菅茶山詩碑めぐり 神辺町外
神辺町外
広島県福山市駅家町 福盛寺 「柏谷途中」
「柏谷途中」 乱石崩沙路不分 松杉風外午■聞 乱石崩沙 路分たず |
- 柏谷…駅家町大坊から新市町下安井へ越えるところ、新市町網引柏
- 乱石崩沙…花崗岩の風化した山肌
- 昇平四海…昇平(太平)四海(天下)
- 窮山…頂上
【大意】
石がごろごろ、砂がいっぱいで道がどこやら分からぬ。松や杉の林の向こうから風にのって午の■の声が聞こえてくる。国中が太平で閑地を残さず開発が進められ、こんな山間僻地でさえ、山の頂まで墾きつくされている。
【出展】
『黄葉夕陽村舎詩』前編2-13所収
広島県福山市沼隈町 内海大橋下 「梔子湾」
「梔子湾」 荒山何処旧行宮 島寺沙村煙靄中 荒山何れの処ぞ旧行宮 |
- 梔子湾…福山市沼隈町の阿武兎観音の西奥
- 龍舟…天皇の御召船(神武天皇)
【大意】
荒山のどこらにもとの行宮があったのか、砂浜のつづく村の高処に寺が、もやにけぶっている。一たび御召船が去って幾度春がめぐってきたか。紫色の藤の花は既に落ちて、暮れなずむ入海に昔ながらの風は吹いてやまない。
【出展】
『黄葉夕陽村舎詩』前編5-19所収
広島県府中市出口町 「荒谷即事」
「荒谷即事」 野歩追帰鳥 遥窮澗水源 野歩帰鳥を追い |
- 孤犢…子牛
【大意】
野山を歩きながら巣に帰る鳥を追い、遠く小川の源までいった。雲が山の頂上に当りそのまま動こうとはしない。石は久しぶりの通行者となにか話したがっている。土橋で道に迷った子牛と出会い、林の梢の向こうには村が広がっていた。同道者と老松の根元にぐるっと座って、ゆっくりつくろう。詩を推敲するができずに心がやすまらない。
【出展】
『黄葉夕陽村舎詩』前編4-2所収
広島県三原市沼田東町 米山寺 「米山寺拝謁小早川中納言肖像」
「米山寺拝謁小早川中納言肖像」 一戦奇功仝列屯 想君軍隊立伝■ 一戦奇功 列屯を全す |
【大意】
一戦(文禄の役)の策略は一団となって任務をまっとうした。君(小早川隆景)はひとり隊を立ち小飯の時を告げる。画中の冠と帯には立派な徳がみなぎり、戦場での歳月によって頭には白髪が増えている。
隆景公を覇主としたことに過ちはなかっただろう。その予防策によって毛利の藩をまもったのだから。当時の多くの武将らは勇猛であることを競ったが、学校を興し学問による徳の尊さに誰か気づかなかったものか。残念なことである。
【出展】
『黄葉夕陽村舎詩』前編3-17所収
広島県尾道市 千光寺山公園 「始登鼕鼕石呈同遊諸友 石在千光寺南」
「始登鼕鼕石呈同遊諸友 石在千光寺南」 鳴榔漸遠夕陽沈 水波始恬山影深 鳴榔(めいろう)漸(ようや)く遠ざかり夕陽沈む |
- 龍鱗…松
- 虎額…石
- 鼕鼕…つづみの声