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令和3年第1回定例市議会 市長総体説明

印刷用ページを表示する 掲載日:2021年2月22日更新

 先ほどは,「令和2年度福山市一般会計補正予算」を御可決いただき,ありがとうございます。
 ただ今,御上程になりました「令和3年度福山市一般会計予算」を始め,諸議案の御審議をお願いするに当たり,新年度における市政運営の基本方針と予算案の大要について御説明申し上げます。

 

現状認識
 新型コロナウイルス感染症の影響により,国民生活は依然,厳しい状況に置かれています。国によると,2020年(令和2年)の実質GDP成長率は,個人消費の低迷などから速報値で前年比4.8%減と,リーマンショック後の2009年(平成21年)以来のマイナス成長となり,過去2番目の悪化幅となりました。国においては,これまで3度にわたる補正予算を編成し,雇用と暮らし,そして,経済を守り抜くための対策を実行してきました。しかしながら,先月には緊急事態宣言が再発令されたことなどから,景気回復への足取りは重く,引き続ききめ細かな支援が求められています。
 一方,新型コロナは,大都市圏における過度な人口集中がもたらす感染拡大のリスクを浮き彫りにしました。また,人々の生活様式のみならず,価値観や行動にまで大きな影響を及ぼすことにもなりました。昨年7月から12月まで6か月連続で東京都は転出超過となりましたが,これは,感染リスクを避け,大都市への移動を控えるという行動変容が反映されたものと受け止めています。
 新型コロナについては,今も新たな変異株の確認が続くなど,終息までにはなお時間が掛かることを覚悟しなければなりません。また,私たちは,これまでに,「感染拡大防止と社会経済活動の再開の両立」と「新型コロナの医療と通常の医療の両立」という二つの「両立」の難しさを思い知らされてきました。しかし,これらは何としても乗り越えなくてはならない壁です。市民生活に一日も早く安心が戻るよう,強い気持ちを持って,新型コロナウイルス感染症対策に全力を尽くしてまいります。
 先週からワクチンの先行接種が始まりました。まずは的確な情報提供に努めることで不安を払拭し,できるだけ多くの市民の方々が円滑に,そして効率的に接種を受けられるよう万全の体制を構築していきます。

 

福山みらい創造ビジョンのスタート
 
新年度は,これまでの「5つの挑戦」を更に発展させ,変化を確かな成果につなげていくためのスタートの年です。コロナ時代の新しい都市づくりを進めていく「新たな5つの挑戦」の始まりでもあります。このための指針となる「福山みらい創造ビジョン」を来月末までに策定します。
 新たなビジョンでは,地方での暮らしが注目される中,自由に,多様なライフスタイルが選択できる「新分散型社会」をめざします。そこには,市外から人や企業をひき付ける拠点性の高い都市空間や歩いて楽しめるコミュニティ空間が存在しています。危機管理への高い対応力も備わっています。また,地域経済に活力を与え,子育て家庭や高齢者などが安心して暮らしていくために不可欠な視点が,デジタル化の推進です。市政モニターからも,子育て,医療,産業などの分野に高い関心が寄せられています。デジタル化を基盤に,「安心な暮らしと希望が実現する都市」をめざします。
 新年度予算については,「安心と希望のための挑戦予算」と名付け,「新型コロナウイルス感染症対策の強化」,「都市魅力の創造」,そして「人口減少対策の強化」の3つの柱とデジタル化の推進に約217億円を重点配分いたしました。一期目の市政をそのまま“継続”するのではなく,心新たに,「スピード感・情報発信・連携」を市政運営の基本に据え,“新たな挑戦”に全力で取り組んでまいります。

 

新型コロナウイルス感染症対策の強化
 
まず,新型コロナウイルス感染症対策の強化について申し上げます。
 本市では,これまでに複数のクラスターが発生し,一時は医療現場のひっ迫が懸念されましたが,現在では新規の感染者数は一定数に抑えられています。しかしながら,若年層の感染が減少しておらず,また,接待を伴う飲食店での感染も続いています。再び感染拡大を引き起こすことがないよう,県とも危機感を共有し,追加的な強化策を早急に打ち出すことを検討しています。
 感染拡大を防止するためには,必要な検査を確実に実施できる体制の整備が不可欠です。十分な行政検査件数の確保と自己負担の無償化を継続していきます。また,医療現場のひっ迫を回避するため,感染症の治癒後も基礎疾患などの治療を必要とする方を受け入れる後方医療機関を支援する事業を創設します。医療関係者の理解と協力があって初めて可能となるこの事業は,先進的な取組と言われています。御協力に,心から感謝申し上げます。
 感染症対策の決め手と期待されるワクチン接種については,現在,円滑な接種に向けた準備を進めています。本市においては,来月中旬に医療従事者等への優先接種を開始します。早ければ4月以降,65歳以上の方へと順次対象を広げていく予定であり,市内5施設を主会場とする集団接種と市内医療機関での個別接種の併用方式とします。接種予約は,電話又は専用サイトから行っていただきます。来月1日にはコールセンターを開設し,ワクチン接種に関する相談を始めます。これだけの大規模接種は本市にとっても初めての経験ですが,多くの医療機関から協力の申出をいただいています。ワクチン供給量の見通しなど不確実な部分もありますが,医師会を始めとする関係機関や国・県と密接に連携し,市民の皆様にしっかりと安心を届けていきます。
 一方で,社会経済活動の再開に向けた歩みを止めるわけにはいきません。
 まず,子育て世帯や高齢者,障がい者といったコロナ禍の影響を受けやすい方々の生活をしっかりと支えていきます。出生児とひとり親家庭への市独自の応援金の創設を始め,子どもの見守り拠点となる子ども食堂への支援を強化します。また,引き続き,在宅の高齢者や障がい者への安否確認を兼ねた配食サービスを拡充するほか,コロナ禍で離職を余儀なくされた方を対象とした緊急雇用対策にも取り組みます。
 中小事業者への支援としては,県の集中対策の実施により売上げが大幅に減少している飲食店に対し,県と連携した応援金を創設しました。このほか,事業者の手元資金の確保のための小規模事業者経営改善資金利子補給の継続や,ICT導入の促進などコロナ禍における企業のビジネスモデル転換を支援します。また,雇用維持に向けた人材シェアリングの取組を産業雇用安定センターと連携して進めていきます。
 支援を求める小さな声にも耳を傾け,互いを思いやり,助け合い,市民が心を一つにして共に困難な状況を乗り越え,希望の明日へとつなげていきます。

 

デジタル化の推進
 
コロナ禍で顕在化した社会的課題の一つがデジタル化の遅れです。これ以上,時を徒過するわけにはいかないとの認識が強まり,国を挙げての取組がスタートしようとしています。
 デジタル技術は,子育て支援や高齢者,障がい者の生活支援を行う上で,時間や場所に捉われることなく,市民一人一人に質の高いサービスを提供してくれます。また,企業活動においても,新事業創出の可能性を広げるなど,人口減少社会における社会経済活動には欠かせないものです。
 そのため,新年度は,専門人材を最高デジタル責任者(CDO)として招へいし,本市のデジタル化の司令塔に据えます。その下に,複数の補佐官によるデジタル化推進チームを編成し,産業・地域・行政の3分野のデジタル化に本格的に取り組みます。
 事業者は,テレワークの導入などの働き方改革やオンラインでの展示会の開催,農業のスマート化,面接・インターンシップのオンライン化など,コロナ時代に対応したビジネスモデルへの転換を迫られています。しかしながら,何から取り組んでいけばいいか分からない事業者が多いのが実態です。産業のデジタル化に向けて,「びんごデジタルラボ」や「びんごICT相談所」を本格的に稼働させ,デジタル化の課題や成功事例を共有し,ICTの導入を支援していきます。
 地域のデジタル化では,住み慣れた地域で心豊かに安心して暮らせるよう,高速通信網の未整備地域を解消します。そして,高齢者などがデジタル社会に取り残されることがないよう,使い方の講習会を地域で開催します。また,近未来の自動運転を見据えたモビリティサービスや自宅で希望する医療が受けられるヘルスケア等の実証実験にも取り組んでいきます。
 行政のデジタル化では,市民が,いつでも,どこでも行政手続ができるよう,オンライン申請手続を拡充していきます。AIによる案内サービスも拡充します。これにより,24時間365日,スマートフォンからの相談が可能となります。そのほか,キャッシュレス決済による市税等の納入やマイナンバーカード交付の予約システムなどを着実に進め,行政サービスの利便性を高めていきます。

 

都市魅力の創造
 次に,都市魅力の創造についてです。
(福山駅周辺の再生)
 備後圏域の玄関口である福山駅周辺を,居心地が良く,歩いて楽しい,ウォーカブルな空間に変えていきます。新年度から,その核となる駅前広場の再編に着手します。官民連携による協議会を立ち上げ,交通結節点機能と人々が交流するための広場機能をどう融合させていくか,そしてまた,周辺エリアとの回遊性や求められる多様性について検討を開始します。2022年度(令和4年度)中の基本方針の策定をめざします。
 駅周辺の回遊性を高めるため,送迎バス乗降場については駅南側の3か所へ移設します。三之丸町の旧キャスパ等跡地については,予定どおり新年度から複合施設の建築工事に着手されると伺っています。まちに開かれたデザインを取り入れることで,多くの人が集う場となることを期待しています。中国・四国地方初となる中央公園のPark‐PFI事業は,5月上旬にガーデンレストランがオープンし,また一つ,新たなにぎわいが創出されます。エフピコRiMについても,来年4月のリニューアルオープンに向け,設計・工事に取り掛かります。
 また,駅から城への人の流れを確かなものにしていきます。来年の福山城築城400年を見据え,段差の解消や芝生化を行う駅北口スクエア広場整備を始め,周辺道路の美装化や電線類地中化を進めていきます。
 この度,JR西日本から,新型コロナの影響で駅北口広場整備等に関する協定書の履行が困難となった旨の申入れがありました。これを受け,協定書は廃止することになります。駅北口は,当面,築城400年記念事業に向け,イベント広場等として暫定活用することといたします。そして,駅前広場の議論の進展を見極めつつ,改めて駅北口整備の在り方を検討していきます。
 コロナ禍にあっても再生への歩みを止めることなく,着実に進めてまいります。
(個性豊かな地域づくり)
 
「新分散型社会」には,個性豊かな地域づくりが不可欠です。そのため,2022年度(令和4年度)からの4年間を計画期間とする地域戦略を新たに策定します。
 同時に,支所の広聴機能を強化し,身近な地域課題の把握に努めます。そして,地域活性化会議を通じてその解決策を講じていきます。まずは,これまでも解決を望む声が多く寄せられていた空き家対策を始め,有害鳥獣被害防止のための緩衝地帯の整備などに取り組みます。将来的にはコミュニティビジネスを通じて小さな雇用を生み出すなど,地域の自立につなげていきます。
 市民が自らの地域に誇りを持って暮らし続け,地域活動に積極的に関わっていきたいと思える地域づくりを進めていきます。
(医療提供体制の充実)
 がん医療・救急医療・高度専門医療の機能強化に向け,新年度,福山市民病院の本館建て替えの基本設計に着手します。4月には小児救急医療拠点病院の指定を受けるほか,総合周産期母子医療センターの指定に向けた取組を進めます。引き続き,備後圏域の基幹病院として,良質で高度な医療を提供し,地域の安心と希望の子育てに貢献します。
 また,長年の課題とされている医療人材の確保のため,岡山大学に寄付講座を設置するとともに,後でも述べますが,医師や看護師をめざす学生に対する新たな支援制度も創設し,安定した医療提供体制の確保に努めていきます。
(防災・減災の推進)
 
自然災害への備えを万全にし,市民の暮らしを守ります。
 抜本的な浸水対策については,国による芦田川の河道掘削や堤防の強化工事のほか,県においては瀬戸川・手城川の河川改修工事や(仮称)福川排水機場の新設工事に取り組みます。本市においては,事業間連携事業を本格化させます。手城川流域内水排除対策として雨水幹線事業等の推進や谷地川の河川改修などを着実に実施していきます。
 また,ため池についても安全対策を強化します。耐震化や廃止工事に計画的に取り組むほか,防災重点ため池のハザードマップを作成します。
(地域産業の活性化)
 
強い地域経済を実現します。備後圏域内での経済循環を強化するための地域商社機能について,検討を深めていきます。これにより,商品価値の向上や販路拡大だけでなく,成長可能性のある産業や地域資源の掘り起こしにつなげていきます。
 次世代のビジネスリーダーの育成のため,県立広島大学との連携を強化します。先般,2022年度(令和4年度)からの福山駅周辺へのサテライト機能の整備に向けて,合意しました。中小企業を支える高度人材を育成し,地域経済の発展につなげます。
 農林水産業については,今ある6つの計画等を一本化し,2022年度(令和4年度)からの10年間を計画期間とする農林水産振興ビジョンを新たに策定します。先端技術の活用などにより,活力ある一次産業をめざします。
(MICEの推進)
 
MICE戦略に基づき,産業MICEに取り組むためのネットワークを構築します。また,特色ある歴史・文化資源を活用したエリアMICEを推進していきます。その一環として,多言語案内表示の整備を進めるためのMICE推進サイン計画を策定し,受入体制の整備を本格化させます。
 来年の福山城築城400年に向けて,カウントダウンイベントを開催します。天守の耐震改修と外観復元,夜間景観照明整備などにも引き続き取り組みます。福山ならではの特別な体験ができるよう,博物館のリニューアルや観光庁と連携した城泊の実証実験などを行い,日本一駅から近い天守の魅力を磨き上げていきます。
 なお,新年度から,行政と観光コンベンション協会との役割を明確化し,コンベンション協会が事業を一元的に推進できるよう再編していきます。
(世界バラ会議福山大会)
 2025年(令和7年)の世界バラ会議福山大会に向け,本格的に始動します。本市にとって初めてとなる大規模な国際会議であり,この度,観光庁長官や広島県知事などの要職にある方々に実行委員会の特別顧問に就任していただきました。世界40か国から本市を訪れる方々に,戦後の復興期から今日に至る「ばらのまち福山」の歴史を体感していただきたいと考えています。感染症対策を徹底し,安心・安全な大会運営にも心がけていきます。新年度から,専用HPによる海外への情報発信を開始します。ツアーの造成にも取り組みます。また,大阪・関西万博とも連携し,国内外に開かれた都市をめざしていきます。
(社会経済基盤の整備)
 地域経済と市民生活を支える基盤を整備します。
 市内の慢性的な交通渋滞は,経済的に大きな損失をもたらすだけでなく,災害時の対策の遅れや環境にも悪影響を及ぼします。このため,渋滞解消を図るとともに,事前防災・減災対策に資するダブルネットワークの構築に向け,福山道路や福山沼隈道路,福山西環状線の一体的な整備を国・県と共に進めていきます。
 国際物流拠点である福山港の機能強化も促進します。新年度には,箕沖地区ふ頭再編改良事業が完了する予定であり,地域産業の国際競争力を高める基盤が強化されます。
 福山北産業団地第二期事業については,2023年度(令和5年度)の完成に向け,造成工事に着手します。あわせて,分譲の公募を開始し,早期の完売をめざします。
 また,低炭素社会の実現に向け,府中市・神石高原町のクリーンセンターを含む6施設を集約し,発電効率の高い次期ごみ処理施設の整備に着手します。

 

人口減少対策の強化
 
次に,人口減少対策の強化です。
(福山ネウボラの強化)
 
まず,福山ネウボラの取組を一層強化します。
 5月には,すこやかセンターのネウボラ相談窓口「あのね」を天満屋福山店に移転し,子どもの一時預かり機能も新たに備え,利便性を高めます。子育て世帯から再開を望む声が多かった「えほんの国」も併設し,楽しく,笑顔で子育てができる空間にしていきます。また,ファイナンシャルプランナーによる相談も受け付け,経済面で不安を抱える家庭に寄り添います。
 子育て家庭の実情を把握し,きめ細かな支援へとつなげていくため,子ども家庭総合支援拠点を設置します。今後は,この拠点が中心となり,県の児童相談所などと連携することで,子どもへの虐待を防いでいきます。
 社会的課題となっている男性の育児参加を促すため,育休取得者の代替要員を確保した企業に対する補助制度を創設します。
(教育環境の充実)
 
福山の未来を担う子どもたちの創造力を高め,一人一人にとって最適化された深い学びを実現します。
 (仮称)子ども未来館については,専門家も交え,子どもたちがワクワクして学び育つ場になるよう,基本構想の策定に取り組みます。
 小中学生に一人一台の学習用端末を配付し,遠隔で授業ができる環境を整えていきます。また,家庭でのオンライン学習教材も提供し,子ども主体の学びを支えていきます。これらにより得られた学力データなどを分析し,教職員の指導の工夫や改善にもつなげていきます。引き続き,福山100NEN教育を推進し,「学びが面白い!」の深化による主体的・対話的な学びを実現します。
 本年4月,福山市立大学は公立大学法人に移行します。今後も,地域や企業と連携し,デジタル化・グローバル化など新たな時代に適応できる人材を育成していきます。
(未来を支える人材育成・確保と多様な働き方の推進)
 
福山の未来を支える若者を応援していくため,未来創生人材育成基金を創設します。この基金を活用し,デジタル人材のほか,保育士や看護師をめざす学生を対象とする未来創生人材育成奨学資金を新たに広島銀行と連携して設けます。また,従業員に対する奨学金返済支援制度を創設した企業に対する補助のほか,初期臨床研修医の確保・定着に向け,研修に要する費用の補助にも基金を活用していきます。
 コロナ禍で,多様な働き方への関心も高まっています。この機を捉え,ワーケーションの取組を強化するとともに,首都圏等の兼業・副業人材と市内企業とのマッチングによる人材確保も進めていきます。多様な形で関係人口づくりを進め,イノベーションの創出につなげていきます。
(フレイル予防の推進)
 
フレイル予防の取組を本格化します。タブレット端末を導入し,過去との比較や経年変化などを分かりやすく伝えることで高齢者の健康意識の向上につなげます。より効果的なフレイル予防を進め,健康長寿社会の実現をめざしていきます。

 

新年度予算案の大要と持続可能な財政運営に向けて
 以上の結果,一般会計の当初予算規模は過去最大となる1,766億8,000万円となり,今年度当初予算と比べて28億9,000万円,率にして1.7%の増となりました。特別・企業会計を含めた全体では,3,346億2,265万1千円,率にして0.5%の増となりました。
 このうち,歳入の根幹となる市税については,個人市民税や法人市民税,固定資産税などが新型コロナウイルス感染症の影響により大きく減少し,全体では687億円と,当初予算では6年ぶりに600億円台になる見込みです。
 その一方で,子どものための教育・保育給付などの扶助費や後期高齢者医療特別会計への繰出金などの社会保障関係費は696億円と引き続き増加しています。
 こうした厳しい財政状況にあっても,本市の未来を見据えた必要な投資は止めるわけにはいきません。
 新年度当初予算では,8年ぶりに財政調整基金を10億円取り崩しました。一方で,交付税算入のある有利な市債の発行や繰上償還の実施などにより,実質的な市債の発行や公債費の抑制を図りました。また,行政のデジタル化,既存財産を活用した収入の拡大,そして民間活力の活用などによる公共サービスの再構築の3つの視点を中心に,歳入・歳出両面からなる財源確保策にも計画的に取り組み,約18億円の財源を確保しました。
 この結果,経常収支比率は84.8%と,平成の合併後の2006年度(平成18年度)以降の16年間で3番目に低い値となっています。また,実質公債費比率については1.2%と過去最も低い値となり,将来負担比率は数値が算定されない状況を維持しています。
 引き続き,安心と希望の都市づくりに向け,持続可能な財政の維持に努めてまいります。

 

組織体制
 
次に,新年度の組織について御説明申し上げます。
 喫緊の課題である新型コロナウイルス感染症への対応の強化を始め,デジタル化の更なる推進や福山駅周辺の再生加速,農林水産業の強化,そして世界バラ会議の開催に向け,体制を充実していきます。また,現場主義を徹底するため,まちづくりに係る支所等の機能充実も図ります。市民病院については,増改築事業などに対応した組織整備を行います。

 

おわりに
 
世界でワクチン接種が開始されましたが,その効果が確認される段階にはいまだ至っていません。新型コロナの世界規模での感染流行が残した爪跡は深く,高まった不確実性が人々の心を不安にしています。
 19世紀初頭のイギリスの詩人ジョン・キーツは,不確実なものや未解決なものを受容する能力を意味する「ネガティブ・ケイパビリティ」という言葉を提唱しました。今の時代に必要不可欠な能力と私は受け止めています。先行き不透明な状況にあっても,性急に結果を求めることなく,冷静さの中に答えを見いだしていこうとする心の有り様が重要です。
 私たち行政は,不確実性に覆われた社会の中で,市民一人一人が安心に暮らし,希望にあふれる未来をつくり上げていく責任があります。「ネガティブ・ケイパビリティ」という言葉を自らに問いつつ,私自身,職員の先頭に立って,この困難に立ち向かっていきます。

 予算以外の議案といたしましては,条例案として「福山市農業振興ビジョン策定委員会条例の一部改正について」など18件,その他の議案として「公有水面埋立てに関する意見について」など6件を提出いたしております。
 何とぞ慎重なる御審議の上,御可決いただきますようお願いを申し上げ,提案理由の説明といたします。

 

 

 本文は,口述筆記ではありませんので,表現その他に若干の変更があることがあります。