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広報ふくやま2022年9月特集座談会完全版

印刷用ページを表示する 掲載日:2022年9月1日更新

これまでどんな介護をしてきた?

服部さん

妻が56歳頃にアルツハイマー型認知症になって、看取りまでの13年間を私1人で介護を行いました。

13年間のうち寝たきりが約4年3カ月で最後は誤嚥性肺炎で69歳の時に亡くなりました。子供が2人いますが県外にいます。家族2人ということは1人が病気になると残る1人が世話しなければなりません。なかなか2人暮らしの場合、認知症のみならず家族が病気になるとお世話するのに苦労します。

 

佐藤さん

最初は舅を10年間介護しました。

舅は夜中になると動き出すことが多いんです。真冬に庭に出ることもありました。そんな時に参加した勉強会で「絶対に怒ってはいけない」「いつもニコニコしておく」ということを教わりました。

また会社の経営者だったこともあり、誰もいないのに「お客さんが来ているからお茶を出してくれ」と呼ばれることがあります。その時は時間をおいて、「ごめん。もう帰ったみたい。」といって本人に確認してもらいます。そうすると誰もいないから納得してくれるんですね。

現在は姉の介護を行っています。

 

堀川さん

僕も祖母が介護をしていました。僕が大学生の頃から祖母の様子が少し変になり、不安なことが増えました。認知症と診断されたタイミングで祖父もちょっと調子が悪くなり、その後の7~8年、認知症の介護を家族と交代でしていました。祖母はずっと母の後ろに付いて歩いていて、もともと強かった母への依存が認知症になってからはより強くなったように感じます。そういう状況でも、祖母が死ぬまで1回も母が怒ってる姿を見たことがないんです。その母の姿が現在運営している介護事業所でも生きています。

 

認知症に気付いたきっかけは?

服部さん

妻は優しくて、明るくて、元気で笑顔が多い性格でした。しかしだんだんと笑顔が少なくなり、ささいなことで怒りっぽくなってきて,まるで別人になったようでした。

感情が不安定になるのと同時に物忘れが増え、「様子がおかしいぞ」と感じてはいましたが、当時の妻はまだ56歳。これらの異変が認知症のサインとは考えもしませんでした。

 

佐藤さん

私の姉は絵手紙が趣味だったのですが、3年ほど前から描かなくなりました。姉夫婦の家を訪れるたび、絵手紙用の材料を買ったまま忘れて放置しているなどの変化が目に付き、「認知症かもしれない」と思ったんです。

 

認知症に気付いて相談した先は?

服部さん

脳の病気を疑い、脳神経外科を受診しました。MRI検査の結果、医師から「アルツハイマー型認知症」と診断され、月1回の通院が始まりました。

 

佐藤さん

私も姉を最初に連れて行ったのは病院です。そこで「健忘症」との診断を受けました。

 

堀川さん

お二人はまず病院に行かれたとのことですが、ご本人が受診を拒むケースも多いですよね。

 

佐藤さん

そうですね。認知症に限らず、病気の検査には誰でも不安や抵抗感があって当然ですから。

 

服部さん

私も妻の不安を軽減するために「一緒に健康診断に行こう」と誘い、二人でMRI検査を受けました。本人の心に寄り添うことが大切だと思います。

 

堀川さん

「どこに何を相談すればいいか分からない」とお困りの方はまず、近隣の地域包括支援センターや居宅介護支援事業所に問い合わせてほしいですね。ケアマネジャーなどの専門職が医療・福祉機関などと連携しながら対応します。認知症は早期に発見・相談できるほど、支援の幅も広がります。

 

家族を介護して大変だったことは?

服部さん

男1人で13年間、介護を行ってきました。家族が元気でないと在宅介護を続けるのは難しく、限界があります。時には心が折れそうになる場合もあるんです。慣れない家事全般と介護を1人で行うのは一口に言って難しいですね。とにかく家族のやる気が大事だと思います。

 

本人や家族が受けて良かったサポートは?

服部さん

かかりつけ医に介護認定申請を勧められました。認定結果は要介護3。その後、妻はデイサービスと訪問歯科診療を利用しました。福山市の介護保険で受けられるサービスのおかげで、身体的・時間的な負担が軽減するだけでなく、ケアマネジャーたちから在宅介護の知識を教われたのも心強かったですね。

 

佐藤さん

姉は小規模多機能ホームで訪問のサービスを利用するほか、ピアノなど趣味の教室にも通っています。やはり専門職の方や地域の方々に関わってもらえるのはとても安心です。

 

堀川さん

介護施設では利用者の小さな体調変化に気付くことができますし、地域住民との交流は認知症の進行を遅らせることや暮らしやすさが期待できますね。

 

服部さん

心の支えとなったのは「認知症の人と家族の会」です。参加者はみんな、認知症患者の介護経験者。症状が重くなる妻の介護と慣れない家事を一人で担うつらさなどを本音で語り、分かり合えたおかげで、苦労を乗り越えることができました。「認知症の人と家族の会」は家族が認知症になった場合は、認知症の兆候が見られて、不安に感じたときや認知症の介護に疲れてしまったときにどこに相談すればいいか分からないという人にはぜひ来ていただきたいです。病院や施設にも相談するのもいいんですが、介護家族同士が集まって、介護の悩みがわかり合える場でわかり合える人と話をしたいですよね。

 

堀川さん

地域包括支援センターは適切な支援制度が見つかる場、「認知症の人と家族の会」は気持ちを共有する場。両方を活用するのが望ましいですね。

 

服部さん

そのほか福山市には認知症サポーター養成講座や認知症カフェなど、多くの公的取り組みがあります。それらに参加して認知症を正しく知ることが、本人と家族ともに前向きな生き方につながるのではないでしょうか。

 

介護する家族が気を付けることは?

服部さん

小さな変化を見逃さないように介護記録を付けることですね。体調のこととかね。認知症に症状は早い遅いはありますが、だんだんと重症化していきます。変化を見ておかないと、医師に正しく説明できなくなってしまいます。

 

今後、地域で必要になってくることは?

服部さん

認知症のことを知ってほしいです。認知症の人は家の中へいるときに、知らないうちに飛び出すことがあります。家族が気付くときにはすでに遠くにいることも。そんなとき地域の人の協力が必要不可欠です。プライバシーをいわれることもありますが、見る目は多いほうがいいですよね。

 

堀川さん

認知症が世間一般的になじみのあるものになってきました。現在、町内会に機能が弱くなっているところがありますが、それを補完できるのが介護事業所だと思います。地域のちょっとした異変や人がつながる仕組みを作りやすい。介護施設が担っていかなければならないと感じます。