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歯と口の健康 ~大人編~
歯と口の健康 ~大人編~
ライフステージごとの口の特徴
むし歯について
歯周病について
口臭について
ドライマウスについて
オーラルフレイルについて
正しい歯みがきについて
入れ歯(義歯)について
生活習慣を見直しましょう
お口の体操について
ライフステージごとの口の特徴
青年期(19歳頃まで)
ホルモンバランスの乱れや生活の変化により、歯ぐきの腫れや出血などの「歯肉炎」が起きやすくなります。歯みがきの時に、歯ぐきが赤く腫れていないか、出血していないか、痛みがないかなどチェックするようにしましょう。また、間食の増加などにより、むし歯になるリスクが高まりやすい時期です。むし歯の原因である歯垢をしっかり取り除くことが重要です。
成年期(20~39歳)
学業・仕事・家事など多忙になる時期で、ストレスや生活リズムの乱れから歯のトラブルが増加します。「歯肉炎」が増加し、歯を支える骨まで進行した「歯周炎」がみられるようになります。また、歯周病の初期段階では自覚症状がほとんどなく、気付かないうちに進行していきます。生活習慣や日ごろの歯みがきを見直し、丁寧に歯を磨きましょう。
壮年期(40~64歳)
40歳以降から歯周病になる人が増加します。また、50歳以降は、歯周病などにより歯を失う人が増えてくる時期です。仕事、家事、介護などにより、歯科医院へ行く時間が取りにくく、重症化しやすくなります。
年齢とともに歯ぐきが徐々に下がり、露出した歯の根元の部分にできる「根面う蝕(こんめんうしょく)」や日々のストレスや薬の副作用などが原因で、口の中が乾燥する「ドライマウス」の症状が出てくる場合があり、注意が必要です。
高齢期(65歳以上)
むし歯・歯周病のリスクがさらに高まり、それに伴い歯を失う人も増えてきます。1本でも多く自分の歯を残すことが重要です。万一、歯を失った場合でも、放置をせず入れ歯などを用いてしっかりと噛める状態を維持することが、健康寿命の延伸につながります。また、噛む力や飲み込む力が著しく低下しやすくなります。これらの機能低下は、食事の質と栄養状態に影響するだけでなく、誤嚥性肺炎など死亡の原因となる疾患のリスクも高めます。
むし歯について
むし歯は、口の中にいる細菌が、私たちが食べたり飲んだりする糖分を餌にして作り出す酸によって歯が溶かされた状態のことを言います。
むし歯になりやすいところ
- 歯の溝
- 歯ぐきの境目
- 歯と歯の間
- 以前に治療をした歯の詰め物と歯の境目(二次う蝕(にじうしょく))
- 年齢とともに歯ぐきが徐々に下がり露出した歯の根元部分(根面う蝕(こんめんうしょく))
むし歯を作る4つの条件と原因
むし歯は、「歯の質」「糖分」「むし歯菌」「時間」の4つの条件が揃うことで発生します。
歯 の 質 | 歯の質が弱い、唾液の分泌が少ないなど |
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糖 分 | 細菌の栄養源となる糖分を頻繁にとる |
むし歯菌 | むし歯に関わる細菌が多い |
時 間 | 歯が酸にさらされる時間が長い |
むし歯予防のポイント
- 正しい歯みがき習慣
- よく噛んで食べる
- 規則正しい食習慣
- フッ素の使用
- 定期的な歯科健診
歯周病について
歯周病は、歯垢の中にいる歯周病菌によって引き起こされます。歯と歯ぐきの境目で歯周病菌が増殖し、菌が出す毒素によって歯ぐきが腫れ、歯を支える骨が徐々に溶かされていきます。初期段階では自覚症状は少なく、進行すると歯を支える骨が溶けて、最終的に歯が抜けることもあります。30代以上の多くの大人にみられ、歯を失う原因の1位です。
歯周病と全身疾患の関係
歯周病と全身疾患には深い関係性があり、歯周病菌が血液の流れに乗って全身を巡り、糖尿病・脳梗塞・心臓病・早産などの様々な病気を引き起こしたり、悪化させることが明らかになっています。
糖尿病 | 歯周病と糖尿病はお互いに影響を及ぼす相互関係にあります。歯周病菌から出される毒素が血管内に入り込み、血糖のコントロールを行うインスリンの働きを妨げます。逆に、糖尿病がある人は、歯周病が発症・進行しやすくなります。 |
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脳梗塞 | 脳梗塞とは、脳の血管が詰まったり心臓にできた血栓が脳に送られて血管が詰まったりする病気です。歯周病に罹っている人はそうでない人の約2.8倍脳梗塞に罹りやすいという報告があります。 |
心臓病 | 歯周病が引き起こす「動脈硬化」により、心臓に血液を送る血管が狭くなったり(狭心症)詰まったり(心筋梗塞)します。また、心臓の内膜に歯周病菌がつくと、心内膜炎を引き起こし命に関わることもあります。 |
早産・低体重児出産 | 妊婦に重度歯周病があると、歯周病菌のなかの炎症物質が子宮を収縮させる作用があり、早産や低体重児出産のリスクが高まります。 |
歯周病とたばこの関係
たばこの煙の入り口となる口は、直接たばこの影響を受けます。喫煙者は歯周病に罹りやすく、治療をしても治りにくいことが分かっています。喫煙者は非喫煙者に比べて2~8倍程度歯周病に罹りやすく、喫煙本数が増えるほど進行した歯周病に罹りやすいことが分かっています。
【受動喫煙と歯周病】
受動喫煙によって、歯ぐきが黒くなったり(歯肉のメラニン色素沈着)、歯周病のリスクが高くなります。親の喫煙がこどもの歯肉のメラニン色素沈着にもつながると報告されています。
福山市歯周病検診を受けましょう!
本市では、20歳・30歳・40歳・50歳・60歳・70歳(検診当日の年齢)の福山市民を対象に、誕生日から翌年の誕生日前日までに1回、無料で歯周病検診を行っています。10年に一度のチャンスです!ぜひ、この機会に受診しましょう!
詳細は『福山市歯周病検診を受けましょう!』をご覧ください。
口臭について
口臭の多くは、舌苔(舌についている白色や淡黄色の苔のようなもの)と歯周病です。舌苔はうがいをするだけでは取り除くことができないので、舌ブラシで優しく磨いて除去することが必要です。
ドライマウスについて
ストレスや薬の副作用などが原因で唾液の分泌が減り、口の中が乾燥する状態をドライマウスと言います。症状は、口の渇き・口内炎・味覚障害・口臭などがあり、進行するとむし歯や舌の痛みなどを引き起こしやすくなります。
ドライマウスへの対処法
- 生活習慣を見直す(喫煙・アルコール・カフェインの摂取を控えめにする、ストレス減らすなど)
- 水分をこまめに補給する
- 唾液の分泌を促す(唾液腺マッサージ)
- 口呼吸を減らし、鼻呼吸を意識する(あいうべ体操)
- 歯科医院や医療機関への相談(症状が改善しない場合や薬の副作用や病気が原因の場合はかかりつけ医への相談が必要です)
オーラルフレイルについて
高齢になると、噛めない、飲み込めない、むせる、滑舌が悪くなる、口腔の乾燥など口の機能低下が多く見られ、こうした状態をオーラルフレイルと言います。
詳しくは、『【口腔】オーラルフレイルを予防しましょう』をご覧ください。
正しい歯みがきについて
歯ブラシを選ぶポイント
- ヘッドが小さめ
- 毛先は平ら
- 毛のかたさは普通
歯ブラシの持ち方
歯ブラシの柄の真ん中少し前をえんぴつ持ち
※力の入れすぎには注意しましょう!
磨き方
基本的な磨き方 | 歯周病予防に効果的な磨き方 |
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歯面に対して直角に当て細かく左右に動かします | 歯と歯ぐきの境目に斜め45度に当て細かく動かします |
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補助用具を使用しましょう
デンタルフロス(糸ようじ)
歯と歯の間の汚れに使用します
【使い方】
糸を歯と歯の間にそっと差し込み、歯に沿わせてのこぎりを引くように動かします
歯間ブラシ
歯ぐきが下がってきたすき間や連結したかぶせ(ブリッジ)などの汚れの除去に使用します
【使い方】
すき間に入れて、ゆっくり前後に動かします
【注意点】
歯間ブラシは、サイズがあっていない物を使用すると、汚れがうまく落とせないだけでなく、病的に歯ぐきが下がる原因になるので歯科医院で自分にあったサイズを選んでもらいましょう。
舌ブラシ
舌の表面に付着した舌苔の除去に使用します
【使い方】
- ブラシを舌の真ん中に当てて、奥から手前に引きます
- 続けて右側、左側と3か所ほど行います
【注意点】
- 使用する前に必ず舌を濡らします。乾いた舌に使用すると、舌を傷付ける原因になります。
- 磨いている途中にブラシに汚れが付くため、ブラシを洗いながら使用しましょう。
舌には、味を感じる「味蕾」があるので、汚れが取れないからといって強い力で何度も磨くことはせず、優しく磨きましょう。
入れ歯(義歯)について
歯が抜けたままの状態を放置すると、噛む力が低下するだけでなく、残った歯に負担がかかり噛み合わせが悪くなることがあります。入れ歯を入れることで、しっかり噛めて、食事を楽しめるようになるだけでなく、全身の健康維持にもつながります。また、発音が改善し、口元や頬に張りが出るため、若々しい印象を保てます。
お手入れのポイント
- 毎食後に入れ歯を外して、義歯専用ブラシを使用し、流水下で洗う
- 夜は入れ歯を外して、水を張った入れ歯専用容器などにいれて保管をする
- 定期的に歯科医院を受診して、入れ歯が合っているかチェックしてもらう
生活習慣の見直しをしましょう!
口の病気は、歯みがきだけでなく生活習慣も深く関係しています。喫煙・飲酒・乱れた食生活・運動不足・ストレスなどは、身体の抵抗力や免疫力を下げ、歯周病やむし歯のリスクを高めます。
改善方法
- 禁煙
- バランスのよい食事
- お酒はほどほどにする
- 適度な運動
- 自分に合った方法でストレス解消
- 十分な睡眠で休養
歯周病とむし歯の予防は、まずこれらの生活習慣を見直すことも大切です。
お口の体操について
お口の健康を保つためには、舌や唇、頬、喉、あごなどを鍛える必要があります。正しい歯みがきや生活習慣を見直すことに加えて、お口の体操をしましょう。
- ブクブクうがいとガラガラうがい
いつもより少し意識をして、長めに! - あいうべ体操
鼻呼吸で免疫力アップ!口を大きく「あ~い~う~べ~」と動かします。 できるだけ大げさに、声は少しで大丈夫 1セット4秒前後のゆっくりとした動作で 1日30セット(3分間)を目標に あごに痛みのある場合は、「い~う~」でも大丈夫 - 唾液腺マッサージ
食事の前に行うと唾液で口の中が潤い、食事がしやすくなる!耳下腺マッサージ 指数本を耳の前(上の奥歯あたり)に当て、10回ほど円を描くようにマッサージ 顎下腺マッサージ あごのラインの内側のくぼみ部分3~4か所を順に押していく。目安は各ポイントを5回 ほど 舌下腺マッサージ あごの中心あたりの柔らかい部分に両手の親指を揃えて当て、10回ほど上方向にゆっくり押し上げる - パタカラ体操
食べこぼしを防ぐ!「パ」 唇をしっかり閉じて発音 「タ」 舌を上あごにしっかりくっつけて発音 「カ」 のどの奥に力を入れて発音 「ラ」 舌先を上の前歯の裏につけて発音
- 「パ」「タ」「カ」「ラ」をそれぞれ5回ずつ、大きな声で発音します。
※パパパパパ、タタタタタ、カカカカカ、ラララララ - 「パタカラ」と続けて発音し、これを5回繰り返します。
※パタカラ、パタカラ、パタカラ…
最後に
「口は健康の入り口」といわれるように、口の健康は全身の健康に深く関わっています。
健康寿命の延伸のためには、毎日のお口のセルフケアに加え、かかりつけの歯科医院で年に1~2回専門的なケア(プロフェッショナルケア)を受けることが大切です。
いつまでも食べる楽しみを持ち続けられるよう、健康なお口づくりを心がけましょう。