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地域の歴史とお城の魅力を伝えたい 福山城博物館 学芸員 皿海弘樹さん
皿海 弘樹(さらがい ひろき) さん
子どもの頃に見た考古学展が本格的に歴史を学ぶきっかけに
福山城築城400年記念となる2022年(令和4年)8月に、リニューアルオープンした福山城博物館。館の改修にともなう収蔵品の引っ越しや、新たな館内のコンテンツ企画構成、開館記念展の運営といった一大プロジェクトに奔走したのが、学芸員の皿海弘樹さんです。皿海さんは、2011年(平成23年)の春から福山城博物館の学芸員として勤務しています。子どもの頃から歴史好きで、小学4年生の時に観た南米の発掘展に感動したことを今もよく覚えているそう。それがきっかけで、大学で考古学を学び、学芸員の資格を取得。福山市に帰郷し、福山城博物館で地域の歴史とお城の魅力・価値を伝えています。
収蔵品の管理やメンテナンス市民からの寄贈などにも対応
学芸員の仕事は多岐にわたります。福山城博物館には、古文書を含めると約2万点もの収蔵品があり、それらの管理、メンテナンス、写真を撮ってデータ化し目録にするなどが主な業務です。さらに、「博物館に寄贈したい」という市民からの申し出に対応することもしばしば。この日は、福山市内のお家の蔵に保管されていた日本刀を受け取りに往訪。お家の方から品物にまつわる話を聞いたり、由来を調べたりした後、福山市および福山城に縁のある品と判明した場合には、博物館にて管理すべく手続きを行います。福山城築城400年で注目されたのを機に、市民からの寄贈の申し出は増えたのだそうです。
展示品を通して観る人と対話する学芸員という仕事の面白さ
博物館に収蔵されている品々のなかでも皿海さんが多く扱うのが、約80振りもの日本刀や、30点以上ある甲冑です。取り扱いやメンテナンスには専門知識が必要で、その道のプロに教えを請いに出かけることも。また、普段から全国各地の博物館・美術館との交流は欠かせないそう。各地で得た情報やさまざまな人との縁は企画展のアイデアにも生かされており、なかでも2019年(令和元年)に開催した特別展「国宝 久能山東照宮-徳川家康と歴代将軍ゆかりの名宝」は、福山城博物館・ふくやま美術館・ふくやま書道美術館の3会場で初の合同開催という試みと、貴重な名品が集結する規模からも思い出深いといいます。「学芸員の仕事は、モノと向き合う仕事と思われがちですが、展示作品を通して人と対話する仕事だと思います」と皿海さん。作品に関わってきた人々の思いを想像し、展示を観る人のことを思い浮かべながら、日々の仕事に取り組んでいます。
2023年(令和5年)1月取材