【地域おこし協力隊インタビュー企画】“生きてる感”がある小さな地域の暮らし
今回は、加茂町広瀬学区で、子どもが伸び伸びと遊べるイベント「ひろせ冒険遊び場」を運営する橘高昇吾さんに、広瀬での暮らしについて伺いました。
-広瀬にはいつ頃からお住まいなんですか?
元々、僕は新市の出身で、実家は弁当屋を営んでいました。しばらくお店を経営していたのですが、奥さんが肌の弱い人で、食べるものや自然環境を気にするようになったら、自分で農業をしたいと思うようになって。僕は自然農法というやり方をしたかったのですが、広島県内でそういった作り方をしている人を探していったら、広瀬でやっている方がいることがわかったんです。そうしていろいろ教わるうちに、広瀬だったら畑もすぐ貸してもらえるよと言われ、タイミングよく家も貸していただけたので、広瀬で暮らすことにしました。2005年の秋のことです。正直、農業で暮らしていくには、庄原のような県北に行かないと難しいのかなと思っていたので、びっくりしました。両親も祖父母も近いので安心です。
▲ひろせ冒険遊び場運営委員会 橘高昇吾さん一家
-では、最初は農業を?
ええ、6年くらいやっていました。ですが、子どもも産まれて、家族5人を養うのはちょっと厳しいなと思い、イベントに出店したり、親戚の電気工事の仕事を手伝ったり、いろいろやりました。今は、建築作業の現場で働いています。元々、ものをつくるのが好きなのと、電気工事をしていたときの経験がかなり役立っています。子どもたちが大きくなったらいずれ、また農業をやりたいと思っています。
-冒険遊び場について、教えていただけますか?
「冒険遊び場」は、日本全国にある子どもが「遊び」をつくる遊び場です。火を使ったり、地面に穴を掘ったり、木に登ったり、子どもたち自身がやってみたいと思うことを実現できる場です。
僕自身、自分の子どもに伸び伸びと遊ばせてやりたいと思って広瀬に来たのですが、実際は子どもたちは家で携帯型ゲームをしている、街と変わらない光景があることに衝撃を受けました。その時、「子どもは自然があれば伸び伸びと遊ぶとは限らないんだ」ということに気が付いたんです。その頃、ちょうど他地域での「冒険遊び場」の取り組みを知り、地域の人で管理をしている広場を使わせてもらい、やってみることにしました。
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-広瀬の冒険遊び場ならではの点を教えてください。
まず遊具がないという点ですね。それから、キレイに整理整頓しないようにしています。というのも、親御さんが子どもたちに口を出さずに済む状況を作りたかったからです。遊具があると「順番を守りなさい」「すべり台は反対からのぼっちゃいけません」、道具を整理整頓すると「ここに片付けなさい」となってしまうので。
反対にここは、親御さんはなるべく見守ろうという雰囲気があります。知らない人同士でもおやつを分け合ったり、別々のグループ同士が一緒に遊んだり、といったことが自然に起こりますし、普通の公園にはない雰囲気がありますね。べったり仲良しという感じでもなくて、それが心地いいです。
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-遊び場をきかっけに、広瀬に移り住んだ方もいらっしゃるんでしょうか?
ええ、一昨年に2世帯引っ越してきました。移住まではいかなくても、小ぢんまりした学校にかよわせたいという方も何人かいらっしゃいます。
-いいつながりが生まれているんですね。
この活動をきっかけに、広瀬に来てくれるようになった人もいます。こういう活動でつながった人とは、仕事のつながりとはまた違ったかかわりができるなと感じます。
話はちょっと変わりますが、この活動を始めた頃、「ボランティアをしている」という自負を持ってやっていたんですが、人が思うように来なくて落ち込んだりもしていて。ただある人に「それって趣味でやってるの?」と尋ねられて、「あ、やりたいことをやっているんだから、これって趣味だな」と思ったら、すごく楽になったんですね。良い意味で“いい加減”になった。
それから、ボランティアという言葉を使わなくなりました。帰り際に「ありがとう」と言われたり、片付けを手伝ってもらったりすると、得した気分になります。昔は、マザーテレサとかガンジーとか、いわゆる偉人と言われる人たちの話を聞いても、高尚な人のすることだなぁと思って興味がなかったのですが、今では「そういう人たちも自分がやりたいことをやりたいようにやっただけで、結果的に人に感謝されたんだな」と理解するようになりましたね。
だから、僕自身、試してみたいことをやっています。こういうことをしているから誤解されやすいんですが、別に子どもと遊ぶのは好きじゃないんです。だって、手加減して遊んであげるのって、気を遣うし面白くないじゃないですか。だから子どもが自分で遊んでくれる方がいい(笑)。どういう状況をつくれば、子どもたちが自分たちで伸び伸び遊ぶかを実験しているんです。
-それは他の活動にも共通しているんでしょうか。
そうですね。広瀬では、若い世代が住んでもらいやすいように、地域の人で空き家を整備しています。そういう活動も、やったらどうなるか試してみたくてやっています。
移住希望者の方にお会いすると、時々ユートピア(理想郷)を探しているような人にも出会うんです。だけど、自分の住みたい地域は自分でつくるものだと思うんですよね。用意された環境に求めてばかりでは、いつまでたっても理想郷は見つからないです。
田舎の面白いところは、街なかよりも変えやすいところじゃないでしょうか。最初は僕も、地域の役は当て職くらいにしか思っていませんでしたが、やってみたいことを提案すれば実際に動きが生まれるので、面白いと感じるようになりました。僕が頼まれるのが好きな性格だというのもあるんでしょうが、頼られて生きるのは楽しいですよ。「生きてる感」がある、というか。
-「まちのために何かしたいけど、何から始めていいかわからない」という方に時々お会いすることがあるんです。橘高さんのこれまでの経験から、そういう方に何か言えることがあるとしたら…いかがですか?
そうですね…僕はあまり“地域のために”と思ってやっているつもりはないんですが、「まちのために」と言ってもまちも大きいので、自分で発見してこないといけないんじゃないかなと思いますね。
以前、仕事の現場近くにある小さな公園のトイレがとてもきれいだったことがあって。しかも、トイレの周りには木で作ったフクロウの置物とかがたくさんあるんです。面白いなと思って、近くにいたおばちゃんに声をかけると、自分が毎日トイレの掃除をしていて、置物は公園の木を剪定した時のもので近所の人が作っていて、他にもいろんな動物の置物があると教えてくれました。
そうやって、小さなことですが自分で気が付いたことをやってみるところから始まるのかなと。誰かが気づいて声をかけてくれると嬉しくて、それが毎日続いている。そうして続けていると、人の輪は広がっていきますから。
僕の好きな言葉に「気は心」というのがあります。あってもなくてもいいくらいの些細なことであっても、相手を思ってすれば相手に伝わるし、自分の気持ちも違います。できることをみんながする気持ちの連鎖が生まれれば、人の集まりがまちですから、いいまちになるんじゃないかなと思います。冒険遊び場も、そういう連鎖を作りたいです。
-“地域のために何かしたい”とはあまり思っていないんですね。
そうですね。でも、根底にあるのは、地域の人たちが今の自分に育ててくれた、という気持ちです。広瀬に来るまでは、人付き合いもあまり好きではなかったし、ボランティアのような活動をするような人でもありませんでしたから。だから、自分がやってみたいことをやることを通して、地域の人が喜んでくれたらいいなという気持ちはいつもあります。
5月にある「ひろま」というマーケットのイベントもそうです。小さなコミュニティのいいところは、自分でもできることや関われることがすぐに見つかることじゃないでしょうか。何かすることで迷惑をかけるかもしれないとか、そういうことを考えても、生きている限り必ず迷惑はかかるし、そこはお互いさまですから(笑)
-「住みたい地域を自分たちでつくる」。「頼られる生き方」。また一つ、橘高さんのお話から福山らしい暮らし方のヒントが見えました。年に一度の大きなイベントがあるこの時期に合わせて、ぜひ広瀬を訪れてみてください。
≪お知らせ≫広瀬のみなさんに会いに行くなら!
第3回ひろま(広瀬マイスタークラフトフェス)
日時:2017年5月27日(土曜日)・28日(日曜日)10時00分~16時00分
場所:福山市加茂町北山226付近
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問い合わせ先:ひろま実行委員会
Facebookページ:https://www.facebook.com/pg/hiromafes/
ホームページ:http://hirose-hiroma0.wixsite.com/home
橘高さんのひろせ冒険遊び場も同時開催です。
場所は福山市加茂町北山の広瀬保育所近くです。
ひろせ冒険遊び場運営委員会
ホームページ:http://asobipark.web.fc2.com/index.html