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リーフレット『耐震金具のご案内/阪神大震災住宅内部被害調査』(全国家具金物連合会)より

印刷用ページを表示する 掲載日:2013年12月2日更新

みなさん!地震に対する備えはできていますか?

先年の阪神大震災では,家具の転倒による被害が多数報告されています。

これらの報告を見ると,家具が転倒して,(1)その下敷きになる,(2)避難路が塞がれる,(3)破損したガラスや収納物が散乱して怪我をする,以上の3つのケースが原因となって悲惨な事故に繋がっています。

さて,お住まいの中を改めて見渡してみて下さい。

背ばかりヤケにひょろひょろと高い家具や,前のめり気味に置かれて頼りなさそうな家具などはありませんか?

転ばぬ先の杖・・・,そんな家具には「耐震金具」を付けてしっかりと安定させてください。

「備えあれば憂いなし」です。安全に対する備えは無駄ではありません。ご使用中の家具をよく点検し,安全策を講じましょう。

以下,家具転倒防止策のご案内と,阪神大震災における「家具による被害状況」のご報告をいたします。

1.耐震金具のご案内

(1)こんな場合に家具が倒れやすい!

地震と家具転倒との関係には,一般に次のような傾向が見られます。

これらのケースに該当する場合,特に重複して該当している場合には,十分にご注意下さい。

A.上層階ほど転倒率が高い!

B.硬い床よりも軟らかい床(例えば,フローリングよりも絨毯や畳)に置いた家具の方が転倒率が高い!

C.奥行が浅くて背が高い家具の方が(その反対より)転倒率が高い!

食器棚や本棚などのように,使用目的に応じて必然的に奥行きが浅くなり,背が高くなる家具もあります。転倒防止には十分にご配慮下さい。

(2)家具転倒防止の対策

対策1.家具には正しい置き方,正しい使い方がある。

(1)絨毯や畳にはノッポな家具を置かない。

薄くて背の高い家具は,軟らかい床よりも硬い床の上に置くようにしましょう。2階以上の場合には特に必要です。

(2)前のめりよりも,後ろもたれ気味に置く。

家具は少なくとも垂直に置いてください。下をわずかに前方に出して物を差し込み,上を壁に付けて置くと安心です。

(3)下に重い物を,上に軽い物を収納する。

重い物は下に収納するようにしましょう。特に,棚板の高さが移動できる家具は,こまめに棚の間隔を調整して下さい。家具の上にはガラスとかアイロンのような危険な物や,テレビなどの重い物を置かないようにしましょう。

(4)扉や引出しには鍵を掛けておく。

地震による振動で扉や引出しが勝手に開いてしまって,収納物が落下することがあります。扉や引出しに錠が付いている家具は,普段から施錠しておくようにしましょう。

(5)ガラスには飛散防止フィルムを。

だれでも簡単に貼れますので,ガラス扉の安全性確保のためにぜひご使用になることをお薦めします。

家具の転倒防止・・・まず何より第一の対策は,家具を正しく置き,正しく使うことです。

耐震金具をご使用になる前に,現在ご使用になっている家具の状態をチェックしてみて下さい。

家具そのものが不自然な状態にありますと,たとえ金具をご使用になっても,種類によっては何の効果もないか,あるいは金具や壁などに過剰な負担が掛かって,本来の能力を大きく減退させてしまいます。ご注意下さい。

対策2.耐震金具は安い保険料です。惜しまずにご利用下さい。

対策2その1.耐震金具には,こんな種類と用途がある。

一般に耐震金具と呼ばれているものには,大きく別けて次の2種類5タイプのものがあります。使用する目的や場所に合わせてお選び下さい。

【転倒防止金具】

〔壁・柱取り付け用金具〕
家具を壁,柱,鴨居などに固定結合するタイプで,L型金具,紐状金具,鎖状金具,ワイヤー長さ調整付き金具などがあります。

〔床取り付け用金具〕
金具を取り付けるための適当な柱や壁がなく,床が強固である場合に,家具を床または巾木に固定結合するタイプで,L型の十分な強度をもった金具(四隅を固定することをお薦めします。)

【耐震補助金具】できるかぎり「転倒防止金具」と併せてご使用下さい。

〔重ね止め用金具〕
重ね家具の場合に上下の家具を固定結合し,上の家具の転落を防止するタイプで,コの字型締め付け,鎌錠,かんぬきタイプなどがあります。

〔扉・引出し開放防止金具〕
振動などで,扉や引出しが勝手に開いてしまうのを防止するタイプで,取っ手の操作(プッシュ・プル方式または回転方式)により施解錠するもの,バネ付きタイプ,鎌錠タイプなどがあります。

〔落下防止金具〕
振動などで,収納物が滑り出して落下しないように柵などを設けるタイプで,棚金具,可動式棚金具,ショックコードなどがあります。

ご購入の際には十分な商品説明を求め,安全性を確かめた上でお買い求め下さい。

対策2その2.正しく取り付けなければ,金具も役に立たない。

金具は正しい使い方をして下さい。取り付け場所や取り付け方法によって「固定強度」が大きく異なってきます。

【取り付け場所にご注意下さい。】

〔芯材のある場所に取り付けて下さい。〕
〔なるべく堅い木に取り付けて下さい。〕
木は堅いものから順に,ナラ,タモ,ラワン,米ヒバ,米マツ,スプルース,セン集成材合板,ファーバーボードなどで,木材の堅さにより引き抜き抵抗力が2倍から3倍の差があります。耐震金具を取り付ける場所によってはできるだけ長いネジを使用する等,工夫が必要なようです。

〔木ネジは長めをご使用下さい。〕
いかに頑丈に出来ている耐震金具を使用したとしても,取り付けるネジが短かったり,細過ぎたりしては,何にもなりません。特に,軟らかい素材(すなわち引き抜き強さが劣る素材)に取り付ける場合には,できる限り長い木ネジを使用するようにして下さい。取り付け材の如何にかかわらず,木ネジのねじ込み長さがながくなれば,引き抜き抵抗力は増します。

〔木ネジは正しくご使用下さい。〕
木ネジはドライバーでしっかり締め付けて下さい。打ち込んだ場合は十分な引き抜き抵抗力が期待できません。ねじ込み不足はもちろん,締め過ぎると木の繊維が破壊されて,かえって保持力が低下します。特に,軟らかい素材に取り付ける場合には,ついうっかり締め過ぎてしまうことがありますので,ご注意ください。ねじ込んだ場合と打ち込んだ場合を比較すると,打ち込んで取り付けた場合は小さな引き抜き力でズルズルと抜けていきますが,ねじ込んで取り付けた場合には限界まで抵抗して十分な引き抜き抵抗力を発揮します。

ネジは振動で緩んできます。定期的に点検して締め直して下さい。

金具のご使用にあたっては,必ず「取扱説明書」に従って取り付けて下さい。

コンクリートや石膏ボードなどの特殊な素材への固定については,必ず建築業者,工務店等の専門家にお訊ねの上,取り付けて下さい。

2.阪神大震災住宅内部被害調査

(1)家具による被害状況

ご存じのように1995年(平成7年)の阪神大震災では,約24万棟の家屋が全・半壊し,死者約6千人,負傷者約3万8千人にのぼる大惨事となりました。(朝日新聞平成8年1月16日付)

なかでも家屋の倒壊による圧死が目立ち,犠牲者の88%を占めると言われています。幸いに倒壊をまぬがれた住宅でも,室内の家財が転倒・破損し,種々の人的被害を受けたというケースが非常に多く見られました。

以下,「阪神大震災住宅内部被害調査研究会」(日本インテリア学会及び日本建築学会内部被害WG。合同の調査研究会/代表北浦かほる大阪市立大学生活科学部教授)の調査報告書からその一部を抜粋し,家屋の被害状況をご紹介します。

なお,調査は主に平成7年3月から4月にかけて実施され,調査戸数は阪神地域の一般住宅343戸,芦屋浜の超高層集合住宅80戸となります。

一般住宅編

調査の内容はつぎのとおりです。

・調査戸数=343戸
・集合住宅と独立住宅の調査戸数比率=6:4
・集合住宅における住居階の比率
 1~2階=約3% 3~5階=約20% 6階以上=約80% 独立住宅の場合は殆どが2階建て

平均建築年数 集合住宅=14.8年 独立住宅=22年

なお,上記研究会における調査は原則として「全壊」及び「建築躯体はもとより,すべての部屋で内部被害がはかった」住戸は対象から外し,「建築躯体が半壊以下」から「建築躯体には被害がなかったが,なんらかの被害があった」までの住戸を対象としています。

また,震度・躯体被害の程度・住宅形式などの「内部被害の原因」を明らかにするため,「震度7の地域」と「震度7を除く災害救助法適用地域」の震度別,「躯体被害あり」と「躯体被害なし」の躯体被害別,木造在来工法・ツーバイフォー工法・プレハブ造の「独立住宅」と,RC造・SRC造・S造の「集合住宅」の住宅形式に分けて,その内部被害実態の差を比較しています。

特に高い,寝室と子供部屋の家具転倒率

【寝室・子供部屋と居間の家具転倒率比較】

〔独立住宅の場合〕
寝室・子供部屋(28.2%)は居間(20.5%)より多い
〔集合住宅の場合〕
寝室・子供部屋(39.0%)は居間(36.3%)より多い
これは寝室・子供部屋には収納家具がたくさんおかれているためと思われます。

「家具転倒率」とは,収納家具・家電製品・学習机等「地震で問題になる家具と家電機器の総数に対して,転倒したそれらの数の割合」を求めたものです。(地震時に危険を伴わない椅子やテーブル,ベッド等は対象外としています)

家具はじゅうたんの上が苦手

【床材料別の家具転倒率比較】

〔独立住宅の場合〕
じゅうたん(29.7%),たたみ(26.2%),フローリング(19.3%)の順となっています。
〔集合住宅の場合〕
じゅうたん(42.6%),たたみ(37.9%),フローリング(23.7%)の順となっています。

材料表面の摩擦抵抗力の違いが転倒率の差となって表れています。

最も倒れ易いのは本棚

【種類別の家具の被害状況】

本棚:飛んだ,倒れた(53%),移動(20%)合計(73%)
食器棚:飛んだ,倒れた(36%),移動(27%)合計(63%)
和タンス:飛んだ,倒れた(37%),移動(30%)合計(67%)

家具の被害は,家具のプロポーション以外にも,床材料の種類,家具の設置のしかた,収納物の種類やその収納方法,揺れによる収納物の飛び出し方など,さまざまな原因が加わり起こっています。

家具の上に置かれた危険物の約7割が落下

【家具の上に置かれた危険物の落下率】

本棚:物が置かれていた率(23.5%),危険物の落下率(64.2%)
食器棚:物が置かれていた率(41.7%),危険物の落下率(69.1%)
和タンス:物が置かれていた率(44.5%),危険物の落下率(77.4%)
ピアノ:物が置かれていた率(26.4%),危険物の落下率(60.9%)

家具の3割以上に物が載せられており,そのうちガラスや陶器などのように重くて落下すると危険と思われる物が,7割以上も落下しています。

超高層住宅編

調査の内容はつぎのとおりです。
調査戸数=80戸
 (芦屋浜の超高層集合住宅19階建て1棟,24階建て4棟,29階建て3棟)
・居住階の比率=各棟とも上層階,中層階,下層階の調査戸数がほぼ同数

なお,当高層住宅は1975年~1979年に建設,建築構造躯体の被害状況は,鉄骨基礎部での破断が数ヶ所で見受けられたという状態でした。

一般住宅より大きい高層住宅の家具の被害

【種類別の家具の被害状況】

本棚:飛んだ,倒れた(71%),移動(6%)合計(77%))
食器棚:飛んだ,倒れた(56%),移動(10%)合計(66%)
和タンス:飛んだ,倒れた(59%),移動(18%)合計(77%)

一般住宅にくらべて,すべての家具の被害状況が1.5倍前後大きく,本棚の7割が,その他の家具も半数以上が転倒しています。しかしその反面,滑ったり移動したりした家具が少ないのが特徴です。

上層階ほど大きい家具の被害

【居住階別に見た家具の被害状況】 

上層階:飛んだ,倒れた(90%),移動(3%)合計(93%)
中層階:飛んだ,倒れた(58%),移動(15%)合計(73%)
下層階:飛んだ,倒れた(26%),移動(11%)合計(37%)

上層階ほど転倒率が高く,下層階にくらべてほぼ3倍になっています。

(2)予防のために

さて,みなさん,いかがでしたか?

なお,今回の調査事例においては,耐震金具の使用をほとんど見ることができませんでした。

例え万全を期したとしても,天変地異による被害を100%完璧に防止することは不可能かと思われますが,家具の置き場所,置き方,あるいは耐震金具の使用等によって被害を最小限に抑えることができたのではないかと思われます。

大地震がいつまたどこで起きても決して不思議ではない,といわれています。

「備えあれば憂いなし」です。ご使用中の家具をよく点検し,耐震金具を付ける等,十分な安全対策を講じられるよう是非お勧めします。