≪インタビュー企画≫豊かな海と磨かれた技術。おいしい海苔ができるわけ
瀬戸内の中央に位置し、豊かな漁場を持つ内海町田島は、県内一の海苔の産地です。まさに今が旬の田島の海苔について、田島漁業協同組合組合長、兼田雅彦さんにお話を伺いました。
▲田島漁業協同組合組合長 兼田雅彦さん
―田島の海苔はどのようにして養殖しているのでしょうか?―
海苔の養殖には支柱式と浮き流し式の2つがあるのですが、水深が深く潮の流れがある田島では効率のいい浮き流し式で海苔をつくっています。
―海苔づくりには潮の流れが影響するということですか?―
一般的に潮の流れがあったほうがおいしい海苔ができるといわれていますね。瀬戸内のど真ん中にある田島は潮と潮がぶつかり合う場所。当然、おいしい海苔ができるんです。海苔には130種類以上の品種があるのですが、その中から浮き流し式に最も合う「スサビ」という種を選んで種付けしています。
―そもそも海苔って、どうやってつくられるのでしょう?―
まずは、海苔の種となる果胞子を牡蠣の殻に種付けすることから始めます。糸状の種は海水温が25度以下になると牡蠣殻の中から出てくるんです。その牡蠣殻のついた水車を回転させ、種をまんべんなく網へ付着させます。この段階での種は、顕微鏡で確認しないと見えないほどとても小さいんです。そして冷凍庫で保管し、海水温が23度以下になるのを待ちます。海水の温度が23度以下になったらいよいよ海で育苗を開始しますが、芽が1~2cm育ったところで、今度は海苔の病気の予防のためにもう一度、冷凍庫へ。その後、海水温が18度以下になったら「本張り」を開始し、いざ漁場で海苔を育て始めます。このとき海苔が解凍されるのと同時に珪藻などの不純物が流され、さらに元気な海苔だけが網に残る仕組みなんです。その後2~3週間ほどしたら刈り取り。洗い流しから塩抜き、脱水、乾燥と、半日~一日かけて商品となる海苔を完成させるんです。
【海苔ができるまで~準備編~】
(1)果胞子を牡蠣の殻に種付け
(2)冷凍保管(1回目)
(3)育苗
(4)冷凍保管(2回目)
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(5)本張り
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(6)刈り取り
(6)船から工場へ
―大変な作業なんですね―
海苔は胞子を飛ばして成長します。浮き流し式でつくられる海苔は、次から次に胞子を飛ばして成長し、そのたびに刈り取るため、いつも新しい芽が育っています。だからいつまでもやわらかくて美味しい海苔ができるんですよ。
【海苔ができるまで~製造編~】
(1)水洗い,異物除去,塩抜きなど
(2)抄き,脱水,乾燥など
(3)手作業で検品
(4)10枚10束に折り曲げ
(5)結束
(6)箱詰め
―海苔には等級がありますよね?―
色、味、香り、輝り、重さなどで海苔はランク分けされます。地域によって等級の数は違いますが、特上、特、優、1、2、3・・・と、ここでは7等に分けられます。海苔は、味はもちろん、見た目にも美しくなくてはいけません。板海苔として完成したときに面に隙間があってはいけないんです。田島の海苔はやわらかいので隙間ができにくいんですよ。
―なるほど。ほかに田島海苔の特徴というと?―
黒ぐろして輝りがあり、甘くてとてもやわらかい。この辺りは川をつたって山の栄養が海に豊富に注がれるので、海水の三大栄養素、窒素、リン、カリウムにも恵まれているんです。そして、田島は漁場として恵まれていることもそうですが、海苔を製品化する工場の技術もいい。ここでは、その日の海苔の状態や温度・湿度に適した加工をしています。環境と技術、両者が揃ってはじめていい海苔ができる。だから田島の海苔はうまいんです。
―今年の海苔の出来栄えはいかがですか?―
海苔は窒素・リン・カリウムなどの栄養が多いほど美味しい。今年も出来には自信がありますよ。田島の海苔は本当にうまい。新海苔は特にね。保存がきくといってもとれたてできたてが一番です。ぜひ今年の田島の新海苔、食べてみてください。