本文
令和6年第4回福山市議会定例会 市長説明要旨(9月9日)
本日、令和6年第4回市議会定例会を招集いたしましたところ、議員各位には御参集いただき、誠にありがとうございます。
開会に当たり、市政運営についての所信を申し上げ、御審議をお願いする諸議案の大要について御説明申し上げます。
はじめに
本市においては、20年後に高齢者人口がピークを迎えることが予測されています。進行する若者の流出や少子化に今ブレーキをかけなければ、この先、産業や社会保障、まちづくりなど様々な分野において支え手が不足し、都市の活力の維持がますます困難になっていきます。
こうした認識に立って、これまで様々な施策に取り組んでまいりましたが、選挙戦を通して、改めて福山を更に発展させてほしいという期待の声を多くいただきました。これにしっかり応え、「少子化対策・子育て支援の充実や高齢者の生きがいづくり」、「人々が集い、交流する地域の拠点づくり」、そして「都市の発展を支える基盤づくり」に一層注力していきます。
「スピード感・情報発信・連携」を市政運営の基本に、「子どもと若者に希望を、暮らしに安心を、経済に活力を」との思いを込め、以下に申し上げる新たな「5つの挑戦」に全力で取り組んでまいります。
新たな「5つの挑戦」
【挑戦1 希望の子育てと安心の医療・福祉の実現】
1つ目の挑戦は、「希望の子育てと安心の医療・福祉の実現」です。
(希望の子育ての実現)
企業と連携して、若い世代が望む結婚・出産・子育てができるよう支援を強化し、働き方改革を進めます。
福山ネウボラの体制を更に強化するため、子どもや子育てに関する様々な課題にワンストップで対応するネウボラセンターを創設します。これにより、手続や相談の煩雑さを軽減し、虐待や貧困といった課題への対応を含む、より総合的な支援を可能にします。また、子どもの遊び場も併設することで親同士の交流を促進し、子育ての楽しさや喜びを感じられる場にしていきます。
今月から第2子以降の保育料を無償化し、子育てにかかる経済的負担を更に軽減します。ベビーシッターの派遣により病児・病後児保育も拡充します。医療的ケア児の保護者の負担を軽減するため、通学支援やレスパイト機能(保護者の休息できる環境)の充実にも努めます。
また、未婚化・晩婚化への対応として、グリーンな企業プラットフォームを通じて企業の働き方改革を進め、一人で子育てを背負うワンオペ育児への懸念を払拭します。長時間労働の是正を促し、夫婦が協力して家事・子育てできる環境をつくります。
なお、子育て世帯が望む学校給食費の無償化は、義務教育制度の根幹に関わる課題であり、まずは国において無償化の実現に向けた論点を整理するよう、全国市長会を通じて強く提言してまいります。
(安心の医療・福祉の実現)
次に、地域完結型医療をめざし、圏域における医療連携と機能分化を進めます。備後圏域の基幹病院である福山市民病院において、2026年度(令和8年度)の周産期母子医療センターの開設に向け、専門病床を整備していきます。分娩取扱医療機関の減少に対応するため、福山市民病院と笠岡市立市民病院・井原市民病院とが連携して、妊婦健診や分娩対応などを役割分担する産科セミオープンシステムを導入し、安心して出産できる環境を整えていきます。産科以外の領域についても、急性期と回復期の患者の受入れを役割分担することで高度で質の高い医療体制を確保します。
また、高齢者の社会参加を促すため、介護予防や生活支援を強化します。民間活力を活用した介護予防事業「ふくやまSHINKA(シンカ)プロジェクト」を今月から開始します。また、聴力の低下によって会話を避け、社会から孤立することにつながらないよう、来月から県内初となる高齢者の補聴器購入の助成を開始します。高齢者のごみ出し支援については、昨年度から9つの学区でモデル事業を実施してきましたが、来年度から全市に展開し、更なる生活の質の向上につなげます。(仮称)まちづくり支援拠点施設に移転する老人大学では、多様な学習と多世代交流を通じて、人生100年時代を見据えた地域のリーダーを育成してまいります。
【挑戦2 都市の活力と地域の魅力の向上】
2つ目の挑戦は、「都市の活力と地域の魅力の向上」です。
(地域の魅力の向上)
これまでは福山駅周辺のにぎわい再生に全力を傾けてきましたが、もとよりこれが最終目標ではありません。官民の取組により、福山駅周辺に一定のにぎわいが戻ってきた今、これからはまちづくりの軸足を各地域の拠点づくりに移し、地域が主役となってそれぞれの魅力とにぎわいを創出する取組を本格化します。
まず、松永駅周辺のにぎわい再生をめざす「松永未来会議」が今月下旬に立ち上がります。まちづくりに意欲のある住民が主体となってビジョンを取りまとめる予定と聞いています。また、JR山陽本線で分断されている地区をつなぐ今津高西線の新規事業化に取り組みます。
神辺駅西側では川南土地区画整理事業が来年度中に概成し、駅西口広場も完成します。昨日開催された「かんなべ未来会議」では、駅東側の歴史ある町並みを核としたにぎわい再生も視野に入れ、ビジョンを策定していきます。
鞆・沼隈地域では、今年度末の鞆未来トンネルの完成を見据え、観光振興の取組を本格化させます。道の駅「アリストぬまくま」については、その拠点としての機能を発揮できるよう再整備します。また、「鞆の浦しおまち海道サイクリングロード」については、国によるナショナルサイクルルートの指定をめざしていきます。
内海地域では、漁業による地域振興をめざします。海底耕うんの実施に合わせてかき殻の散布を行うなど、県と連携し海の環境改善を図ります。アイゴの増殖により減少している藻場の回復に向け、対策を講じていきます。ブルーカーボン事業も実施し、脱炭素の取組を推進していきます。
北部地域では、駅家でかわまち広場の整備をめざすほか、広瀬学園と地域の連携による子どもを支える地域づくり、高齢者の外出を支える仕組みづくりなどに取り組みます。また、地域間ネットワークの形成に資する山野2号幹線や下安井助元幹線等の改良についても着実に進めていきます。
このほか、まちづくりの活動拠点となる交流館の計画的な建設に努めていくとともに、東村・山野・内海の旧学校施設等については民間事業者からの提案を踏まえながら地域住民の意向に沿ったにぎわいづくりを進めていきます。Park-PFIや住民が自ら企画・運営するコミュニティガーデンなど、新しいタイプの公園の整備にも取り組みます。また、地域における移動手段の確保に向け、公共交通網を再構築していきます。
こうした地域の拠点づくりを進めていくに当たっては、課題やまちづくりへの思いにしっかり耳を傾けていく必要があります。このため、合併建設計画の期間が終了し、まちづくりが次の段階に入る旧合併地域を中心に、第2弾となる車座トークを年内にも開始します。
また、地域の拠点づくりを推進していくための新たな組織体制を立ち上げてまいります。
(都市の活力の向上)
次に、都市の活力を向上させるため、引き続き都市基盤の整備に努めます。また、福山駅周辺においては、ウォーカブルなまちづくりを推進していきます。
まず、慢性的な渋滞の解消に向け、神辺水呑線高架道路の2026年度(令和8年度)の新規事業化と福山道路の未事業化区間の新規事業化を一体として進めるため、国や県への要請を強めていきます。また、福山西環状線を始め、国道486号(新市工区)の4車線化や加茂福山線の改良などについても住民の強い思いを県にしっかり伝えていきます。
今月1日、新たなにぎわいの核となる「NEW CASPA(ニュー キャスパ)」がグランドオープンしました。「iti SETOUCHI(イチ セトウチ)」等とつなげ、三之丸町周辺エリアの回遊性を高めていきます。より一層ウォーカブルな福山駅周辺をめざし、駅前広場の再整備に向けた取組を本格化させます。今月25日から交通機関の乗降場の適地選定やくつろぎの空間創出のための実証実験を行い、その結果を踏まえて年度内に基本計画を策定します。
世界バラ会議福山大会については、これまでに17か国の方から大会への参加登録があったほか、運営ボランティアは150名の募集に対して200名を超える応募があり、大会への期待の高まりを感じています。来月19日には大会200日前イベントとして、日本ばら会が主催する切りばらの全国展も福山駅前広場の特設会場で開催されます。引き続き、首都圏でもプロモーションを行うなど、大会本番に向けた準備を加速してまいります。
【挑戦3 地域経済の活性化と防災力の向上】
3つ目の挑戦は、「地域経済の活性化と防災力の向上」です。
(地域経済の活性化)
先端的な環境技術の導入や働き方改革に積極的に取り組む「グリーンな企業プラットフォーム」への参加の輪を広げ、人材確保につなげます。このため、グリーンな取組をけん引する実践グループの立ち上げをめざす企業などに専門人材を派遣し、先進事例を学ぶ勉強会の開催等の支援を強化していきます。
エフピコRiMについては、1階の「iti SETOUCHI(イチ セトウチ)」が“福山の新たな未来を育てる”事業者のチャレンジの場として利用されています。今後は、スタートアップ企業が集まり、イノベーションを生み出していく拠点としての可能性を探るため、まずは2階・3階部分について企業の意向を把握するとともに、費用負担の在り方などをデザイン会議で議論していきます。
新たな産業用地の確保に向けては、地域未来投資促進法を活用し、市街化調整区域における工場等の新規立地を促していきます。このため、企業のニーズを把握する中で、今年度中に重点促進区域を設定します。新たな産業団地については、適地調査の結果を踏まえて今年度中に候補地を選定し、来年度には土地利用計画を策定します。また、創出された土地について多様な利活用が期待される福山港内港地区の埋立てについては、早期の事業化に向けて国・県と連携してまいります。
(防災力の向上)
次に、頻発する豪雨災害や南海トラフ巨大地震などあらゆる自然災害から市民の生命と財産を守るため、防災力の向上を図ります。
抜本的な浸水対策については、この出水期までに予定していた169事業全てが完了しました。国や県、そして全ての関係者の皆様の御協力に感謝申し上げます。今後、蔵王地区の雨水幹線については、来年の出水期までに、暫定的に雨水貯留施設として供用開始できるよう工事を進めます。ポンプ場についても着実な整備に努めていきます。また、大量の雨水が下水道管に一気に流入することでマンホールの蓋が吹き上げられる現象を防ぐため、来年度末までにマンホールの改修を終えます。
大規模地震への備えを強化するため、能登半島地震を教訓に、実効性ある受援計画を年度内に策定します。引き続き、服部大池などため池の耐震工事も進めるほか、外国人に対してもわかりやすい避難情報の発信の仕組みを構築するなどソフト対策にも取り組んでまいります。
【挑戦4 未来を支える人材の育成】
4つ目の挑戦は、「未来を支える人材の育成」です。
まず、学校教育については、何よりも子どもたちや保護者の思いをしっかり受け止めて進めていくことが重要です。学力問題については、これまで議会でも課題の指摘がありましたが、新しい教育長の下で適切な対応がなされるものと考えています。子どもたちが確かな学力と豊かな人間性を身に付け、社会に貢献する人材に成長するよう、教育委員会と共に取り組んでいきます。
屋内運動場の空調設備については、新たに基幹緊急避難場所に指定されている24校について整備していきます。
次に、(仮称)子ども未来館については、民間活力の導入可能性調査の結果や外部専門家の意見を踏まえ、整備場所は旧体育館跡地とし、事業手法は設計・建設・運営を一括発注するDBO方式としました。また、外部専門家からは、大阪・関西万博のパビリオンの誘致は集客効果が見込まれ、STEAM教育が学べる「いのちの遊び場 クラゲ館」が最も親和性が高いとの意見をいただきました。これらを踏まえ、2029年度(令和11年度)の未来館のオープンに向けて事業者選定の手続に入ります。また、クラゲ館については、誘致に向け情報収集に努めていきます。「(仮称)旧体育館跡地エリアプラン」を策定し、エフピコアリーナやかわまち広場を含めたこの一帯が、本市だけではなく備後圏域の新たな交流の拠点となるよう整備を進めていきます。あわせて、福山駅と自動運転でつなぎ、子どもから高齢者までが訪れやすい環境をつくっていきます。
福山市立大学情報工学部の開設に向け、準備を進めていきます。港町キャンパスに隣接する新棟整備予定地の取得について、現在県と調整を行っています。今後は新棟の基本・実施設計に着手していくほか、教員の募集や学生への広報活動等に取り組んでいきます。
これからの日本、そして世界をリードする人材を育成するため、若い世代の各分野における革新的・先駆的取組を発掘し、顕彰する「ふくやま未来大賞」を創設します。今後、有識者や趣旨に賛同する企業・団体と詳細を詰め、チャレンジを応援する制度をめざしてまいります。
【挑戦5 歴史・文化、スポーツのまちづくり】
5つ目の挑戦は、「歴史・文化、スポーツのまちづくり」です。
(歴史・文化のまちづくり)
福山城築城400年記念事業は、福山城の歴史的価値の大きさを改めて学ぶ機会となりました。これを機に、福山城の伏見櫓や筋鉄御門に加え、新市の吉備津神社本殿、そして鞆の沼名前神社の移動式能舞台の国宝化をめざし、期成同盟会を11月に設立します。また、別所と大谷の砂留については国の登録有形文化財への登録をめざします。既に登録されている堂々川の砂留と共に、近世の一大砂防施設群が本市に現存することを市内外に発信していきます。この他にも各地域には大切に守られてきた多くの歴史・文化資源があります。その魅力を発信し、後世に引き継いでいくことで地域の誇りを高め、にぎわいを創出していきます。このため、地域の拠点づくりの一つの手法として、古墳群や辻堂、とんど、はねおどり、ミステリーローズといった地域の資源を本市の貴重な文化財として登録・顕彰する制度を創設します。将来は国や県による文化財としての指定等をめざしてまいります。
(スポーツのまちづくり)
次に、誰もが気軽にスポーツができる環境をつくっていきます。このために、芦田川の河川敷の公共用地を積極的に活用していきます。また、今年度末に整備が完了する竹ケ端運動公園庭球場と緑町公園屋内水泳場については、エフピコアリーナと共に全国大会等を誘致できる機能と規模を有しており、スポーツを見て楽しむ機会も充実させてまいります。
デジタル化の推進と備後圏域の連携強化
以上、新たな「5つの挑戦」の概要について申し上げましたが、あわせてデジタル化の取組を一層推進し、備後圏域の連携についても強化していきます。
(デジタル化の推進)
これまで、子育て支援や福祉サービス、防災など様々な分野においてデジタル技術を活用し、市民サービスの向上に取り組んできました。年度内に策定する新たなデジタル戦略では、今後のデジタル社会を見通す中で、生成AIなど新たな技術の活用やデータ連携の推進により、高齢者も含めて誰もがデジタル技術の恩恵を享受できる都市づくりを進めていきます。
(備後圏域の連携強化)
また、全国のトップを切ってスタートした備後圏域連携中枢都市圏の取組は、今年10年目を迎えました。中小企業支援や医療提供体制の確保、子育て支援などで一定の成果を上げるとともに、ごみ処理の広域化も進めるなど、国や他の自治体からも高い評価を受けています。来年度からスタートする第3期圏域ビジョンでは、経済の活性化、医療連携の強化、行政サービスの効率化などを中心に、より連携の効果を高めていきます。各市町の特色を生かしつつ、豊かさを実感でき、いつまでも住み続けたい圏域の実現をめざしてまいります。
議案の概要
次に、議案として提出いたしております2023年度(令和5年度)企業会計の決算について、その概要を御説明申し上げます。
まず、病院事業会計については、新本館の建設に着手するとともに、手術支援ロボット「ダビンチ」を2台体制とするなど機能強化を図りました。収支状況については、新型コロナに係る県補助金の減少などから10億589万円の純損失を計上し、経常収支は2007年度(平成19年度)以来の赤字となりました。引き続き、「福山市民病院経営強化プラン」に基づき、経営の効率化や健全化に努めていきます。
次に、水道事業会計については、安心・安全な水を安定的に供給するため、水道施設の更新・耐震化などを行ってきました。純利益は13億610万円を計上しており、引き続き健全経営に取り組んでいきます。
工業用水道事業会計については、純利益として7億3,627万8千円を計上しており、今後とも地域産業の発展を下支えしていきます。
下水道事業会計については、快適な生活環境の確保に向け、汚水管渠整備に取り組んできました。東桜町地区の雨水管渠整備など市街地の浸水対策も着実に進めています。純利益は17億189万7千円を計上しており、引き続き自然災害への備えを強化してまいります。
次は、補正予算案についてです。この度は、一般会計と都市開発事業特別会計で補正をお願いしています。
まず、新たな「5つの挑戦」をスピード感を持って推進していくため、ネウボラセンターの設置に向けた調査・研究費を始め、松永駅・神辺駅周辺のにぎわい再生に向けたシンポジウムの開催、エフピコRiMの更なる利活用に向けたサウンディング調査等の実施、(仮称)子ども未来館の整備に伴う「(仮称)旧体育館跡地エリアプラン」の策定に係る経費などを計上しています。
企業や団体、個人からの御寄附については、本市をロケ地とした映画制作等への補助や長和島公園の遊具等の整備、移動図書館車の購入などに活用します。
債務負担行為については、福山市立大学の学部新設準備費交付金や小中学校屋内運動場空調設備整備事業などを計上しています。
以上の結果、今回の補正予算額は、一般会計で12億9,002万6千円の追加となり、2会計の合計では12億9,302万6千円の追加となりました。
決算及び予算以外の議案といたしましては、条例案として、国民健康保険の被保険者証のマイナ保険証への移行に伴い、所要の改正を行う「福山市国民健康保険条例の一部改正について」を、その他の議案として、「旧福山市立常金丸小学校校舎解体工事請負契約締結について」など6件を提出いたしております。
おわりに
ノーベル文学賞を受賞したミュージシャンのボブ・ディランは、「時代は変わる」という曲で、現状に悲観せず挑戦し続けること、時代の変化に柔軟に対応することの大切さを歌詞に込めました。また、アメリカの実業家スティーブ・ジョブズは、革新的な商品を発表した1984年(昭和59年)の歴史的な株主総会の冒頭でこの歌詞を引用し、自分たちが時代を変えるという決意を表明しました。
変化の激しい社会を乗り越えていくためには、過去にとらわれることなく、新たな課題へ的確に対応していく必要があります。変化を恐れず、職員一丸となって未来に向かって挑戦を続けてまいります。
提出いたしております議案につきましては、慎重なる御審議の上、御可決いただきますようお願いを申し上げまして、私の所信と提案理由の説明といたします。
本文は、口述筆記ではありませんので、表現その他に若干の変更があることがあります。