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お手火神事(おてびしんじ)

印刷用ページを表示する 掲載日:2016年3月31日更新

市指定無形民俗文化財 昭和48年(1973年)3月31日指定

 この神事は鞆祇園社の祭神素盞尊【すさのおのみこと】の神輿渡御に先だって行なう祓いの行事である。かつては旧暦6月4日に行なわれていた。
 手火は,子割りした肥松【こえまつ】を青竹でくるみ,縄で結び固めた長さ3.6m,重さ約150kgの大きな手火3体を随身門南に並べ置き,小さな手火1体を神殿に安置する。
 祭礼の当夜,午後7時に5張の太鼓が少年達によって連打され,続いて午後8時・9時と打ち鳴らし,その後宮司の手で神火が小手火に移される。やがて神火は世話方に移され,石段下の3体の大手火に点じ,神輿庫の祓いを行なう。
 神火の移された大手火は,油のまわった肥松に燃え移り,火勢を強め燃えあがる。これを当番町の氏子百数十人が,ずぶぬれにした法被を頭にかぶり,交替しつつ随身門から拝殿へ通じる45段の石段を担ぎ上げる。三歩前進二歩後退,わずか30m程の石段を1時間余もかけて登る。ふき上る火の粉,もみ合う氏子,小手火をかざし神火を移す群衆,あがる歓声,境内は一面火の海となり,興奮のるつぼと化す。

 大手火を拝殿前に安置した後,神輿を出して境内を練り拝殿へ納める。再び大手火を境内隈なく担ぎ廻り,町内を練って神事は終わる。神火を小手火に移した参拝者は家に持ち帰り,家内安全・五穀豊穣を祈る。また,大手火の燃え落ちた黒こげの木片を持ち帰り,家の表口に釘で打ちつけ,厄払いの護符とする。
 火がすべての不浄を清めるという概念が,こうした勇壮な火の祭典と信仰に変化したものと思われる。

所 在 地鞆町 
沼名前神社氏子

 お手火神事