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広報ふくやま2024年1月号特集「枝広市長新春インタビュー」全文
枝広市長新春インタビュー全文
2023年の振り返り
1.まちの景色の変化
2.福山ネウボラの強化
3.ポスト築城400年事業と世界バラ会議に向けた準備と盛り上がり
2024年の取り組み
4.世界バラ会議福山大会に向けた総仕上げ
5.若い世代の活躍支援
6.活力ある地域づくりとデジタル化
7.都市魅力の創造
8.皆さんへのメッセージ
まちの景色の変化
中根 枝広市長、明けましておめでとうございます。
市長 明けましておめでとうございます。
中根 昨年はまちの景色も変わり始めた1年だったように感じますが、振り返っていかがでしょうか。
市長 まず駅周辺ですね。お城がすっかりと変わりました。
特にライトアップされた天守が美しいという声をよく伺います。
そして駅を降りてすぐ右手に旧キャスパという商業ビルがあったんですが、そこに3棟の新しいビルが建つことになりました。最上階まで建ち、これからいよいよ内装工事に入っていきます。
駅前もすっかり変わりますね。
それから抜本的な浸水対策をこれまで5年かけて進めてきました。
平成30年に大きな水害に見舞われたんですが、二度とあのような景色を見たくないということで170を超える事業を進めてきました。今年3月にはいくつかの地域で完成した施設の披露をしたいと考えています。
安全安心なまちが私たちに戻ってきました。
中根 大掛かりな工事なので、皆さんも結構目に見えて変化を感じているんじゃないでしょうか。
市長 既に成果が出た取り組みや成果を実感していただいてる取り組みもあります。
「今まではすぐに道路が水に漬かっていたのに、そういうことがなくなりました」など、とてもうれしい声も聞いています。
中根 そして駅前も結構にぎわいそうですね。
市長 若い人が駅前に集い・憩い・楽しみ・交流する、そんな駅前づくりに向けて進めていきたいと思っています。
中根 完成が楽しみですね。
市長 そうですね。
福山ネウボラの強化
中根 そして福山市は子育て支援が充実している印象があります。
市長 ありがとうございます。
2017年に福山ネウボラという取り組みをスタートしました。これはフィンランドの子育て家庭の支援の考え方を日本に持ってきたものです。「ネウボラ」はフィンランド語で「アドバイスの場」を意味します。
福山市では県内に先駆けて、子育て家庭の相談を受ける「あのね」という相談窓口を13カ所つくりました。
そしてこれまでに11万件を超える子育て世代からの相談を受けました。
このように気安く相談していただける場所があることも福山ネウボラの1つですね。
それから「えほんの国」という子ども連れのご家庭が遊びに来て、本を読んだり、遊んだりできる施設を天満屋の中にリニューアルオープンすることもできました。
また昨年4月には5年ぶりに待機児童ゼロを達成しました。
そして福山市では中学生までを対象に子ども医療費の助成をしています。1回の医療費が500円で済むという助成制度です。今までは所得制限があったんですが、10月からはその所得制限を撤廃しました。子育て世代の方々には「より子育てしやすくなった」「医療機関にかかりやすくなった」と好評いただいてます。
中根 その結果、いい反響はありましたか。
市長 「福山で子育てをしたい」という声が増えてきています。
なかなか目に見えて、そうした声を実感するということは難しいですが、アンケートを取ってみると明らかに数が増えてきています。
それからもう一つは病気にかかったときに安心の医療機関がないといけませんね。
福山市には500床を超えるベッドを持った市民病院がありますが、市民病院の本館を建て替えます。これまでも小児科や産婦人科の機能を充実してきました。
今から10年後にはすっかりリニューアルした先進的な医療を提供できる市民病院に生まれ変わります。
中根 そうなるとまた子どもたちが溢れるまちになりそうですね。
市長 いいですね。私たちの理想です。
それをめざして、まちづくりをしていきたいと思っています。
ポスト築城400年事業と世界バラ会議に向けた準備と盛り上がり
中根 そして2022年から続いていた福山城400年博が終了しまして、次は世界バラ会議福山大会への取り組みですね。
市長 昨年1月に築城400年の取り組みが終わりました。感動的ですばらしい閉幕式を終えることができました。
そして私たちはその後の取り組みもしっかりと意識しながら続けていきたいと思っています。2月には田村淳さんに福山城名誉城代にご就任いただきました。
それから天守の最上階の天空の間を事業者・団体の皆さんに積極的に活用していただきたいと思っています。昨年1年間で15の団体の方々に活用していただきました。
また昨年はナイトタイムエコノミーについての基本方針のたたき台を策定しました。
昼の天守もきれいですが、夜の天守の姿は格別ですよね。
ライトアップされた天守を中心に駅周辺の夜を快適な空間に作り直すため、ナイトタイムエコノミーと称しまして、夜のお能やお茶会、ジャズフェスティバル、夜店など、さまざまな取り組みが毎月、駅周辺のどこかで行われているような駅周辺づくりに向けた基本方針をブラッシュアップしながら、今年からいよいよ本格実施していくことになっていきます。
そして国宝化に向けた取り組みですね。
駅から見て左手に伏見櫓と筋鉄御門があります。これは伏見城から移築をされた当時の建物です。この櫓と筋鉄御門をセットで国宝にしたいと思っています。もともとは国宝だったんですが、今は重要文化財になっています。再び国宝に向けた取り組みを開始したいと思っています。
そして、いよいよ世界バラ会議に向けた取り組みですね。
昨年はばら公園のリニューアル工事に着手をしました。そして10月には世界バラ会連合の会長が福山に来て、最終的な準備状況を確認しました。
また世界バラ会議を応援しようという応援宣言を全国から募集していますが、1,000件を超える方から私も賛同しますという応援の声をいただきました。
それから市民や企業がばらをテーマに新しいイベントや商品開発の提案を受け付けたところ、103のアイデアが寄せられました。それに対して「採択をします」という通知書をお渡して、これから一緒になって取り組んでいきます。ますます機運が盛り上がっていく時期になりましたね。
中根 市民の皆さんも楽しみにしていることが増えそうですね。
市長 そうですね。
これまでは「バラ会議があるけど、私たちは一体どうすればいいんだろう」「どういう形で参加すればいいんだろう」などの不安があったようですが、具体的な姿が出てきて、市民の皆さん方もイメージができてきているという実感を持っています。
中根 今年が楽しみですね。
市長 楽しみですね。
世界バラ会議福山大会に向けた総仕上げ
中根 2024年の福山市はどんな1年になりますか。
市長 来年5月の世界バラ会議福山大会の向けた準備の総仕上げの年になります。
春にはボランティアの募集を開始したいと思ってます。4月にはばら公園がリニューアルオープンします。
そして5月、これは大きな節目になりますが、ちょうど大会の1年前ですね。5月からは大会への参加申し込みの受け付けが始まります。
今回の福山大会では新品種のばらのコンテストを開催することになっています。いよいよ今年からそのコンテストの審査を開始します。
どんな新しいばらが福山大会のレガシーとして誕生するのか楽しみです。
中根 機運が高まってきそうですね。
市長 そうですね。
若い世代の活躍支援
市長 それから今年は若い世代が活躍する年にもしていきたいと思っています。
一つは少子化対策ですね。今、未婚化や晩婚化が私たちの社会の課題になってきています。
そこで結婚を希望する人への支援や、若い人たちが結婚・子育てを考えられる職場づくりなどの取り組みをしていきたいと思っています。
それから実際に子育てをする若い世代の声を聞いて、それを施策に反映する取り組みも重要だと考えています。
それぞれの立場にある方100人に集まっていただいて、それぞれ子どもに対する思いや子育てに対する思いを語っていただき、それを政策に反映する取り組みをしていきたいと思っています。
それから子ども未来館のプロジェクトを進めています。昨年8月に基本計画ができ上がり、今年は事業者の選定に向けた準備を開始し、事業内容の検討がスタートします。
それから福山市立大学に情報工学系の学部を新設しようという動きが始まっています。
福山市内の高校生が理工系の学部に進学しようとしても、その受け皿となる学部が福山市立大学にありません。だから若い人が市外に流出していって、そのまま戻ってきません。
そんな課題の克服にもつながる、情報工学系の新学部設置です。今年は基本構想を策定します。そして大学において設置・認可に向けた準備を進められるよう支援していきたいと思っています。
こうしてさまざまな取り組みをしながら、若い人たちが希望を持てる、そんな年にしていきたいと思っています。
中根 将来の福山をつくっていくのはその若い世代になるわけですよね。
市長 若い人に目を向けてもらえる、そして住んでみたい、住み続けたいと思ってもらえる魅力ある都市にしていきたいと思っています。
活力ある地域づくりとデジタル化
市長 そして活力ある地域がないと福山は元気になりませんね。そこで活躍する人も元気でないといけません。
今、私たちはそういう意識を持って地域未来ビジョンを策定していこうと呼び掛けています。
今までは地域単位、小学校区単位で地域の課題解決に取り組んできましたが、これからは地域と地域、さらにまた地域がつながって、同じ思いを持った地域が未来に向けて新しい取り組みをする。また地域だけに限らず同じ思いを持った人がつながって、取り組みをしていく。あるいは物がつながる、例えば祭りでつながっていく、さまざまなものがつながることによって、熱が生まれて、活力につながっていく。そんな取り組みを進めていますが、その第1号が生まれました。
それはデニムをテーマにした取り組みです。
今は大量生産によるデニムが一般的な姿ですが、そうなると端切れが出てきてしまったり、売れ残って廃棄する商品が出てしまったりします。それは環境にやさしくないということで、これからは注文生産によるオンリーワンのデニムの製作に取り組んでいく、あるいは廃棄物を別の商品に生まれ変えさせていく。そうすると環境にやさしい取り組みになりますよね。それをエシカルデニムと呼んでいます。
環境にやさしいデニムを作って、全国に発信しよう、世界に発信しよう、そんな取り組みです。
今は取り組みをスタートさせて議論をしていますが、それをビジョンの形にまとめ、さらに取り組みへの追い風にしていこうという段階に入ってきています。
また第2号、第3号のプロジェクトの誕生を我々も支援していきたいと思います。
それから企業の活力も重要ですね。「グリーンなものづくり企業プラットフォーム」という取り組みを進めています。
環境技術を取り入れた企業や女性の活躍を支える、高齢者や障害者雇用に熱心な企業、あるいは共働き・共育てに温かい経営者など、そうした企業に集まってもらって、自分たちの価値をもう1回見直して、再評価・見える化しようという取り組みです。
そういうところから新たな高みに向かって企業は進んでいきます。
これまではものづくりの企業、製造業は暑い工場の中で汗びっしょりになって夜遅くまで働いて、終わったらへとへとに疲れてしまうというイメージが定着していました。
それだと若い人たちはそちらになかなか目を向けてくれませんよね。特に女性はそうした職場を嫌がるかもしれません。
実は福山のものづくりはそうではないんですね。環境に配慮した企業や女性の活躍を支える企業がたくさんあるんです。それを知られていないんですね。
そこで、このプラットフォームから発信をすることによって、若い人たちが福山の製造業に目を向けてくれるようになる、そんな取り組みを期待したいと思ってます。
何よりも今まで自分たちが取り組んできた、すばらしい取り組みを経営者が実は十分評価できていないことも、福山の多くの企業の課題かもしれません。しっかりと自分たちの強みを経営者が理解できれば、そこからさらに次のステップに進んでいくことができると思いますね。
グリーンなものづくりの取り組みを行う企業をしっかりとサポートしていきたいと思っています。
それからデジタル化の推進ですよね。
今は「行かない・書かない・待たない」市役所をめざしています。
もうすでに取り組みが始まっていますが、これからもどんどん進めていきます。
分かりやすいのは交流館ですね。
今までは交流館を利用しようとすると、交流館に行って予約をしないといけませんでした。そして使うときにはもう1回交流館に行って鍵をもらいます。さらに終わった後は自分で鍵を閉めて、また交流館に鍵を返しに行きます。
これからはスマホで申し込みをすると暗証番号が送られてきます。実際、使う日に交流館に行って、その暗証番号を入力するとドアが開きます。
このようにスマホで操作すると、これまでの手間がなくなりますね。
もちろん地域のデジタル化も必要です。
これまでは分厚いチラシを入れた回覧板を役員さんが届けて、また皆さんもそれを隣の家にまた受け渡していました。これは大変ですよね。戻ってきた回覧板を見ると、チラシがほとんど減ってないんですね。
そんな無駄を省くために電子回覧板の取り組みが今進んでいます。こうすることでチラシを配る手間やチラシを印刷するコストも節約することができます。
あとは産業のデジタル化です。企業はどんどん今、デジタル化に向けてスピードを加速しています。
中小企業もこの波に遅れることは競争力をなくす、そういうことでもありますね。
しっかりした企業経営者にもデジタル化の意義を理解していただいて、成功例をしっかり見ていただいて、そして、どこから取り組んでいいか分からないという経営者の皆さん方には順序を追って、ここから取り組みましょうとすると全体の安心にもつながりますね。
そんなデジタル化の取り組みにも積極的に取り組んでいきたいと思っています。
中根 なるほど。一言でデジタル化と言っても幅広いですね
市長 そうなんですよね。それだけ世の中の動きが待ったなしということでもありますね。
高齢者の皆さんは、スマホをなかなか勇気を持って触れないんですね。間違ったところ触ると、また最初からやらないといけないんじゃないかというような恐怖感があります。こうした高齢者に安心して、そして気楽にスマホを操作していただける取り組みも併せてしていきたいと思っています。
都市魅力の創造
市長 最後に魅力ある都市づくり、都市の魅力の創造にも取り組んでいきたいと思います。これはとても大きな課題だと思っています。
まず駅前が今、どんどん変わっていっています。
旧キャスパ跡に建ってる3つのビルは、3月に建物がいよいよ完成します。そして9月には1階と2階のフロアに商業施設が入って、グランドオープンの時期を迎えます。
そして、その後は目の前の広場を再整備していく取り組みを本格化していきます。
今年中あるいは来年には、広場の再整備の基本計画を作って、市民の皆さんに提示をして、新しい駅前のイメージを共有していきたいと思っています。
それからナイトタイムエコノミーですね。ナイトタイムエコノミーの一環として、6月からはいよいよ月見櫓に泊まっていただく城泊がスタートします。城泊体験者は月見櫓の他にも、御湯殿そして天守など福山城を一晩貸し切りにしていただけますね。
そんなすばらしい城泊体験を提供しながら、それを核に駅周辺の夜を美しく彩っていきたいと思っています。
そして私たちはこれまで、小学生の芸術や文化に親しむ機会を提供してきました。
例えば市内の小学4年生全員をふくやま美術館に招待して、美術館所蔵のすばらしい芸術作品を鑑賞する時間を過ごしてもらいました。また毎年5月に行っているばらのまち福山国際音楽祭に、市内の小学5年生全員を招待して、すばらしい世界のアーティストの音楽を聞いてもらう機会を提供してきました。
今年からは広島交響楽団がリーデンローズで5回の定期演奏会を新たに行います。そして京都市交響楽団も5回の演奏会を行います。この全10回の演奏会のうち4回は、市内の中学2年生全員を招待して、芸術や文化に触れる機会を増やしていきたいと思います。
とても多感な世代の子どもたちに本物の芸術に触れて、優しい気持ちや思いやりの気持ち、豊かな気持ちを育んでもらいたいと思っています。これこそ私たちがよく口にする本当の意味の「ローズマインド」です。このようなとても優しく豊かな福山の未来を担っていただく世代を育成したいと思います。
そのような取り組みを本格化させる1年にしていきたいと思っています。
皆さんへのメッセージ
これまでの5つの挑戦によって、市政に変化が表れてきています。
その変化を確かな成果につなげ、誰もが安心して暮らせ、未来に希望が持てる新たな都市づくりに取り組んでいきます。
引き続きスピード感・情報発信・連携を基本にして、市民の皆様の声をしっかりと受け止め、市政運営に取り組んでまいります。