べないなんてもったいない
芽が出る縁起物としておせち料理に欠かせない高級食材くわい。福山が生産量日本一を誇る“めでたい”くわいは、まさに今が旬です。
今回は、福山くわい出荷組合組合長・喜多村眞次さんにお話を伺いました。
▲福山くわい出荷組合組合長 喜多村眞次さん
―日本そして福山ではいつからくわいの栽培が行われているのでしょう?―
文献があるわけではないけれど、一説には遣唐使の時代に中国から伝来したといわれています。京都御所にも献上していたという話です。福山では、現在の千田町の沼地に自生していたものを、明治35年ごろ、福山城周辺の堀に持ってきたのが栽培の始まりといわれています。
―くわいを育てるのにいい条件が、ここ福山にはあるんですね―
そうじゃな。福山は台風の影響が少ないけぇ、それはまず大きいなぁ。くわいは6月末から7月上旬に植え付けして、11月中旬から収穫します。福山はこの期間比較的晴天が続くということもくわいの発育には重要なことじゃね。それからここ福山には粘土質の良い土があるけぇ、美味しいくわいが育つんよ。
▲植え付け作業(6月) | ▲草竹が約1メートルに成長(9月) |
▲収穫前に葉を刈り取る(11月) | ▲収穫作業(11月) |
―くわいを育てるのに一番大切なことは何でしょう?
植え付けあとの肥培管理と病害虫対策。それに何より大変なのは収穫のときじゃな。くわいの水田に芦田川の清流を入れて水位を上げ、そこにポンプで水圧をかけて、泥をどかすようにしてくわいを浮かせて収穫するんですわ。くわいは芽が命ですから、決して折らないように気を遣って、丁寧に収穫するんよ。
▲収穫作業は11月中旬から12月下旬まで続く
―現在、福山ではどれくらいのくわいが栽培されているのでしょう?―
昨年は福山全域で14ヘクタール。今年は13ヘクタールです。
―東京ドームでいうと、約3個分の広さになりますね!―
じゃけど年々減ってるんだわ。担い手不足。昔からから地元に根付いている、伝承されている野菜じゃけ、途絶えさせることはしたくないよな。実際、稲作より単価が高くて稲作より儲かるし、意欲がある人に引き継いでいってもらいたいなぁ。
―日本食ブームですし、海外市場での需要もこれからどんどん増えてきそうですよね―
飲食店の全部とはいかんけど、くわいに限らず使用する食材を海外産から国内産のものに切り替えているといいますしね。やっと時代が気づいてきたんですわ。もともとくわいは中国から渡ってきた野菜じゃけど、中国では漢方薬に使われるだけで食用じゃあないんよ。日本で発展したくわいの食文化をもっと世界に広げていけたらいいねぇ。日本の食材として根ざしていきたいわな。
―今後、くわいの認知がもっと高まっていったらいいですね―
地域によっては近所の小学校の児童を集めて、くわいの植え付け体験もしとるよ。くわいの水田は市内のあちこちに点在しとるからね。もっと子どもたちにも食べてもらって、くわいを知ってもらいたいですね。若いお母さんたちにもごはんのおかずとして使ってもらいたいなぁ。
―お話を伺っていたら食べたくなってきました―
おせち料理に欠かせない縁起物と言われているけど、縁起物はいつ食べてもいいけえね。もっと普段から食べてもらえたらうれしいね。地元福山の市場はもちろん、東京は大田市場と、築地市場。北信越は新潟。それに京都、大阪、奈良、神戸、姫路、広島、北九州など。店頭に顔を出すのは12月ですから、記事になる頃には並んでいるはずじゃな。

―出荷するにあたって厳しい選別があるとお聞きしました―
福山のくわいは、大きさ、かたち、色などの基準で選別するんよ。大きさが6階級(2S~3L)、かたちや色などで2等級(秀・優)の全部で12段階に分けるられる。出荷する前には検査員による検査もしとります。どのくわいにも味には自信がありますよ。
―くわいは、たんぱく質やカリウム、鉄分も豊富で、高血圧・高コレステロール、便秘などにもいいそうですね―
皮のまま素揚げにしても、煮ても焼いても美味しいし、塩をかけたり、マヨネーズつけたり、けっこういろんな食べ方があるんですよ。福山の人にはもちろん、日本中の皆さんに、福山で育った”めでたい”くわいをもっと食べてもらいたいですね。まさに今が旬ですから。美味しいですよ。